料理家・松本日奈さんが、台所を中心にまわる日常や「おいしい」に関わるモノやコト、台所仕事の負担を軽くして楽しいものにかえる“ひと工夫”をつづる連載「テーブルに ひと工夫」。

今回は、南イタリアで愛されるシンプルなひと皿「パン粉とアンチョビのスパゲッティ」を紹介します。

家庭にある身近な材料で、おいしいひと皿に

具はないの? 上にかかっているのはチーズ? いえいえ、チーズではなくてサクサクのパン粉です。なんとも素朴なひと皿なのですが、これがとびきりおいしい。ときどき無性に食べたくなるのです。

フィレンツェに滞在中、シチリア出身の友人が作ってくれて、あまりのシンプルなビジュアルに驚き、口に入れたときのおいしさに、また驚いたことを覚えています。

イタリア語で「Cucina Povera(クチーナ ポーヴェラ)」、直訳すると「貧乏人の料理」という意味ですが、豪華な食材を使わずとも、家にある最小限の材料で工夫して作る料理のことをいいます。たとえばチーズと黒胡椒があればできるパスタ料理「カチョ・エ・ぺぺ」や、硬くなったパンや余った野菜で作るスープ「リボリータ」もその一例。このパスタも愛すべき家庭の料理です。

パン粉とオイル漬けのアンチョビがあればできてしまうひと皿。どちらも冷蔵庫の片隅で眠っていませんか?

パン粉とアンチョビのパスタ

<材料>
・パン粉
・オリーブオイル
・にんにく(包丁の背でつぶす)
・アンチョビ(オイル漬け)
・スパゲッティ
・スパゲッティをゆでるための塩

写真左:パン粉は、おいしいオリーブオイルをたっぷりと使って、かりかりっと仕上げたら、一度取り出しておく。
写真右:同じフライパンにオリーブオイルを足し、弱火でじっくりとにんにくの香りを移していく。

<作り方>
(1)フライパンにパン粉とオリーブオイルを入れ、パン粉がかりっとするまで炒める。きつね色になったら、取り出しておく
(2)同じフライパンににんにくとオリーブオイルを入れて加熱し、オイルににんにくの香りが移ったら、アンチョビを加えてほぐす。
(3)アルデンテにゆで上がったスパゲッティを加えて混ぜ、パン粉も加えてすばやく混ぜたらできあがり。

味つけは、アンチョビとパスタのゆで汁の塩加減が頼り。スパゲッティは、しっかりと塩味が感じられる湯でゆでること。そして最後にオイルとスパゲッティをあわせるときは、ゆで汁を大さじ2 〜3杯ほど加えて混ぜることを守るだけでおいしくできます。ぜひ作ってみてくださいね。

松本日奈(まつもと・ひな)
料理家。北イタリア留学中に現地の料理人やマンマから料理を学ぶ。オリーブオイルや白バルサミコなどの調味料を使い、シンプルで素材を生かした家庭料理を提案。レシピ開発やケータリング、ひな弁と活動の幅を広げる。自宅などで開催する料理教室は毎回キャンセル待ちになるほどの人気ぶり。目黒区鷹番にある食材店「ラ・プティット・エピスリー」を営む夫、ふたりの娘、愛犬と暮らす。インスタグラム

写真・文/松本日奈

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