食物繊維の摂取は、腸内環境に良い影響を与えるといわれます。そのなかでも、腸内細菌の「エサ」となって善玉菌を活性化するプレバイオティクスは、いま注目される食品成分のひとつ。今回は管理栄養士の谷口美希さんが、プレバイオティクスにまつわる気になる研究結果を教えてくれました。
「プレバイオティクス」ってどんなもの?
まずは「プレバイオティクス」の定義をおさらいしておきましょう。
プレバイオティクスとは、大腸内にいる特定の細菌の増殖、そして活性を、選択的に変化させることで宿主(その菌が寄生している生物)に良い影響を与え、健康を改善するはたらきが期待できる難消化性食品成分のことをいいます。オリゴ糖や、一部の食物繊維などがこれにあたります。
(「Diet Plus」より引用)
谷口さんによると、「セイヨウネギやアーティチョーク、玉ねぎ、そして特定の全粒穀物など、繊維質の多くの食品」にプレバイオティクスが含まれているとのこと。プレバイオティクスが宿主に与える有益な作用としては、消化を良くする働きなどが有名ですね。
睡眠を改善、ストレス回復力もアップ
しかしプレバイオティクスには、さらなるうれしい働きがあるようです。
谷口さんが注目したのは、2020年にコロラド大学で行われたプレバイオティクスに関する実験。ここでは消化だけでなく、ラットの「脳」と「行動」への影響が確認されたといいます。
この研究では、若い雄のラットを2群にわけ、標準的な餌、またはプレバイオティクスを混ぜた餌のいずれかを与えました。その後、ラットにストレスをかけ、その前後に一連の生理学的測定値を追跡しました。
すると、睡眠の質に大きな差があらわれたのです。
プレバイオティクスを混ぜた餌を与えたラットでは、ノンレム睡眠(深い眠り)の時間がより長くなりました。また、ストレスを与えた後には、ストレスからの回復の際に不可欠である、レム睡眠(浅い眠り)の時間がより長くなるという結果になったのです。
(「Diet Plus」より引用)
さらに測定を行っていくと、標準的な餌を与えたラットでは、
・体温の変動が不自然に平坦化する
・腸内の微生物叢の多様性が低下する
・睡眠障害を引き起こす可能性のある代謝物が顕著に上昇する
といった悪影響が見られたそう。ところがプレバイオティクスを混ぜた餌を与えたラットでは、そのような現象も認められなかったのです。
さらなる研究の発展に期待
今回の実験は人間ではなくラットを対象としており、プレバイオティクスの容量も非常に高くなっています。人間がプレバイオティクスの豊富な食品を摂取するだけで、ラットと同じ結果が得られるのかは不明だと谷口さんは指摘します。
しかし、プレバイオティクスと呼ばれる特定の食物繊維に、睡眠を改善し、ストレス回復力を高める働きが認められたことが、明るいニュースであることは間違いありません。
研究者は今回の知見から、ストレスを緩和するための物質を増強し、睡眠妨害をする物質を抑制するような治療薬の開発につながっていくのではと、期待を寄せているとのこと。研究の発展に、これからも注目していきたいと思います。
谷口美希(たにぐち・みき)さん
食べることと料理が大好きで、大学で栄養学を学ぶ。卒業後は管理栄養士として老人ホームや健診センターに勤務。現在は、特定保健指導やオンラインでの栄養指導、コラムの執筆などに携わっており、栄養の面からたくさんの方の健康を支えていくことを目指している。
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プロバイオティクスから発音ブレさせる必要あるんか