料理家・松本日奈さんが、台所を中心にまわる日常や「おいしい」に関わるモノやコト、台所仕事の負担を軽くして楽しいものにかえる“ひと工夫”をつづる連載「テーブルに ひと工夫」。

今回は 、おせち作りのハードルを下げるアイデアについて。

おせち料理は、自分なりの定番だけでもじゅうぶん

2段3段のお重にぎっしり詰めなければいけない……。そう思うと、おせち作りはかなりハードルが高いものになってしまいます。でも私は、おせち料理はふたつみっつ、自分なりの定番があればいいと思っています。

私が毎年作るのは伊達巻き、田作り(ごまめ)、鯛の昆布締めなど。お雑煮もいいですよね。

伊達巻きは、白身魚のすり身の代わりにはんぺんを使うと簡単です。卵液と一緒にフードプロセッサーでなめらかにし、天板に流してオーブンで焼き色をつけたら、一年にこの時期だけ使う“鬼巻きす(鬼すだれ)”で、きゅっと巻いて仕上げます。

わが家の田作りは、くるみ入り。いりこを煎って、じゃっとお醤油をからめると、なんとも香ばしい香りが立ちのぼります。

昆布に挟んでひと晩置いた鯛の昆布締めは、銘々に盛ってわさびを添えて。お雑煮は、地域やそれぞれのご家庭の味があって、おもしろいですね。わが家は、鶏肉でとった出汁に、紅白のかまぼこ、おもち、三つ葉、そしてゆずの皮をあしらいます。

ワンプレートにするのもおすすめ。祝い箸にもこだわって

お重でなくとも、漆器や平皿に盛りつければ立派なお正月の食卓が演出できます。ワンプレートもおすすめ。梅や千両があると、季節感と華やかさを添えられます。

祝い箸も、今は凝ったデザインのものがたくさん売られていますね。私は、時間があるときは箸袋を折ります。紅白の水引きを作って添えた年もありましたが、昨年は余裕がありませんでした(笑)。今年は長女にお願いしてみようかなと思っています。

いろんなことを同時進行しなければいけないお正月の準備。定番の料理づくりや自分の好きな作業から始めると、スムーズにまわるように思います。私の場合は、黒豆を煮ること。部屋中に広がる黒豆の煮えていく香りが好きで、お掃除をしながら火にかけたりします。掃除を終えたころにはおいしくなっていて、放っておいたのになんだか得した気分になります。

クリスマスに大掃除、お正月の支度と、12月はほんとうに忙しいですね。無事に乗り切って、よいお年をお迎えください。年内はこちらが最後の記事です。また来年もよろしくお願いいたします。

松本日奈(まつもと・ひな)
料理家。北イタリア留学中に現地の料理人やマンマから料理を学ぶ。オリーブオイルや白バルサミコなどの調味料を使い、シンプルで素材を生かした家庭料理を提案。レシピ開発やケータリング、ひな弁と活動の幅を広げる。自宅などで開催する料理教室は毎回キャンセル待ちになるほどの人気ぶり。目黒区鷹番にある食材店「ラ・プティット・エピスリー」を営む夫、ふたりの娘、愛犬と暮らす。インスタグラム

写真・文/松本日奈

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