第2回「寝ちがい」の原因と対処法
朝起きたら突然、首が回らなくなっている「寝ちがい」は、病院に行くほどではないけれど、本当に痛いし、つらいものです。スポーツトレーナーで鍼灸師の上杉徹さんから学ぶセルフメンテナンス法、第2回は「寝ちがい」について。原因と対処法を教えていただきます。寝ちがいは、“肉離れ”のようなもの
「パソコン作業など、背中を丸めて腕を前に出す体勢を長く続けている人は、寝ちがいになりやすい」という上杉さん。猫背で腕を前に出すことが、どうして寝ちがいにつながるのでしょうか?
上杉さん :
長時間、背中を丸めて腕を出していると、脇の下側にある前鋸筋(ぜんきょきん)と、鎖骨の下にある小胸筋(しょうきょうきん)が収縮して硬くなります。
これらの筋肉が硬くなった状態で、急に首を反らせると、首周りの筋繊維がプチっと切れてしまう。いわば“小さな肉離れ”が起こったのと同じです。
肉離れとは……、痛いはずです。首の周りの神経は敏感だから、余計に痛みを感じやすいのでしょうね。つらい痛みを少しでも早く治すためには、どうすればいいのでしょう?
01.寝ちがい対処法 その原因となった大きな筋肉をほぐす
上杉さん :
寝ちがいの原因となった大きな筋肉をほぐすのが、早く治す近道です。朝、時間がないときは、キネシオテープを患部にペタっと貼っておくだけでも、痛みは緩和されます。
1.脇の下の筋肉「前鋸筋」を指4本で押す
左脇の下に右手を挟み、小指が当たるところに人差し指を移動させて指4本分が押すところ。場所を確認したら左腕を上げて、少し痛いくらいの強さで3秒×2~3回押す。※反対も同様に。
2.鎖骨の下にある「小胸筋」を指3本で押す
鎖骨の下で少し盛り上がっているところ。押すと痛いと感じる部分を3本指で3秒×2~3回押す。※反対も同様に。
3.力こぶの下「上腕二頭筋」を親指で押す
腕の内側、力こぶをつくったときにできる筋肉の溝を、親指で3秒×2~3回押す。※反対も同様に。
02.応急処置のテーピング
痛みを感じる箇所の筋肉を無理のない範囲で伸ばし、キネシオテープは引っぱらないようにして貼ります。患部から多少ズレていても、気にしなくて大丈夫です。はじめてのテーピングはこちら。
「痛みを確認する行為」が、治りを遅くする
上杉さん :
身体に傷ができると、血液中にある白血球が集まり修復させるので、放っておけば自然と治ります。
でも、みなさんは痛いとき、どれだけ痛いか、首がどこまで曲がるかを何度も確認しますよね。その行為は、せっかくできたカサブタをはがすようなもの。動かせば動かすほど治りが遅くなるんです。
ついやってしまう確認行為が余計に悪化させてしまっていたんですね。ほかにやってはいけないことはあるのでしょうか。
上杉さん :
寝ちがいや肉離れは、小さな出血を起こしている状態なので、鍼(はり)はいいけど、マッサージはダメ。シャワーはOKですが、お風呂につかるのは控えたほうがいいでしょう。
ご紹介したセルフメンテナンス法1〜3は、寝ちがいになった後はもちろん、寝る前にほぐしておくことで、予防にもつながります。
「最近、寝ちがいになることが多いな」という人は、日中もできるだけ背筋を伸ばして、前かがみの姿勢を続けないよう気をつけましょう。
*ご紹介したものはあくまで応急処置なので、痛みや不快感が続く場合は、専門家にみてもらいましょう。
上杉徹(うえすぎ・とおる)さん
スポーツトレーナー、鍼灸師。医療国家資格(鍼灸師 柔道整復師 理学療法師)を持ったスポーツトレーナー集団「SPCT(スぺクト)」代表。JUJUやAK69など、アーティストのツアーにトレーナーとして全国を帯同する一方、世の中に健康とスポーツヘルス・メンタル作り・予防学を発信すべく、企業や団体とパートナーシップを組み、社会貢献活動を行うなど新たな試みにもチャレンジしている。
撮影/高村瑞穂、モデル/村上加世 (SPCT/ハワイアントレーナー 鍼灸師)、 image via Shutterstock