仰天の最新技術をプロダクトに取り入れようとしているのが、化粧品メーカーのロレアルグループ。同社は、世間にまだ「サスティナブル」という言葉が知られていなかった頃から地球環境保護に取り組んできた先駆的企業で、この技術利用もその一環です。
日本でもサスティナブルな行動への意識の高まりを感じますが、日常生活でどう貢献できるかわからない人も多いのではないでしょうか。
そこで、先日、サスティナブルプログラム「L’ORÉAL FOR THE FUTURE」を発表したロレアルグループの日本法人である日本ロレアル ヴァイスプレジデント・楠田倫子さんに、化粧品を購入するときどんな商品を選び、どう使うべきかお話を聞きました。
リサイクルシステムやサブスクを利用してゴミを削減
店舗で回収された空き容器がリサイクルされ、スパチュラに。スパチュラは「キールズ クリーム UFC」のキャンペーンのノベルティとして配布されている。「キールズ クリーム UFC」27g 2,750円 /49g 4,400円/123g 7,920円(すべて税込)※現在、キャンペーンは行われていません。ロレアルグループの一部ブランドでは、空き容器のリサイクル活動を実施しています。
「化粧品容器のあり方は、サスティナビリティとの関わりが大きいと思います。弊社のブランド『キールズ』では、使用済み容器を回収するボックスを店舗に設置。リサイクル業者さんと連携し、回収した容器をスパチュラにリサイクルして、ユーザーの皆さんに還元しています」と、楠田さん。
そして、2021年はこのリサイクルシステムをロレアルグループが展開する12ブランドに拡大するそう。 参加ブランドは、「キールズ」「ランコム」「ケラスターゼ」「ヘレナ ルビンスタイン」「ロレアルプロフェッショナル」「ラ ロッシュ ポゼ」「メゾン マルジェラ フレグランス」「ロレアル パリ」「メイベリン ニューヨーク」「イヴ・サンローラン」「シュウ ウエムラ」「アルマーニ ビューティ」。
今年12月までに、各ブランドの販売店舗・スペースに回収ボックスを設置する予定なのだとか。
「回収したボトルや容器は、パートナーシップを結んでいるテラサイクルさんの技術で、さまざまなプロダクトに再生される予定です。参加しやすいサスティナブル活動だと思いますので、ぜひ、ご賛同いただけるとうれしいです」
「イヴ・サンローラン」に設置された、空き容器の回収ボックスまた、ラグジュアリーブランド「イヴ・サンローラン」では、簡易包装のリフィルで届けるサブスクリプション(定期便)が公式オンライン ブティック限定でスタート。話題となっています。
「イヴ・サンローランの『ピュアショット ナイトセラム』を定期購入していただくと、簡易包装のリフィルでお届けします。資源の削減に繋がるので、ぜひ、活用いただきたいですね」
左が「イヴ・サンローラン/ピュアショット ナイトセラム」のリフィル。各回13,750円(税込)の3回コースで、初回時にリフィルケースが届く。また、サブスクリプションを利用するとサスティナブルな選択に感謝を込めて、ギフトに交換できるボーナスポイントのプレゼントも。地球環境保護に役立つ、仰天の技術を開発
「ロレアル・ウォーター・セーバー」のシャワーヘッドは、フランス、アメリカの美容室で試験的に導入。消費者が今すぐサスティナブル活動できるプログラムと同時に、ロレアルグループは大きな取り組みにも次々と着手。詳細を聞くと、想像を超えた驚きの技術開発の話が飛び出しました。
「当社の分析から、洗い流すタイプのヘアケア製品(シャンプーやヘアカラーなど)が、環境負荷が最も高くなると判明しました。そこで、洗い流すときに使用水量を削減できる『ロレアル・ウォーター・セーバー』を開発しました」と楠田さん。
ロレアル・ウォーター・セーバーのシャワーヘッドは、独自技術により水の分子を微細化。微細化された水は、シャンプーやトリートメントと即時に混じり合って乳化するため、すすぎ時の水が断然少なくて済むのだそうです。
「海外の美容室のシャンプーブースで試験的に導入が開始されており、近い将来、日本でも試験が始まると思います。家庭用のシャワーヘッドも商品化が進んでいます」
そして、最も驚いたのは、産業排出のCO2や温室効果ガスをプラスチックに再生する技術。今後商品化されていくそうです。
産業排出のCO2や温室効果ガスから再生したプラスチックボトル「地球温暖化の原因とされるガスをリサイクルする技術は、社外のパートナー3社と合同で進めています。先のシャワーヘッドもですが、化粧品業界をとりまく反サスティナブルな問題を解決するため、さらに取り組みの幅を広げていきたいと考えています」
欧米ではスタート。環境負荷グレードを「見える化」
QRコードを読み取ると、環境負荷のレベルを表示。現在、スキンケア&ヘアケアブランド「ガルニエ」に搭載している。また、興味深いのが、海外では一部ブランドで実装されている、サスティナビリティを「見える化」する取り組みです。
「化粧品の成分や容器を作る過程でどう環境負荷が生じているか開示していこうというプロジェクトを行っています。製品のQRコードを読み込むとA〜Eの5段階で表示。読み取りの方法が簡潔で分かりやすいため、よりサスティナブルな購買選択をできます。日本でも近い未来に展開予定です」
真のサスティナビリティの実現へ
キールズでショッピングバッグを辞退すると、植林活動の寄付金として還元。鳥取県智頭町にある「キールズの森」にて、植林を実施している。地道にサスティナビリティアクションを続けてきた「キールズ」の売り上げはここ数年、上昇傾向にあると、楠田さんは話します。
「ブランドの哲学に共感してくださる方が増えている実感がありますし、サスティナブルなブランドが選ばれる時代になりつつあるのも感じます」
また、環境に優しいものは従来の物よりも効果・効能が落ちる、同じ容量・同じ効果でも価格が高いのではないかという疑念があれば、それはまったくの誤解だと訴えます。
「効果・効能は絶対に妥協しません。効果・効能を上げ、環境不可指数を下げていくのが弊社の目標です。とはいえ、真のサスティナビリティの実現には、企業、取り先、消費者が三位一体になることが大切だと思っています。弊社はもとより、他メーカー様のサスティナビリティマインドにも関心を持ってもらい、化粧品を購入するとき、使い終わったときにどんな選択をするか、意識していただけたらうれしいですね」
楠田倫子(くすだ・ともこ)さん
日本ロレアル ヴァイスプレジデント コーポレートコミュニケーション本部長。 米系消費財メーカー(ワーナー・ランバート、現ファイザー)を経て1999年に日本ロレアル入社。シュウ ウエムラ、ヘレナ・ルビンスタインなどロレアルグループ内のブランドの事業部長職を歴任。2015年にアクティブ コスメティックス事業部事業部長に就任し、2020年1月1日より現職。
はじめよう。サスティナブル活動
ペットボトルは「永久リサイクル」に。メーカー・自治体・消費者が協力すれば、できる