「糖化ストレスは“老化の悪霊”をつくる」──そう語るのは、糖化の専門家である八木雅之氏(同志社大学 生命医科学部/糖化ストレス研究センター チェア・プロフェッサー教授)。どうすれば糖化を抑制することができるのか、日本新薬株式会社が開催したオンラインプレスセミナー「在宅ワーカーに潜む老化リスク『糖化ストレス』とは?」からご紹介します。
老化の悪霊って何? どこから来るの?
糖化とは、糖質とタンパク質が熱によって結びつき、タンパク質を変質させる現象です。糖質は人間にとって欠かせないエネルギー源ですが、摂りすぎると余った糖質が体温によってタンパク質と結びき、糖化反応を起こします。
そして糖化がさらに進むと、AGEs(エージーイー/Advanced Glycation Endproducts/終末糖化産物)ができます。このAGEsこそ、八木教授が「老化の悪霊」と呼ぶ物質。体のタンパク質の機能を劣化させ、全身の老化の原因となる厄介者なのです。
老け顔や動脈硬化、認知症の原因にも
©2020 Doshisha Univ.AGEsが蓄積すると、たとえば皮膚には黄ばみやくすみがあらわれ、肌の弾力・ハリがなくなります。肌のキメがなくなる、年齢よりも「老け顔」に見える……といった調査報告もあるのだそう。
これは、肉を焼くと表面が茶色く焦げ、歯ごたえが出るのと同じこと。体のタンパク質も、糖化によって変色し、硬く、もろくなります。脳、内臓、筋肉、血管、神経、皮膚、毛髪、爪などはタンパク質でできているため、人間が生きていく限り、これらが糖化によって変質し、機能を失っていくことを避けることはできません。
AGEsは、血管の内壁に蓄積すると動脈硬化の原因になります。脳でのAGEsの蓄積はアルツハイマー型認知症に関与するとされ、がんや不妊症との関連も指摘されるなど、全身に影響を及ぼし老化につながっていくと考えられているのです。
在宅ワークに潜む糖化のリスク
新型コロナの影響で在宅ワークをする人が増えた今、八木教授がとくに懸念するのが、環境の変化がもたらす糖化ストレスの増大です。
糖化は活性酸素、紫外線、運動不足、喫煙、糖質・脂質に偏った食事、食後血糖値の上昇、睡眠不足(6時間以下)などで促進されるといわれます。 在宅ワークにより通勤時間が減ったことによる運動不足、仕事の合間のダラダラ食い、生活リズムの乱れ、ストレスからくる睡眠不足などは、すべて糖化を促進する要素になるというわけです。
そこで重要となるのが、糖化を生活習慣から抑える「糖化ケア」。食後の血糖値を上げない工夫や、AGEsをつくらない(あるいは排出する)食品の摂取、また食品中のAGEsをできるだけ摂らない工夫をして、効率よく糖化ケアをしてほしいと八木教授は話します。
毎日の「糖化ケア」で老化を抑制
この日、八木教授が提案されていた糖化ケアのなかで、とくに取り入れやすそうだったのは下記の3つです。
1.食後に眠くなったら3分間動く
階段を上り下りしたり、ちょっとした家事や家の近所をひとまわりするだけでも、食後血糖値の上昇を防ぐ効果が期待できる。
2.ベジタブル/ヨーグルト・ファースト
食事のときは先に野菜サラダやヨーグルトを食べることで、その後に入ってくる糖質の吸収をゆるやかにする。
3.ハーブティー、野菜、フルーツなど、AGEsの生成を抑制する食材を摂る
©2020 Doshisha Univ.比較的入手しやすいもののなかでは、モロヘイヤ、サニーレタス、ブロッコリースプラウト、よもぎ茶、どくだみ茶、ルイボスティー、ブルーベリー、サクランボ、バナナなどは抑制効果が高い。
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今後は日本新薬株式会社が開発したサプリメント「マンゴスティア」のように、サプリを使った糖化ケアも注目を集めるかもしれません。
八木教授いわく、「糖化ケアは、老化の悪霊からカラダを守る救世主」。ぜひ気になるものから実践してみてください。
八木 雅之 (やぎ まさゆき)教授
同志社大学 生命医科学部/糖化ストレス研究センター チェア・プロフェッサー教授。一般社団法人 日本抗加齢医学会 評議員 、一般社団法人 糖化ストレス研究会 理事 。
■主な研究歴
HPLCによる測定法や分析カラム製品の研究開発(1990年〜1992年)HbA1c測定法の研究開発(1992年〜2001年)糖尿病患者向けの機能性食品・化粧品などの研究開発(2001年〜2005年)糖化対策や抗糖化素材の研究(2001年〜現在)糖化ストレスと老化・疾患の関係についての研究、糖化ストレスの測定・評価法ついての研究(2011年〜現在)
[日本新薬株式会社]
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