もしかしたら、その外見の変化は「更年期」だからかもしれません。更年期に必要以上に老けない、美しくあるための方法を、更年期に詳しいDクリニック東京 ウィメンズ院長の浜中聡子先生に伺いました。
見過ごしがちな、肌や髪にあらわれる更年期症状
「更年期」とは小児期、思春期、成熟期に続く“時期”のことで、女性が人生を歩むうえで必ず経験する通過点。一般的に閉経前後10年がそう呼ばれています。
女性にはエストロゲンとプロゲステロンという2種類の女性ホルモンが分泌されていますが、閉経へと向かうとき、特にエストロゲンの分泌量が下がることで、心身にさまざまな不調をきたします。
ホルモンの低下以外にも、年齢的にも体力や筋力が落ちやすい年代であることと、妻、母、娘としてさまざまな役割を持つ世代だけにストレスが多いことも不調の原因になっています。
症状は実に多岐にわたり、のぼせやほてり、発汗などのホットフラッシュ、めまい・耳鳴り、動悸・息切れ、イライラ、不安感、うつ、判断力・集中力の低下、肩こり・関節痛、頭痛、不眠などがその一例。これらの症状別の更年期対策については前編でご紹介しています。
その一方で、肌や髪、爪にも更年期にも大きな変化が起こりやすいことはあまり知られていません。
今までとは違う外見の変化が「更年期のせいだったなんて」と悲しい気持ちになってしまいますが、更年期は誰にでも訪れる通過点。更年期を美しく乗り切る工夫に努めましょう。
ツヤの低下、細かなシワ。気になる「肌の乾燥」
女性ホルモンは女性を女性らしくさせるホルモン。女性らしい丸みのある体づくりや、肌のツヤにも大きく影響します。
浜中先生 :
ですから、女性ホルモンが低下すると、顔だけでなく全身の肌が乾燥しやすくなるのは仕方がないこと。
また、年齢とともに肌質も変わり、天然の保湿成分である皮脂の分泌量も減るので、トラブルも出やすくなります。
日常のケアで心がけたいのは、洗浄と保湿。正しい洗顔をして肌を清潔に保ち、しっかりと保湿をします。肌のコンディションが悪いからといって、「あの頃の肌に戻りたい」「あのブランドが私の肌にあっていたはず」と若いときに使っていたスキンケアラインに戻るのはNG。
しっかり保湿をしたうえで、シワやたるみといった悩みに応じた有効成分の入った化粧品を選ぶことが大切です。
また、「ホルモン補充療法によっても肌は上向きになる傾向にある」と浜中先生。トラブルが出にくくなったという患者さんは多いそうです。
とはいえ、ホルモンの補充は万能薬ではありません。それに、肌あれの原因が他にあるかもしれません。
浜中先生 :
大切なのは、自分の”ホルモン値“を知ること。更年期外来、もしくは女性外来や婦人科でおこなう血液検査で調べられます。
まずは自分の現状を知って、ホルモン値と自覚症状を照らし合わせながら改善へのアプローチ法を探っていくのがいいですね。
また、全身の乾きという点では、ドライアイや膣の乾きも女性ホルモンが低下することで起こる症状。ホルモン補充療法などの治療も有効です。
ドライアイは目薬を使ったりパソコンなどの使いすぎによる眼精疲労を防いだりすれば緩和につながります。
また膣のかゆみや不快感につながる乾燥はホルモンゲルの塗布で緩和されることもありますが、潤滑ゼリーなども効果的です。
意外と悩みが深い「髪のうねり、爪の乾燥」
頭髪の専門家でもある浜中先生のもとには、髪にまつわる悩みを抱えた患者さんが多く訪れます。
浜中先生 :
どんなにケアをしていても、年齢とともに髪のうねりやパサつき、コシやツヤがなくなるのは仕方のないこと。
昔のような髪質に戻したいと躍起になるのではなく、いま似合う髪型を研究して楽しんだほうが現実的だと思います。それより悩みが深いのは、白髪や薄毛・抜け毛です。
薄毛・抜け毛は、更年期にあらわれる症状のひとつ。エストロゲンは毛髪を育てる働きがありますが、それが減少することで成長が促されなくなってしまいます。
そのため、ひとつの毛穴から生える髪の本数が減る、しっかり成長する前に抜けてしまう、髪がやせるなどして、薄毛につながってしまいます。
浜中先生 :
健やかな髪が生える土台をつくるために、頭皮を清潔に保つシャンプーケアが大切です。そして食事や睡眠などの生活習慣も見直しましょう。
健やかな髪のために、積極的に摂りたいのはたんぱく質。睡眠の質を高めるという点ではホルモン補充療法も有効です。
白髪は毛根のメラノサイトの働きが低下することがおもな原因ですが、少なからず女性ホルモンの低下も原因に考えられます。また、貧血傾向にあると白髪が増えやすくなるので、鉄分の摂取も心がけましょう。
爪の原料は髪と同じですが、髪に比べると比較的早期に質の改善が期待できるそうです。たんぱく質の摂取量を上げ、保湿を心がけることで、筋のない丈夫な爪が目指せるそうです。
髪や肌に今までとは違う変化を感じたら、まずチェックしたいのが自分のホルモン値。ホルモン値と自覚症状の変化の推移に応じて対策を練ることができますし、何より悩みを打ち明けられる主治医という存在ができるも心強いですね。
そして今回、浜中先生のお話を聞いてつくづく感じるのが、食事や睡眠といった内側からのケアがとても大切だということ。
生活習慣の見直しは、結果が出るまでに時間がかかります。できるだけ早いうちから意識しておいて、エストロゲン値が低下しても揺らがず、見た目にも美しく、心身ともに健やかな自分でいたいですね。
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浜中 聡子(はまなか・さとこ)先生
北里大学医学部を卒業後、北里大学病院などを経て2009年にDクリニック東京 ウィメンズの前進であるAACクリニック銀座院長に就任。米国抗加齢医学会専門医、国際アンチエイジング医学会専門医、米国先端医療学会専門医など多数の資格を取得。NPO法人アンチエイジングネットワーク顧問などの役職も歴任し、更年期や頭髪治療など幅広く女性の悩みに寄り添っている。『女性ホルモンとの上手なつきあい方――キレイも元気も、ぜんぶ手に入る!』(三笠書房)など著書多数。
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