気どらないおもてなしの楽しみを教えてくれる著者、料理家・飛田和緒さん

人と会って食事をするという、当たり前だった日常がなかなか戻ってこない今、寂しくなるとページをめくる一冊があります。

『ごはんできたよ! 今日、何作ろう!? 何食べる!? ある日の献立、つまみとおかずとごちそう、〆も 一五〇品』(朝日新聞出版)は、料理家の飛田和緒さんが「人が集まるときのごはん」をテーマにしたレシピ集。長い長いタイトルからも、“ほんの少し特別なごはんの時間”のうれしさ、ワクワクする気持ちがよみがえってくるようです。

「最初のひと皿」は何を出す?

組み合わせが腕の見せどころ。バゲットに材料を“切って盛るだけ”で抜群においしい「やみつきバゲット」(本書20ページより)

毎日のごはんはとても質素。でも、人が集まるときには「ただただ、おいしくごはんを食べてもらうために、料理や献立を考える」という飛田さん。

本書では「ひたすら餃子の日」「おうち居酒屋」といったコース料理的なメニューの提案や、冷蔵庫にあるものでなんとかする“ごはん作りの知恵”を柱として、気軽に楽しく人をもてなすコツがたっぷりと紹介されています。

おもてなし初心者の悩みと言えば、人が来るときの最初のひと皿です。飛田さんも「まずは何を出したらいい!? やっぱり前菜的なもの!? 」といった相談をよく受けるとのこと。

わたしの場合は、だいたい切って盛るだけのものをまずはお出しすることが多いです。そして最初の1杯。(中略)なんとなく今日の最初の1杯はこうかしら?と考えて、それに合わせてオリーブオイルとハーブにつけておいたチーズやオリーブ、オリーブオイルとバゲットだけなどを「まずはこれ食べといてね」という感じに。

(『ごはんできたよ! 今日、何作ろう!? 何食べる!? ある日の献立、つまみとおかずとごちそう、〆も 一五〇品』13ページより引用)

例えば「やみつきバゲット」は、厚めに切った発酵バターとアンチョビをのせたバゲットと、ブリーまたはカマンベールチーズをのせたバゲットにあんずジャムをのせた2種の盛り合わせ。確かに“切って盛るだけ”ですが、洒落た味わいに手が止まらなくなります。

「おなじみの食材の新たな組み合わせ」は、人が集まるときのごはんのポイントのひとつ。いつもの食卓をハレの日の食卓へと変えてくれると飛田さんは語ります。

一瞬でみんなの顔がほころぶ「果物のひと皿」

旬の果物を使った一品で、テーブルに季節感を。写真左「金柑と帆立のカルパッチョ」、写真右「金柑とかぶのマリネ」(本書44ページより)

果物好きの方にぜひ試してほしいのは、旬の果物を使ったレシピの数々です。

おいしい果物があったら、ひと皿は果物を使った料理を作ると、一瞬で集まってくれたみんなの顔がほころぶ……と飛田さん。チーズやはちみつとの相性を試したり、実験的に天ぷらにしてみたり。家族の意見も聞いて「これいいね」という組み合わせが見つかると、すぐにでも披露したくなるのだそう。

とてもうれしかったのは、栄養豊富で咳やのどの痛みにもいいとされる金柑の活用法が広がったこと。「金柑とかぶのマリネ」は色合いも美しく、爽やかな味わいで食卓が一気に華やぎました。次は「金柑と帆立のカルパッチョ」に挑戦してみるつもりです。

りんごのスライスでブリーチーズを挟む「りんごのブリーチーズサンド」は、小腹がすいたときのおやつにもぴったり。甘塩っぱくてクリーミーで、クセになるおいしさでした。

「何はなくともこれがあると助かる」のはちくわと油揚げ

ハムを切らしてしまい、何か代わりに……と生まれた「油揚げサンド」。焼いた油揚げの香ばしさがたまらない(本書89ページより)

「冷蔵庫、冷凍庫にあるといいもの」と題されたコラムでは、飛田さんが「何はなくともこれがあると助かる」という食材が紹介されています。冷凍庫には水餃子やソーセージ、油揚げ。冷蔵庫にはちくわなどの練り物、チーズ、豆腐、ヨーグルト、卵が飛田さんの“スタメン”とのこと。

特に油揚げとちくわは、冷蔵庫か冷凍庫にあると「あぁ、よかった」と安心します。(中略)どちらも和のイメージに寄りがちですが、発想を変えてみると、意外といろいろな食材とも合わせやすく、活躍の場が多いことに驚かされます。

(『ごはんできたよ! 今日、何作ろう!? 何食べる!? ある日の献立、つまみとおかずとごちそう、〆も 一五〇品』13ページより引用)

衝撃的だったのが、「ハムがない!となったときの代打から生まれた」という「油揚げサンド」です。バターとマヨネーズを塗った食パンに青じそをのせ、香ばしく焼いた油揚げの短冊切りをはさんで、しょうゆをチラリ。重しをしながらパンの両面に焼き目をつければ完成という一品。「油揚げにこんな食べ方があったんだ」という驚きはもちろん、そのおいしさの正体を確かめたくて、2日続けてランチにしてしまいました。

人が集まるというと「食材もふんぱつしなきゃ」と思いがちですが、むしろ食卓で会話が弾むのは、こんな「おなじみの食材の新たな組み合わせ」なのかもしれません。

本書があれば、きたるごはん会のイメージトレーニングは万全。みんなで気兼ねなく集まれる日を楽しみに、いつもの食事もちょっと工夫して、新鮮さを出していけたらと思います。

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写真/齋藤圭吾

ごはんできたよ! 今日、何作ろう!? 何食べる!? ある日の献立、つまみとおかずとごちそう、〆も 一五〇品

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