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便秘や肌荒れ、口臭など。効果で選ぶヨーグルトの見分け方

2020/02/20 18:00 投稿

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乳酸菌とは何か、と聞かれたら何と答えますか? 「お腹によさそうな菌?」「乳製品に入っている菌?」。体によさそうなイメージはあるものの、実はよく知らない乳酸菌の正体。

乳酸菌は人類が誕生する前から、哺乳類の腸の中にいて、哺乳類は乳酸菌の力に助けられながら生きてきました。言ってみれば、乳酸菌には“哺乳類が健康に生きるための方法”がプログラムされているのです。

乳酸菌を正しく摂り入れ、腸をきれいに整える方法を、大腸のスペシャリストで乳酸菌を知り尽くした、後藤利夫先生に教えていただきましょう。

なぜ現代人はこんなに不調だらけ?

インフルエンザ、アトピー性皮膚炎、花粉症、便秘・下痢、肌荒れ、肥満、潰瘍性大腸炎、ピロリ菌、高血糖、高血圧、高尿酸値、脂質異常症、歯周病、虫歯、ストレス、うつ状態……。現代人が悩まされるこれらの不調は、すべて腸内にいる「乳酸菌」と関係しています。

不調が起きるのは、人間の乳酸菌環境が変わったことが問題。哺乳類が誕生した時から、乳酸菌はともにありました。体の中の機能を正しく動かすために必要なものだからです。ところが、現代人は乳酸菌を得るチャンスを失いつつあります。

乳酸菌がいる「腸内フローラ」の原型は、3歳までに作られると言われています。腸内には乳酸菌などの善玉菌のほか、悪玉菌、日和見菌の3種類の菌が存在していて、グループごとに固まって腸壁に広がっている様子が花畑のように見えることから「腸内フローラ」と呼ばれています。

善玉菌は食べ物の消化吸収を促進し、腸の粘膜に栄養を与え、ビタミンを合成し、悪玉菌の影響を抑制し、腸内をクリーンに保ちます。一方、悪玉菌は食べ物の腐敗を進ませて有毒物質を作り出します。ただし、悪さをするばかりではなく、たんぱく質を分解するので、悪玉菌も必要なのです。バランスの問題ですね。

日和見菌は、善玉菌、悪玉菌どちらにも属さない菌で、腸内に最も多く存在しています。腸内環境において優勢な菌に同調する菌

例えば、腸内環境が悪化している時は悪玉菌が優勢なので、日和見菌は悪い方に加担します。善玉菌2、日和見菌7、悪玉菌1のバランスが理想的だと言われています。

そして善玉菌を増やすのに欠かせないのが「乳酸菌」です。乳酸菌が腸に入ってくると、もともといる善玉菌の母菌が元気になって増えていくのです。

ところが、過剰に除菌された清潔すぎる生活環境、善玉菌をも殺菌してしまう抗生物質の摂取、肉類が多く、食物繊維が少ない食事などで、現代人が摂取する乳酸菌の数は減り、腸内の善玉菌も増えにくくなっています。

さらに重要なのは、子どもの頃に得られる乳酸菌。人間の腸内細菌の種類は、3歳までに決まると言われています。

胎児の腸は無菌状態。母親の産道を通る時に初めて菌が体内に入ります。そしてオギャーと産まれて何でも口にして、どんどん周囲から細菌を取り込み、腸内フローラを形成し始めます。

このフローラには、実はヒトからもらった菌しか棲息できません。昔の暮らしのように、おじいちゃんやおばあちゃんがいて、ご近所の人が家に出入りしたりすると、どんどんヒト由来の乳酸菌をもらうことができます。そして土いじりも細菌を取り込むチャンス。

しかし、今は核家族化が進み、土いじりもしないような生活スタイルなので、現代人は腸内細菌の数が少なく、免疫力が落ちてきているんですね。

今は積極的に除菌するような生活。腸内に細菌、特に乳酸菌が少ないと免疫は体内に入ってきた多くのものを異物とみなし、アレルギーを起こすのです。 大人でも、ストレスや食生活の変化で腸内が悪玉菌優位になり、腸内環境が悪化して免疫力が下がっているケースが少なくありません。

そもそも「乳酸菌」ってなに?

