今回は、素材を「飾って楽しむ」というアイデアです。
いただく前の野菜の楽しみ方
ふと香る金木犀や朝晩の涼しさで、秋の訪れを感じます。とくに今、季節の移ろいを映し出したような繊細な野菜たちが多くみられます。
私は美しい色やめずらしいフォルムの野菜や果物を手に入れたら、まず、ダイニングテーブルに飾ります。飾るというより、置いておく、という感じでしょうか。若い果物は、食べ頃まで置いておいて、追熟していただきます。
写真左:ぱんっと張って福福としたコリンキーは「青果ミコト屋」さんで。写真右:追分の道の駅で出会った模様の美しい小ぶりの縞茄子。 写真左:母が送ってくれた早生の林檎や梨。
写真右:山形の食用菊「もってのほか」は淡い紫の花束みたい。 飾って楽しんだ食用菊はお浸しに。ごはんに混ぜれば「菊花ごはん」のできあがり。 お買い得で箱買いした「すだち」は、見た目にも爽やかでかわいらしい。
すぐに調理しまうのはもったいない、という気持ちでテーブルに置くのですが、「わ、おもしろい模様だね」「これどうやって食べるの?」といった帰宅した娘たちの反応を見るのも楽しいです。
そして「いつものなすよりとろっとするんだね」「こんなにシャキシャキなんだ」などと会話しながら、料理へと姿を変えた素材たちをおいしくいただきます。
「飾る」という視点で素材を選ぶ豊かさ
アーティスティックで立派な冬瓜は、秋桜と一緒に。スーパーでは季節を問わずいろんな野菜が手に入りますから、素材の旬が感じられにくくなっています。そこへ、野菜を飾って楽しむことで「今年もまた、この季節が来たねえ」と、より四季の移ろいを肌で感じることができるような気がします。
さまざまな味わいで私たちを幸せな気持ちにしてくれる野菜たち。食べるだけでなく「飾る」という視点を持つことができれば、よりいっそう素材選びが楽しく感じられるようになると思います。
松本日奈(まつもと・ひな)
料理家。北イタリア留学中に現地の料理人やマンマから料理を学ぶ。オリーブオイルや白バルサミコなどの調味料を使い、シンプルで素材を生かした家庭料理を提案。レシピ開発やケータリング、ひな弁と活動の幅を広げる。自宅などで開催する料理教室は毎回キャンセル待ちになるほどの人気ぶり。目黒区鷹番にある食材店「ラ・プティット・エピスリー」を営む夫、ふたりの娘、愛犬と暮らす。インスタグラム
写真・文/松本日奈