自分の体をきちんと知ろう! をテーマの連載「カラダ戦略術」。前回は「アトピー性皮膚炎の新治療薬」について、お届けしました。今回は、「かぶれの対策」について、女性医療ジャーナリストの増田美加がお伝えします。

かぶれと湿疹の違いは?

春は、かぶれや湿疹が起こりやすい季節ですね。

かぶれと湿疹とはどう違うのでしょうか?

湿疹とは、皮膚に炎症を起こす病気の総称です。かぶれも湿疹の中の一症状。かぶれは大別すると、原因となる物質が皮膚に接触することで炎症が起こる“接触性”のもの。特定の物質にアレルギーを持っている人だけに起こる“アレルギー性”のもの。この2種類があります。

かぶれは、正式には“接触皮膚炎”と言われ、湿疹の中でも、外部からの刺激によることがはっきりわかっている場合を指しています。かぶれは、刺激が働いた部分にだけ、境界がわかるような炎症などをつくります。痛がゆさ、ほてり感などを伴うこともあります。

こんな症状がかぶれ(接触皮膚炎)です

 これらの症状は、ひとつだけのことも、いくつも重なることもあります。

かゆみがある 痛がゆい 熱をもつことも ヒリヒリ、ピリピリする ブツブツができる 水ぶくれなどが混ざることも ジクジクした感じから時間が経つとガサガサする

かぶれのおもな原因は?

かぶれのおもな原因をまとめると次のようになります。

物理的刺激 紫外線、温熱、寒冷、乾燥 化学的刺激 洗剤、薬物、化粧品 アレルゲン 金属、花粉、ハウスダスト、植物(漆など)、虫、動物 体質的要因 乾燥肌、皮脂分泌異常、発汗異常、アレルギー体質

交感神経優位が続くと、皮脂が過剰に分泌されて……

かぶれ(接触皮膚炎)は、皮膚科を受診する人の約3割を占めるほどのポピュラーな皮膚疾患です。若いころは、かぶれたことがなかった人でも、更年期以降、徐々にかぶれやすくなるのはなぜでしょうか? 

皮膚の最も外側にある角層は、バリア機能を果たしていて、正常な皮膚では分子量1000以上の物質が角層を通過することはないと考えられています。

しかし、現代の生活環境では、角層の障害が起こる機会が多くなっています。ホルモンバランスが崩れる更年期以降はなおさらです。更年期世代は、ホルモンバランスが大きく変化し、ストレスなどでも自律神経が乱れやすく、交感神経と副交感神経のバランスが乱れます

ストレス過多で、交感神経の優位な状態が続くと、皮脂腺から皮脂が過剰に分泌され、角層表面の皮脂膜も過剰になります。そのため、角層が障害を起こしやすくなるのです。

すると、かぶれの外的要因となる、紫外線や温熱、寒冷の差、乾燥に反応しやすくなります

さらに、皮膚に接触する洗剤、薬、化粧品、金属、花粉、ハウスダストなどが角層の障害を起こした部位から侵入します。

これらの原因物質が角化細胞を刺激して、サイトカイン、ケモカインという炎症を引き起こすタンパクの産生を誘導し、肌表面に炎症が起こると考えられています。これがアレルギー体質でない人も、皮膚刺激で起こるかぶれです。

かぶれ対策は、ストレスケアで副交感神経を優位に

交感神経が優位な状態が続いて、角層表面の皮脂膜が過剰になると、毛穴から出る自分の皮脂でかぶれるということも起こります

肌は、自律神経でコントロールされていると言っても過言ではありません。ですから、ホルモンバランスの乱れやすい更年期やPMSの時期は、要注意。自律神経の交感神経と副交感神経のバランスを整えるためにも、ストレス対策が大事です。

かぶれは、交感神経優位のサインです。副交感神経を優位にする自分なりのリラックス法を見つけてください。

さらに、代謝や免疫力をあげ、脂肪燃焼を促すためにも、運動は必要。リラックス効果のある運動なら、ストレス対策にもなり、一石二鳥です。

高脂質、高糖質の食事を控えて

もちろん、生活習慣も大切です。高脂質、高糖質の食事は、かぶれを誘発しやすい不飽和脂肪酸の皮脂分泌を盛んにします肌細胞がつくられる原料は、食事です。肌のためにも、高脂質、高糖質の食事を控え、腹八分目の和食を心がけましょう。

タンパク質は、納豆、サケ、サバなどから摂ります。抗酸化作用のあるビタミンCやB群、サケなどに含まれるアスタキサンチンも抗酸化。

かぶれという炎症が大敵なのは、年齢老化に加えて、皮膚老化を促進する“炎症老化”も引き起こしてしまうからです。かぶれは、皮脂が分泌される毛穴周辺から起こります。毛穴の詰まり、開きは、たるみ、しわ、しみにもつながります。

肌老化を最小限にするためにも、ストレス対策、食事、運動にも気を配ることが大切になります。

皮脂分泌が過剰なときこそ、保湿を大切に

また、肌のバリア機能を高めるためにも、保湿は重要です。皮脂分泌が過剰になっているときこそ、バリア機能が乱れているサインですので、いつも以上に丁寧な保湿を心がけましょう。使用する化粧品は、抗酸化のものを使うといいでしょう。紫外線対策、UVケアも忘れずに行いましょう

皮膚科の治療では…

皮膚科の保険診療では、かぶれに対して、かゆみ止めや炎症を抑える薬の処方が中心です。ひどい症状には、外用のステロイド剤が使われることも。

自由診療の皮膚科では、過剰な皮脂分泌を抑えながら、バリア機能を高め、毛穴の炎症を改善する治療として、ビタミンC、B群や植物由来の抗炎症成分のお薬や化粧品で治療しているクリニックもあります。

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増田美加・女性医療ジャーナリスト
予防医療の視点から女性のヘルスケア、エイジングケアの執筆、講演を行う。乳がんサバイバーでもあり、さまざまながん啓発活動を展開。著書に『医者に手抜きされて死なないための 患者力』(講談社)、『女性ホルモンパワー』(だいわ文庫)ほか多数。NPO法人みんなの漢方理事長。NPO法人乳がん画像診断ネットワーク副理事長。NPO法人女性医療ネットワーク理事。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会会員。公式ホームページ :http://office-mikamasuda.com/

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