順天堂大学医学部附属静岡病院・眼科・専任准教授の土至田 宏先生によると、スマホやパソコンなどのモニターを長時間見続けることが、目の健康を悪化させているそう。
目が疲れないモニターのセッティング方法や、正しい目のケアについてご紹介します。
モニターの見過ぎで角膜が傷付く?
外出自粛による運動不足のリスクが注目されていますが、じつは目の健康もおびやかされています。
自宅でスマホやパソコンをずっと見続けることが原因となり、ドライアイや眼精疲労に悩む人が増えているというのです。
土至田先生によると、モニターを長時間見続けることで、角膜上皮に傷がつく場合もあるのだそう。
土至田先生 :
通常まばたきは1分間に20回程度ですが、モニターを見続けるとまばたきが1/4程度に減少することが分かっています。
すると、目が開いている時間が長くなってしまうので、目の表面が乾いて角膜が傷つきやすくなってしまうのです。
普段は涙で保護されている角膜は、水晶体とともに光を網膜に集めるレンズの働きと、異物や細菌の侵入を阻むバリアの役割を果たしています。
角膜についた傷は、視力低下や眼病の原因になることもあると、土至田先生は警鐘を鳴らします。
あなたの角膜は大丈夫? チェックリスト
疲れ目が気になる場合、角膜を傷つける行動を知らずにとっている可能性があります。
ぜひ次のチェックリストを試してみてください。
<生活習慣>
PC画面を毎日連続1時間以上見ている 通勤途中スマホを見ていることが多い スマホで動画を見ることが多い 平均睡眠時間は5時間以下である コンタクトレンズを使用している<症状>
寝ても疲れ目が解消しない 朝から目がかすむ 光をまぶしく感じやすくなった 常に目が乾いてショボショボする 目が重たい感じがする 目が痛くなることがある 目を10秒以上開けていられない(チェックリスト監修:東邦大学医療センター大森病院眼科 教授 堀裕一先生)
上記合わせて当てはまる項目が0~3個の方は、今のところ大丈夫。
4~7個ある方は要注意、8個以上の方は「危険」レベル。できるだけ早く生活習慣を改善する必要があります。
目が疲れない、正しいモニターの使い方
目の酷使は避けたいけれど、いまやパソコンなしの仕事は考えられない時代。家で過ごすときの正しいモニターの使い方を土至田先生が教えてくれました。
モニターは明るくしすぎないように。部屋を明るくして、モニターの明るさは抑える。 PCの画面は見上げる位置にあると首や目が疲れてしまうため、少し見下ろす位置に置くこと。見下ろす目線の真正面に、PC画面の中央が来るように調節するとよい。 1時間PC作業をしたら、モニターから目を離し適宜目を休める。窓の外を見る、1m以上遠くを見る、目をしっかりとつぶると目を休めることができる。ビタミンA入りの目薬も有効
IT機器を長時間使うことで起こる目の症状は、「IT眼症」ともいわれます。
眼精疲労のほか、頭痛や肩こり、腕や背中の痛みなどの全身症状、不安感やイライラのような精神症状もあるとのこと。
外出自粛が長引く今、以前よりも体の痛みやイライラを感じるという人は、まずは目を休めるといいかもしれません。
土至田先生 :
目の疲れや乾きを感じたら、3時間に1回を目安に目薬で目を潤しましょう。症状がひどい人には、角膜修復機能のあるビタミンA入りの目薬が有効。
ビタミンAは角膜上皮細胞のヒアルロン酸の産生を促し、そのヒアルロン酸が細胞の進展を助けるので、角膜上皮の傷を早く治す作用があります
「目」も含めた人間の「表面」は、加齢とともに乾燥しやすくなってくると土至田先生。皮膚に保湿が欠かせないように、目にも乾燥へのケアを心がけてほしいと話します。
目の疲れを癒すには、ホットアイマスクをするのもいいと土至田先生。温めることで、目の下側にある「マイボーム腺」と呼ばれる脂の分泌腺のつまりが解消され、目を乾きから守ります。
また、肩こりや首筋のこりも、目の疲れからきている可能性があります。眼鏡の度を確認し、見たい距離がラクに見える眼鏡を使用すると、肩こりなどが軽減する場合があるといいます。
ITにより生活環境が大きく変わったことで、現代人の角膜は深刻な状況にあるともいわれます。
まずはモニターのセッティングを見直しつつ、目薬やアイマスクで着実に目のケアを行っていきましょう。
目を守るために知っておきたいこと
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土至田 宏(としだ・ひろし)先生
順天堂大学医学部附属静岡病院 眼科 先任准教授。ドライアイの名医として知られる。専門領域は、角膜・結膜疾患、コンタクトレンズ、ドライアイなど。
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