「乳酸菌って土にもいるの?」と思ったかもしれません。そもそも乳酸菌という特定の菌は、実は存在しません。乳製品に含まれるものだけでもありません。乳酸菌とは、糖類を分解して多量の乳酸を作る菌の総称です。乳酸を作る菌は、自然界に広く存在し、数千種類あると言われています。

各メーカーは、乳酸菌の中のどの菌が、何に効くのかの研究を進めています。 また、乳酸菌には「動物性」と「植物性」があり、動物性乳酸菌は動物の乳に含まれる乳糖をエサにして育ちます

皆さんよくご存知の、ヨーグルトチーズ、乳酸菌飲料などに含まれています。植物性乳酸菌はブドウ糖や果糖、ショ糖などをエサに育ちます。キムチやぬか漬け、味噌、醤油、日本酒、塩麹などに含まれます。

先ほど、「フローラにはヒトからもらった菌しか棲みつくことができない」と言いましたが、その他の動物性や植物性の乳酸菌は、そもそも棲んでいるフローラたちの味方になるものなのです。

そしてビフィズス菌という名前もよく聞くと思いますが、これは厳密には乳酸菌ではありません。乳酸菌の仲間たちは自然界に広くいると説明しましたが、ビフィズス菌は酸素があると生きられないため、人間や動物の大腸の中に棲んでいます。しかし乳酸菌は「乳酸」を生成するのに対し、ビフィズス菌は「乳酸と酢酸」を生成する、仲間のようなものだと覚えておいてください。

「乳酸菌力」をチェック

ここで、あなたの「乳酸菌力」をチェックしてみましょう。 乳酸菌力とは、腸内環境を整える乳酸菌をどれだけ持っているかを示すもの。乳酸菌力が高いと腸内環境は善玉菌優位になり、免疫力が高くなることをはじめ、冒頭に示した不調の多くが改善されます。

下記の項目に当てはまるものが多ければ乳酸菌力が低いことを示し、要注意です。

便通の調子が悪く、便秘気味 おならが臭い 肌荒れや吹き出物が多い 寝つきが悪く、寝不足気味 牛乳や乳製品をあまり摂らない 朝食を抜くことが多く、食事の時間も不規則 肉が大好きで、野菜や果物はほとんど食べない 一日中ほとんど歩かず、座りっぱなしのことが多い

当てはまるものが1〜4個:乳酸菌力が低下気味

5個以上 :乳酸菌力ほとんどなし

(著書『乳酸菌がすべてを解決する』より)

乳酸菌力がない人は、腸が荒れているのですぐにケアが必要です。また、加齢とともに善玉菌が減ってくるので、乳酸菌の摂取はとても重要なのです。

「腸のイベント」は善玉菌を増やすチャンス!

乳酸菌力が低いのは問題ですが、乳酸菌を増やすこともできます。 腸内フローラの“生息地”である腸壁はスペースが限られているため、善玉菌、悪玉菌は常に縄張り争いをしています。

少しでもスペースが空けば、自分の菌を増やしたい。実は、善玉菌を増やすのにいい方法があります。それは、「腸のイベント後に乳酸菌を摂る」ことです。 腸のイベントとは、下痢や抗生物質の摂取など、腸内細菌が一気に流れ出たタイミング

この時、腸内には空き地ができています。ここで乳酸菌を積極的に入れて、善玉菌を増やすのです。このタイミングで肉やお酒ばかり摂ると、悪玉菌のエサが投入されたことになり、悪玉菌を増やすことになります。

もちろん、「腸のイベント」がなくても、毎日ヨーグルトや味噌、キムチなどを摂ることを習慣にしましょう。腸内細菌は、エサがないと死んでしまいます。死菌もエサになるのでエサが全くなくなることはありませんが、善玉菌は乳酸菌、食物繊維が大好物

