「焼酎は太らない」「休肝日は週に2日」など、巷にはお酒に関するさまざまな健康知識が出回っています。しかし、専門医の目から見ると誤っているものが多いと話すのは、アルコールに関連する内科学を専門とする加藤眞三教授(慶應義塾大学看護医療学部)。

加藤教授の新著『肝臓専門医が教える 病気になる飲み方、ならない飲み方』(ビジネス社)から、忘年会シーズンにとくに注意したい「お酒にまつわるホントの話」をご紹介します。

肝臓専門医が教える病気になる飲み方、ならない飲み方

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「焼酎は健康によい」って本当?

2000年前後から人気が高まり、ビールやワインよりも好きという女性が増えてきた焼酎。ブームの理由のひとつとなったのが、低カロリー・低糖質で健康によいというイメージです。

確かに蒸留酒である焼酎は、ビールとくらべて糖分やプリン体が少なく、血糖値が上昇しにくい、高尿酸血症や痛風になりにくいといわれます。しかし「痛風を起こさないかといえば疑問が残る」と加藤教授は指摘します。

高尿酸血症は、アルコール自体にそれをもたらす作用があり、ビールなどに含まれるプリン体の量が大きな影響をもつわけではないのです。蒸留酒も大量に飲めば尿酸を増加させます。

『肝臓専門医が教える 病気になる飲み方、ならない飲み方』44ページより引用

「健康によいから」と他のアルコール類を控えて焼酎派になると、焼酎はアルコール度数が高いため、アルコールの摂取量が増えてしまうという弊害もあります。

アルコール依存症の肝硬変患者には、焼酎好きが多いのも事実だと加藤教授。「健康のために焼酎」という言い訳をせず、適量を守って飲むことが大切なのです。

「休肝日」は必須ではない

お酒にまつわる勘違いは、他にもたくさん。

「休肝日をつくりましょう」「週に2日は飲まない日にしましょう」といったよくある指導にも、誤解があると加藤教授は語ります。

例えば、毎日晩酌でビール(中瓶)1本を飲んでいるけれども、それ以上飲むことはほとんどなく、たまに会合などでもう少し飲む日があるという人。こんな人は、休肝日を設ける必要はありません。しかも、検診で肝機能に異常がないのであれば、休肝日はまず必要ないでしょう。

『肝臓専門医が教える 病気になる飲み方、ならない飲み方』14ページより引用

肝臓は心臓や肺と同じで、休みを必要とする臓器ではないと加藤教授。適度の飲酒であれば、肝臓がそれほど傷つくわけではないのだそう。休肝日が必要なのは、ついお酒を飲みすぎてしまうという人や、飲みすぎが続いてしまったような場合です。

「休肝日」と死亡率の意外な関係

お酒の飲み方については、さらに意外な事実もあります。「飲酒の量、1週間に飲む回数と、死亡率」を調べたあるデータ(※)では、適量の飲酒の場合、休肝日を設けないほうが死亡率が低くなるという結果が出たのです。

週に(アルコールの摂取量が)300g以下の適度の量であれば、同じ量を飲むグループの中で比較すると、休肝日を多く設ける人より、休肝日が少ない人の方が、むしろ死亡率が低いのです。

このことは、週に飲む量が同じで、適度の飲酒量の範囲内であれば、毎日コンスタントに飲んでいるほうが、たまに飲んで大酒するような飲み方よりもよいことを意味しています。

『肝臓専門医が教える 病気になる飲み方、ならない飲み方』16ページより引用

つまり、怖いのは「たまに飲みすぎちゃうけど、休肝日をつくっているから大丈夫」というタイプ。加藤教授によると、米国では1回2時間あたりの飲酒につき、女性で4ドリンク(アルコール60g)をあおるような飲み方を「ビンジ飲み」と呼び、危険を伴う飲み方として注意を促しているといいます。

年末年始、「ビンジ飲み+休肝日」で乗り切ろうとしているお酒好きは要注意! 飲みすぎは百害あって一利なしと、改めて心しておく必要があるようです。

※1週間に150g未満のエタノールを摂取する人のうち、週に3~4日飲む人の死亡率は0.96%だが、週に5~7日飲む人は0.87%。1週間に150~299g摂取する人は、それぞれ1.03%、0.96%である。週5~7日飲む人のほうが死亡率は低い。T Marugame et al. Am J Epidemiol(2007年)より作成。

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肝臓専門医が教える 病気になる飲み方、ならない飲み方]image via shutterstock

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