シワシワになったピーマン、黒くなったバナナ、プラスティックに詰められてカビの生えたいちご。家でもスーパーでも、野菜や果物は新鮮さが欠けてしまったが最後、ゴミとして捨てられてしまいます。
野菜や果物の深刻な「ムダ捨て」を救う2013年の国連食料農業機関(FAO)調べでは、こうして捨てられる食料は、生産されたものの約3分の1をも占め、その量は年間13億トンにものぼるといわれています。
生産のために使われた水や肥料による環境汚染、ムダに広がる農薬被害を鑑みれば、これほど農業生産の努力を台無しにしてしまうものはありません。また、作り手にとっても売れなくなった野菜や果物による損害の大きさが問題視されています。
そんな中、Kavita Shuklaというアメリカ人女性が、2011年にある画期的なシートを発表し、数々のメディアがそのアイデアを称賛しました。
それは、「Fresh Paper」というシートの上に野菜や果物を置いておくだけで、通常の2〜4倍も新鮮な状態で長持ちさせる効果があり、野菜のムダ捨てが防げるというものです。
このシートには、オーガニックのスパイスが含まれており、効果が持続している間はメイプルのような香りを発するといいます。また、生分解性(土に完全に溶ける)かつリサイクル可能で、世界の食料を新鮮に保持するという点で、世界的な認定を受けているのだそうです。
命を救ってくれた祖母のホームレメディを求めてこのシートが生まれたきっかけは、Kavitaの少女時代の体験にさかのぼります。祖母の住むインドを訪れた時、汚染水を飲んでしまって死に直面したところを、彼女の祖母がホームレメディのスパイスで救ってくれたといいます。それ以来、そのスパイスの力に魅了されたKavitaは、このシートを考案するに至ったのだそう。
当初、このシートはマサチューセッツ州のケンブリッジのストリートマルシェで売られていましたが、この効果にアメリカ中のメディアが目をつけ、「世界の食品廃材を救うペーパー」と一気に注目を浴びました。現在は、家庭のみならず、野菜や果物の出荷場でもニーズが高まっています。
地球の食べ物のムダ捨てや農家の人びとの危機的状況を救ってくれるものとして、今後もますます重宝されそうです。