2019年もあとわずか。「今年こそジムに通う」「ランニングを習慣にする」と決意したはずなのに、また挫折してしまった……そんな後悔は、もう最後にしませんか?
「途中であきらめない、くじけない人になるためのコツがある」と話すのは、スポーツメンタルコーチの鈴木颯人さん。これまで1万人を超えるアスリートの“やる気”を引き出し、パフォーマンスを激変させてきた鈴木さんに、運動を無理なく続けられるマインドの作り方を聞きました。
「達成できない日々」を作ってはいけない
image via shutterstock――なにか目標を立てたとき、くじける人とくじけない人の違いはどこにあるのでしょうか。
鈴木颯人 :
「ランニングをしたい」など、動機がはっきりしているのにやってみて続かないときは、マイルストーン(小さな目標)の設定のしかたがよくないかもしれませんね。
――大きい目標を立てすぎてしまうということですか?
鈴木颯人 :
まさにそうで、「達成できない日々」を作ってしまっていることが問題です。忙しくてできなかったとか、予定していたメニューをすべて消化できなかったとか。そうすると「できない日々」が続くので、メンタル的にいうと自己効力感がなかなか培われないんです。
逆に「くじけない人」とはどういう人かというと、必ず自分で立てた目標を達成し続ける人。そうすると自然と自己効力感が高まっていき、いわゆる自信が備わって、モチベーションにも通じていくのかなと思います。
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「目標を変える勇気」を持つべし
image via shutterstock――なるほど、目標を達成できなくて焦りやストレスを感じることが、「くじける」ことにつながってしまうんですね。
鈴木颯人 :
はい。そのときには、勇気をもって目標を変える必要性があります。最初は自己認知ができていない状態で目標を立てるので、大きな目標を立てがちです。そうなると、どうしても「思ったよりもできない」ということが起きるんですね。
――目標は、どれくらいのレベルに設定したらよいのでしょうか?
鈴木颯人 :
スポーツ科学では50%くらいの、達成できるかできないかくらいの目標設定が一番いいといわれています。
たとえば富士山に登るにしても、ふもとから登るのは大変。でも五合目からなら、なんとなく富士山の頂上、つまりゴールが見えますよね。それくらいがちょうどいいと思います。
「くじけない」ための3原則
image via shutterstock目標を達成する「くじけない人」になるためには、いくつかコツがあるという鈴木さん。まずは次の3つを試してみてください。
1.目標を再設定することを恐れない
鈴木颯人 :
自分の実力を過大評価して、大きな目標を立てると挫折しやすくなります。そこで第三者的なトレーナーのアドバイスが重要になるのですが、トレーナーがいない場合、目標を再設定することを恐れないでください。
プロ野球選手で「野球日誌を毎日書く」という目標を立てたのに、全然できない人がいたのですが、その人は最終的に「机の前に座る」を目標にしたら書けるようになりました。
自分で「低い目標だ」と思っていても、じつはけっこう大きな目標になっていることはよくあります。ジム通いを習慣化したいなら、「ジムに行く」ではなく、「ジムに行く準備をする」「荷物を用意しておく」といったところから始めると、うまくいくことが多いです。
2.始めるときは人に言わない
鈴木颯人 :
何か始めるとき、あえて人に話して自分にプレッシャーをかけるという意見もありますが、私は人に言わないほうがいいと思います。
しれっと始めて、まわりに「最近、体が引き締まったよね」と気づいてもらえる感じを目指す。そうすると自尊心もくすぐられますし、目標を下げても自分しか知らないので、躊躇なく再設定できますよね。
見せつける努力よりも、隠れた努力のほうがいいというのが私の考えです。
3.同じ条件での「成功事例」を集める
鈴木颯人 :
以前「自分は身長が173cmしかないからプロ野球では成功できない」と悩んでいたクライアントがいました。そこで私がやったのは、173cm以下のプロ野球選手やメジャーリーガーのデータをすべて集めること。自分と似たような境遇で目標を達成した人の事例を知ると、心理的にすごくラクになるんですね。
人はどうしても、自分の世界観で努力しようとしすぎて、自分は無理かもしれないと思ってしまいます。でも自分と共通点がある人の成功事例を集めると「私にもできるかも」という“勘違い”が生まれる。それをうまく利用するのがコツです。
「自分の未来を決めつけない」ことが大切
image via shutterstock「できるかも」という勘違いもあるけれど、「できないかも」というのも勘違いに過ぎないと鈴木さん。すぐにくじけてしまう人は、自分の未来を決めつける傾向があるかもしれないと語ります。
鈴木颯人 :
アスリートは、目の前の結果を追い求めすぎると最終的なゴールを見失ってしまいます。結果に一喜一憂すると、そこにメンタルが連動する。大切なのは、事実と解釈をわけて考えること。「私はダメなのかもしれない」という思い込みも解釈にすぎません。
じつは私自身もいま、ワークアウトの頻度をあげようと思っているのですが、なるべく自分を追い込まないようにして、体に痛みを感じない程度、楽しいなという程度で続けることを重視しています。
モチベーションが上がらないときは、ご褒美として「ハワイ旅行」のような明確な楽しみを用意することも有効だと鈴木さん。「くじけない人」とは、我慢強い人や意思の強い人ではなく「楽しくやれる工夫をする人」――そう捉えてみてもいいのかもしれません。
強いメンタルを作るコツ
『最高のリーダーは「命令なし」で人を動かす』(KADOKAWA)
鈴木颯人さんによる最新刊のこちらは、タイトルから見るとビジネスマン向けですが、実生活に役立つコツが満載です。全5章からなる本著では、「感覚」「言葉」「意識」「期待」「目標」といった5つのキーワードに分けてそれぞれのギャップに注目し、正しい目標設定でモチベーションを引き上げるためのメソッドが描かれています。意外な盲点が盛りだくさんなので、ぜひ一度手にとってみて。このほかにも『一流を目指すメンタル術』(三笠書房)など、著書多数。
鈴木颯人(すずき・はやと)
1983年、イギリス生まれの東京育ち。スポーツメンタルコーチ。Re-Departure合同会社代表。一般社団法人日本スポーツメンタルコーチ協会代表理事。7歳から野球を始め、中学ではピッチャーとして活躍し強豪高校にスポーツ推薦で入学するも、結果を出せず挫折。大学卒業後も失敗や挫折を繰り返し、心身のバランスを崩して、うつ病と診断されるが脳と心の仕組みをイチから学び、うつ病を克服。これまでの自身の経験をもとに勝負所で力を発揮させる独自のメソッドを構築し、2013年にスポーツメンタルコーチとして独立。モチベーションを引き出すコーチングを通じて、競技の種類やプロアマを問わず、パフォーマンスを激変させるアスリートが続出している。これまでコーチングしたアスリートは1万人を超え、指導者や選手の両親、ビジネスマンへのメンタルコーチも好評。15万人を超えるTwitterフォロワーに日々メッセージを発信している。公式HPはこちら。
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