そんな思いから、漆器を食器棚に眠らせたままでいる方、店頭でステキな漆器に出会っても眺めるだけで家で使うことを躊躇している方も多いのではないでしょうか?
そんな方向けに、じつは、意外と簡単にできる「漆器のお手入れ&楽しみ方」をご紹介します。
そもそも「漆器」とは?
「漆器」とは、漆を塗った器物・塗り物のこと。
漆の木の表面に傷をつけ、そこから出てくる乳白色の樹液を採取したものが漆液の元になります。この漆液をろ過し、木の皮などを取り除いたものを「生漆」と呼び、一般的な漆の元となります。
漆器の素材としては、木曾ヒノキやケヤキなどの高級木材から作る木製のもの、木の粉に樹脂を混ぜて型を使って固めたもの(木粉加工品)、プラスチック製のものまで様々です。漆器は日本の伝統行事に家庭の食卓にと様々なシーンで活用され、日本の伝統文化・食文化を語る上で欠かせない存在です。
どうやって洗えばいいの?
繊細な蒔絵が施されたものをはじめ、極めて美術性の高いものを除く大半の漆器は、通常の食器と同様に、市販の洗剤とスポンジを利用して洗うことができ、洗う際にはお湯を利用して問題ありません。
ただし、漆器は湿気に弱いので、水に長時間つけておかないよう気をつけましょう。
また、乾かす際は自然乾燥よりも、「乾拭き」をする方が水滴が残らず、漆も長持ちするのでおすすめです。食洗機・乾燥機のご利用は漆の劣化が早くなるので避けた方がよいでしょう。
特に注意するべきことは?
漆器は、急激な温度変化が苦手です。このため、直火、電子レンジ、オーブンなどでの調理の際に使用することはNGです。
漆器のうち、「木製品」は冷蔵庫に入れると乾燥による変形が起きひびが入る原因となる可能性があるので、避けた方がよいですが、それ以外の素材については長時間でなければ冷蔵庫にいれて問題ありません。
また、盛り付けるお料理については、油もの、酢のもの、熱いもの、冷たいものなど問わず、あらゆるシーンで安心してご利用いただけます。ただし、沸騰したてのものなど、極度に高温のものをいれる際には、少し冷ましてから容器にうつすことをおすすめします。
正しい保管方法は?
普段使いしている漆器は、通常の食器と一緒に食器棚にしまって構いません。注意すべきは、紫外線は漆の劣化を進めるため、直射日光にあたらないようにすること。
漆は柔らかい材質なので、重ねてしまう際は、漆器は漆器同士でまとめる、または漆器と漆器の間にはやわらかい布や紙をはさむなどすると、傷がつく心配も無いので安心です。
漆器は乾燥・湿気に弱いので、水気をしっかりきって、「乾拭き」をしてからしまうこと、長期間使わない場合は、乾燥しないよう気を使うなどすると尚良いです。
また、漆器を長期間保管する場合は、布に包んだり、箱にしまったりと気を使うことをおすすめします。
ステキな漆器がそろうお店が知りたい!
百貨店のテーブルウェアコーナーに行けば、多数の漆器が並んでいますが、漆器を気軽に買える専門店・スポットを3つご紹介します。
1919年日本橋にて創業し、現在は代官山に本店を構える老舗「山田平安堂山田平安堂」は、宮内庁御用達の漆器。常に約800種類の豊富な漆器が揃うので、贈り物に自宅用にと様々なシーンで活用できるお気に入りの一点が見つかるはずです。老舗銘菓や人気のフラワーアーティストとのコラボ商品も多数あり、現代に伝統を継承しつつ、新しい漆器の楽しみ方を提案しています。
山田平安堂 代官山ヒルサイド本店
住所:東京都渋谷区猿楽町18-12 ヒルサイドテラスG棟
TEL:03-3464-5541
・黒江屋
日本橋に1689年に創業した老舗。漆器の名産地である紀伊国名草郡黒江村から江戸に出てきた人物が、日本橋に興した漆器専門店。定番の漆器の他、蒔絵のワイングラス、ワインクーラー、ピアス、ネックレスなどのアクセサリーも。
黒江屋
住所:東京都中央区日本橋 1-2-6 黒江屋国分ビル2F
TEL:03-3272-0948
全国各地の伝統工芸品が揃う伝統工芸青山スクエアは、日本の伝統工芸品のすばらしさを世界へ発信する基地のような存在。漆器も多数揃います。ショップでの販売の他、気軽に楽しめる展示やイベントも開催されています。
伝統工芸青山スクエア
住所:東京都港区赤坂8-1-22赤坂王子ビル1F
TEL:03-5785-1301
なんとなく扱いが難しそうな漆器も、極度な乾燥や湿気、急激な温度変化にさえ気をつけていれば、めったに割れることもなく長く使え、実はお手入れも簡単!
使えば使うほど美しい光沢が生まれ、味わい深い漆器と、賢く長くお付き合いしてみませんか?
(神森真理子)