そんな夜は、少しでもいいから涼しく眠りたいですよね。 涼しくなるには「怪談」が一番? とすると、睡眠分野では何といっても「金縛り」です。
「金縛り」は、世界中の民話や伝説に存在し、夢魔の仕業と恐れられてきました。 睡眠中に胸の上に乗ってきた夢魔に窒息させられそうになったり、魂を吸い取られそうになったり。 さすがにいまは、そんなことを信じている人は少ないかもしれません。
夢魔が素敵な金縛り
ねむりのイロハカルタより 切り絵:ナカニシカオリ © ナカニシカオリ スタジオ・ソムニナ
「金縛り」の正体は「睡眠麻痺」
それは、金縛りが「睡眠麻痺」といって、睡眠中に起こる身体現象だ、という知識が広まってきたからです。睡眠麻痺は、睡眠中でも脳が活発に活動して夢を見ているレム睡眠時に起きます。 このとき、心拍や呼吸が乱れ、胸に圧迫感を感じるので、脳はそれにつじつまを合わせて「恐い幻覚」を作ってしまうんです。 しかも、レム睡眠時は体が動かないように仕組まれているので、金縛り状態になります。この状態がますます恐怖感を募らせるというわけです。
ここまで説明しても、「いやいや、あれは絶対、霊体験です」という人も多いと聞きます。 たしかに、実際に体験すると本当に恐ろしいもの。 私も若い頃はしょっちゅう縛られたものですが、身動きできなくなった時の恐怖感は経験した者にしか分かりません。それが霊でなく自分の脳の仕業だと分かっていても、胸の上にいる不気味な存在が見えるのですから。
「金縛り」をとく方法
そこで知りたいのが、金縛りをとく方法。そもそも金縛りは、脳が自ら作り出したイメージなので「これは自分の作り事だ。恐いことなんかないんだ」と脳に言い聞かせることが良いようです。 また「さあ、もう起きるぞ~。今日もがんばるぞ~」などとポジテイヴな思いを呼び起こしたり、 目や体のどこかが動くようなら、思い切って動かしてみる、深呼吸をトライしてみるなどの方法もあります。
睡眠麻痺の原因は、生体リズムの乱れやストレス、過労などによると考えられています。 特に多感な思春期の女性がかかりやすく、仰向けに寝ているときに起こります。 そんなことから、昔のヨーロッパやインドでは性交渉を連想して、異性の夢魔(女夢魔もいるんです)に襲われる といった言い伝えもあるほど。
金縛りにあったら、ストレスが溜まっていないか、疲れ過ぎてないかを確認する良いチャンスなのかもしれませんね。
【今月のねむまめ】
金縛りにかかるときに見やすい悪夢。そんな悪夢を描いた代表的な18世紀の画家ヘンリー・ヒュースリーの絵が圧巻。 残念ながら日本には有名な「悪夢」の絵はないのですが、亡霊の絵は見ることができます。 そして、金縛り研究の第一人者・福田一彦氏のサイトでさらに金縛りのことを調べてみるのもおすすめ!
[クラド・カヴァルティカンティの亡霊に出会うテオドール]
国立西洋美術館 2階
住所:東京都台東区上野公園7-7
開館時間:9時30分~17時30分 ※ただし、秋の企画展閉会日以降の開館日から春の企画展開催日までの開館期間中は午前9時30分~午後5時・毎週金曜日:9時30分~20時・入館は閉館の30分前までです。
休館日:毎週月曜日
常設展観覧料:大人420円
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[Pursuing the Mysteries of Human Mind and Sleep]
photo by Thinkstock/Getty Images
(橋爪明子)
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