ただでさえ、季節の変わり目は不調になりがち。東洋医学には「養生」という言葉があります。薬を用いずに手軽に簡単にできる健康法である「養生」の考え方を知って、心身ともに若さを保っていきたいものです。
鈴木知世著『100歳で元気!をめざす 《東洋医学式》カラダとココロの養生術』(すばる舎)には、東洋医学によるセルフケアの考え方や「養生」のコツが紹介されています。
100歳で元気! をめざす 《東洋医学式》カラダとココロの養生術
1,540円
1.「年齢の節目」を意識する
著者の鈴木先生は、鍼灸師であり、神奈川県にある内科・泌尿器科クリニックで鍼灸治療部門を立ち上げた経歴を持っています。
さらに、同じ県内にある「仁愛中国鍼灸院」の二代目として活動し、年間延べ3000名もの患者を診ています。
本著には、東洋医学に基づいた「臓腑(ぞうふ)を整え、老化をできるだけ遅らせる養生術」「疲れをためない養生術」などが紹介されています。
もともとは、ちょっぴり虚弱で冷えに弱い体質だったという鈴木先生ですが、「養生」を学んでからは、院の仕事を休むことはないのだそうです。
誰しも、年齢の節目ごとに、体調や体力の変化を感じることがあります。健康で長生きする人と、病気や痛みを抱えながら老いていく人。その違いはどんなところにあって、何に気をつけていけばいいのでしょうか。
男女ともに、見た目は若々しい人が増えている昨今ですが、東洋医学的には年齢ごとの各節目で、体調に変化が表れるのだといいます。
なぜなら、成長・老化とホルモンという観点でみると、東洋医学では2000年以上も前から「男は8の倍数、女は7の倍数」といわれているからです。
『100歳で元気!をめざす 《東洋医学式》カラダとココロの養生術』25ページより引用
たしかに、女性でいえば7の倍数である35歳や42歳あたりで、体の変化も含めてあらためて疲れやすさを実感する人も多いのではないでしょうか。
いずれにせよ、年齢の節目を意識して「養生」しセルフケアを始めることは、長い人生において大事なことだといえるでしょう。
2.夏に向けた「養生」のポイント
あちこちでよく耳にする「養生」。そもそも東洋医学の世界で「養生」には、文字どおり「生を養う」という意味があります。
鈴木先生は、人が持つ生命エネルギーには、親から授かった「先天の精」と「後天の精」の2つがあると説明しています。
養生は、「生まれながらのエネルギー(先天の精)をできるだけ減らさないようにすること。さらには後天の精を補っていくこと」で、そのためには、「季節に合わせて衣服、生活習慣を変え、環境を整え、賢い食生活をしていくこと」が基本となります。
『100歳で元気!をめざす 《東洋医学式》カラダとココロの養生術』33ページより引用
簡単にいえば、キープすることと補うことを、生活の中で意識していくことが「養生」のポイントになりそうです。
そして、東洋医学には、「五行説」といって、すべてのものを5つに分ける考え方があるといいます。
木:発芽して伸びる力・上へ上へとすくすく成長する力/色は青/五臓は肝/季節は春 火:物事の始まりと全体を統率する力・燃えて活性化するエネルギー/色は赤/五臓は心/季節は夏 土:安定と真反対の破壊と創造を司る力・下へ下へと送り出す力/色は黄/五臓は脾/季節は長夏 金:秩序を保つ力・形をつくり引きしまっていく力/色は白/五臓は肺/季節は秋 水:生命力の源・静かに沈みしまっておく力/色は黒/五臓は腎/季節は冬「木・火・土・金・水」という5つの属性の性質を理解しておくと、いま自分が不足しているものを補って、逆に過剰なものを削る予防策が立てられそうです。
たとえば、「五行説」でいうと春は肝臓の季節。新陳代謝がよくなるので、増血された血を貯蔵する「肝」の負担が増すのだとか。
だから、春には青物を食べると肝臓にいいと昔からいわれているのですね。
そして、これから迎える夏は「火」にあたります。苦味のあるものを食べると、五臓の「心」を滋養して血圧コントロールに役立ちます。
「心」は心臓や脈管といった循環器全般を指し、「気」「血」の動きを推進し整えます。そして体のあらゆる器官を支配し、統括しています。
季節にあった食べ物をいいタイミングでとることも「養生」であるといえそうですね。
3.毎日お風呂につかって「養生」する
食事だけではなく、入浴も心身を整える方法のひとつです。より簡単な「養生」の方法として、鈴木先生は毎日のお風呂の入り方について紹介しています。
疲れていると、ついついシャワーですませてしまう人もいるのではないでしょうか。やはり、ちゃんとお湯につかる入浴が体によいようです。
日々の疲れをリセットする最良の方法の一つが、入浴です。全身の血行がよくなり、適度に汗をかくので、デトックスになります。(中略)冬はもちろん、夏の暑い時季でもお風呂に入りましょう。
『東洋医学式カラダとココロの養生術』93ページより引用
鈴木先生が診察をしていると、下半身がむくんでいる人は、シャワー生活をしていることが多いようです。1週間続けてお風呂に入ると、症状が改善することが多いのだとか。
お風呂に入る時間帯は、入眠の2〜3時間前が効果的。入浴直後は血流が増して、脳の活動が活性化してしまいます。入浴後2〜3時間たつと脳が沈静化するので、スムーズに入眠しやすくなります。
しかし、誰でも一律にそれでいいというわけではありません。例えば、高齢で体が弱ってきた人は、「日中」の時間帯の入浴が健康にいいのだそう。
軽い運動をしたような状態になる入浴は、活動的な日中に行う方が高齢者にとっては体のリズムを整えることにつながるからです。
医師と相談しながら、体にあった入浴法を意識していくことが、「養生」につながるといえるでしょう。
無意識に生活している毎日に、少し「養生」の考え方を取り入れてみて。体と心を整えながら、免疫を上げていきたいものです。
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[100歳で元気!をめざす 《東洋医学式》カラダとココロの養生術]
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