携帯が登場して17年。それまで主要の連絡手段だった公衆電話も、電話ボックスごと次々ととりのぞかれていくという末路をたどっています。フランスでも以前、29万もの電話ボックスがあったそうですが、今はたったの約2800。
そこで、このボックスを利用して、ベルサイユアカデミーとパリ郊外の都市が協力し、電話ボックスを道端の図書館として再利用(アップサイクル)する活動が広まっています。
これは、「BiblioBoxx」プロジェクトと呼ばれ、パリの学生によって電話ボックスから本棚を備えた簡易図書館にトランスフォームさせるもの。
この図書館は、実際いくつかの高校や道端に置かれていて、自分の読み終えた不要になった本をそこに置き、他に興味のある本をそこからとって読むことができるんです。学生たちにとっては、リサイクルの精神を学びながら、アクセスしやすい環境で読書がより身近なものに。同時に、自分が読み終えた本をまた戻しておく、という一般良識をも求められる機会にもなります。
実は、「BiblioBoxx」は、ドイツとフランスによる共同プロジェクトで、持続可能な教育のためのプロジェクトとして試行されたのだそう。ひと昔前は誰もがコミュニケーションのために電話をかけに駆け込んだ「箱」が、今では本を通して間接的なコミュニケーションの場にもなっているかのようです。
不要になった本も同時に使い続けられていくというロマンのこもったこのプロジェクト。世界中へひろがっていく日が楽しみです。
(下野真緒)