毎日摂ることで、母菌にたっぷりエサを送ることができます。すると腸内で、どんどん善玉菌が増えていくことになるのです。乳酸菌のサプリメントなどでも構いません。乳製品が苦手な人は、植物性乳酸菌でも大丈夫です。キムチや味噌などを積極的に摂ってみましょう。

ヨーグルトの目覚ましい進化

最近、スーパーマーケットのヨーグルト売り場が充実しています。「機能性ヨーグルト」という、特定の菌を培養したヨーグルトがとても増えました。

これは、冒頭でもお話ししたように乳酸菌にはたくさんの種類があり、各メーカーが効果をひとつひとつ検証し、各菌の特徴を最大限に生かして商品化しているからです。 乳酸菌を含む食品はいろいろありますが(キムチやチーズ、味噌、醤油など)、手軽に摂るには、やはりヨーグルトがいちばん。

特に、機能性ヨーグルトは不調の改善におすすめです。1日100gを目安に摂りましょう。朝でも夜でも、食前でも食後でも、どのタイミングでも構いません。

大切なことは毎日続けること。口から摂った乳酸菌を腸内でどんどん増やすために、毎日新しい乳酸菌を送りこむことが大切なのです。

なかでも「生きたまま腸まで届く」と謳っているものは、腸内の善玉菌を増やす可能性があります。しかし、そうでないヨーグルトでも、たとえ生きたまま届かずに死菌となっても善玉菌のエサになるので、無駄ではありません。毎日摂りましょう。

ここで、効果別の乳酸菌をご紹介します。改善したい不調に合わせて選ぶことができるので、自分に合う菌を見つけてみてください。菌名はヨーグルトのパッケージなどに表記されています。

便通改善:ビフィズス菌BE80株 便通改善、肌荒れの改善:LB81乳酸菌(ブルガリア菌2038株+サーモフィラス菌1131株) 血糖値の上昇抑制:クレモリス菌FC株 免疫力の向上:R-1乳酸菌/乳酸菌シロタ株 ピロリ菌を減らす:LG21菌 内臓脂肪の蓄積抑制:ガセリ菌SP株(SBT2055株) 歯周病・虫歯・口臭予防、改善:ロイテリ菌

大腸がんの死亡率が1位になる理由

日本人の死亡原因をご存知でしょうか。国立がんセンターのデータによると がんが第1位。中でも肺がん、大腸がん、胃がんがトップ3です。しかし、胃がんと肺がんは減少傾向にあります。胃がんの原因であるピロリ菌がいなくなりつつあること、肺がんの主な原因である喫煙者数が減ってきているからです。

ところが、大腸がんの原因は増える一方。食物繊維の少ない食事、肉やお酒の過剰摂取、抗生物質の投与、清潔過ぎる暮らし、ストレス、運動不足……。悪玉菌が増え、腸内で腐敗が進むのです。そもそも、日本人女性のがん死亡率第1位は、2003年からすでに大腸がんが1位になっています。

女性の外食が増えたことや、ダイエットで腸内環境が悪化、便秘になることなどが原因。しかし、これは改善できます。乳酸菌を摂って、腸内環境を整えることです。 今は、機能性ヨーグルトという便利なアイテムもあります。乳酸菌を毎日摂ることで、体調の変化に気づくはずです。ぜひ習慣にしてみてください。

──この記事は、2018年1月16日の記事を再編集して掲載しています。

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後藤利夫(ごとう としお)先生
「新宿大腸クリニック」院長。1988年、東京大学医学部卒業。「大腸がん撲滅」を目標に独自の無麻酔・無痛大腸内視鏡検査法「水浸法」を開発。大腸内視鏡5万件以上無事故のベテラン医師。その普及に全国を飛び回っている。大腸がん予防から始まった腸内細菌や乳酸菌にも造詣が深く、菌のパワーを使って健康になる方法を各所で伝授し続けている乳酸菌の専門家。著書『乳酸菌がすべてを解決する』(アスコム)他。

取材・文/島田ゆかり、image via shutterstock

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