病虫害に弱いリンゴ栽培に農薬散布は欠かせない――その常識を覆し、世界で初めて独自の自然栽培で以前に使用していた農薬を使わずにリンゴ栽培に成功したリンゴ農家、木村秋則さん。その実話を紹介したベストセラー『奇跡のリンゴ―「絶対不可能」を覆した農家 木村秋則の記録』(石川 拓治・著)が映画化されました。


家族のために無農薬栽培を決意

青森県弘前市のリンゴ農家へ婿入りした木村さんは、奥様の体に農薬があわず、年に十数回の農薬散布のたびに皮膚がかぶれて寝込むこともあったことから、無農薬によるリンゴ栽培への挑戦を決意します。1975年から義父の協力のもとで私財を投じて試行錯誤を繰り返すも、約10年リンゴは実を結ばないまま。周囲から孤立し、義父と妻と3人の幼い娘たちと貧困に耐えながら挑戦し続け、千辛万苦して絶望しかけたそのときにひとつの可能性を見出します。


木村さんの苦悶を真摯に映画化



周囲から諭され見放されかけた苦悶の年月に、あきらめずに挑戦し続けた壮絶さ。映画化においても単純な成功秘話としないで、ギリギリの苦悶を経てつかみ取るまでのことを真摯に描いたことに、中村義洋監督の手腕が感じられます。秋則役は阿部サダヲ、妻役に菅野美穂、義父役に山﨑努をはじめ演技派の俳優陣が好演。愛情深い家族の支え、あきれて反発しながらも見守ってくれた友人や周囲の人たちとの関わりを丁寧に描き、役者たちの演技と個性もよく生かされて、きびしくもあたたかい物語となっています。

農薬の定義や自然栽培についてはさまざまな意見があります。木村さんは愛する家族の健康を願うことをきっかけに、人体や環境に負担が少ないと思われる手法を見出して独自のリンゴ栽培を実現しました。自然に近い状態を保ち、農作物を栽培している農家のみなさんのたゆみない努力について。その作物へのありがたさ、おいしくいただくことへの感謝をあらためてかみしめる。そして大切な家族について思いをはせる。映画を観るうちにそうした感覚がますます深まる物語です。


奇跡のリンゴ
監督:中村義洋
原作:石川拓治 『奇跡のリンゴ「絶対不可能」を覆した農家 木村秋則の記録』(幻冬舎文庫)
脚本:吉田実似
音楽:久石譲
出演:阿部サダヲ・菅野美穂・池内博之・笹野高史・伊武雅刀・原田美枝子・山﨑努ほか
配給:東宝
2013年6月8日より全国東宝系にてロードショー

©2013「奇跡のリンゴ」製作委員会

text by 美希

インタビュー記事、映画やCDのレビューを執筆するカルチャー系ライター、国際クレイセラピー協会(ICA)正会員、日本アロマコーディネーター協会(JAA)正会員。現在、ICAでインストラクター講座を受講中。東京・世田谷のプライベート・サロン「ANIMA AROMA(アニマ アロマ)」のオーナー。心も体もリラックス→ たのしくキレイになりましょう。
ブログ>>  FBページ>> illustrated by KAZUHIRO WATANABE
RSS情報:http://www.mylohas.net/2013/05/030177post_1951.html