こうした心の悩みは、何も現代に限った話ではなさそうです。T・バトラー=ボードン著『世界の自己啓発 50の名著』(ディスカヴァー・トゥエンティワン) には、世界中に伝わる自己啓発の名著がたくさん紹介されています。それだけ、昔の人たちも生きづらさや心の不調を持ちつつ、何らかの工夫をしながら生きてきたのだといえるでしょう。
とはいえ、自己啓発というと街角のセミナーなど、何やら怪しげな印象を受けることもあります。しかし、本当に優れた自己啓発書とは、もともと持っている自分の能力を発揮する方法がわかるもの。今を生きる人たちにとっても、よりよく生きるためのヒントが隠されているはずです。
世界の自己啓発50の名著 (LIBERAL ARTS COLLEGE)
2,750円
自分の中の「可能性」を見つけよう
T・バトラー=ボードン著『世界の自己啓発 50の名著』 には、自己啓発の名著の数々が、6つの章に分かれていて、全部で50冊の本が紹介されています。「思考を変え、人生を変える」「目標を設定し達成する」などといった具体的なテーマのもと、さまざまな切り口からチェックできます。
もっともすぐれた自己啓発書は、自分中心の絵空事でなく計画や目標、理想、能力を発揮する方法を確認させてくれる。確認することによってあなたは世の中の一片を変え、それとともにあなた自身も変わる。
『世界の自己啓発 50の名著』5ページより引用
そもそも、自己啓発書の多くは、問題に対処するための方法がわかるものとしてとらえられてきました。しかし、名著といわれるほとんどは、「可能性」をテーマにしていると著者は説明しています。「自分の考えで世の中を変えることができる」と、信じるための知恵を得る。まさに、可能性の文学であるといえるでしょう。
ネガティブな考えで頭の中がいっぱいになったら?
本著には、心の浮き沈みに対応していくための本が多く紹介されています。たとえば、デビッド・D・バーンズ著『いやな気分よ、さようなら』には、こんな解説が添えられています。
感情をそのまま信じることは非常に危険だ。(中略)感情を信じるのは、ほとんど最後の段階でよい。「気分は事実とは異なる」からだ。
『世界の自己啓発 50の名著』68ページより引用
どんな人も皆、無意識のうちに“気分”と“感情”の世界で生きているもの。
もしも、否定的な考え方が雪だるま式に膨らんで、軽い憂うつに取りつかれてしまったら? そんなときには、“自分の感情は疑いようのない事実なんだから、嫌な気持ちはどうにもならない……”と思いがちです。しかし客観的に見てみると、実は違っているということもしばしば。トラブルやマイナス感情の渦中にあっても、「気分は事実とは異なる」という考え方を知っておくだけで、視野はぐっと広がるといえるでしょう。
「今の気分は、自分の感情と違うかも」と考えてみるべし!
なかなか成長しない自分がいます……
また、エレン・ランガー著『心の「とらわれ」にサヨナラする心理学』には、こんな一文があります。
背景にとらわれずに情報を解釈すると、マインドフルになれる。ランガーによれば、背景から自由になる能力は、マインドフルネスと創造性の証である。
『世界の自己啓発 50の名著』85ページより引用
マインドフルネスによって物事をコントロールすると、選択肢が広がり、今まで限界だと思っていたことを超えられるようになると記されています。
そのためには、新しい情報に対してオープンでいることが必要。私たちはつい、考えの型にはまってしまう傾向があります。何かを見るときには、すでにあるカテゴリーの中に当てはめようとしてしまうもの。新しいカテゴリーを作ろうとしたり、古いカテゴリーを見直そうとすることはマインドフルネスな考え方に通じているといいます。ものの見方を広げることで、心はもっとラクになるといえそうです。
新しく見聞きすることを、古い型に当てはめないようにしよう!
他人からの評価ばかりを気にしてしまうなら?
こういった自己啓発の考え方は今に始まったものではなく、古くは、仏教の教えの中にもその様子は見てとれます。
ブッダといえば、現在のネパールの位置にあった小国の王子で、29歳のときに宮殿を出て密林に入り、悟りを得たことで知られる人。ブッダが人々に伝えた教えの中にも、現代に通じる心の対処法が多く収められています。たとえば、『ブッダの真理のことば・感興のことば』には、こんな一文が。
すべての人を喜ばせることはできない! 肝心なのは、自分のすべきこと、誠実であることに集中することだ。そうすれば、他人によく見られることに気を取られずにすむ。
『世界の自己啓発 50の名著』250ページより引用
自分の身の回りにいるすべての人を喜ばせることは、どうしたって不可能であるといえるでしょう。
心の安定を図るためのポイントは、みんなによく思われることは無理なのだと最初から認めてしまうこと。人生の現実としての批判を受け入れ、そのうえで、物事に誠実に向き合っていく。その一点に集中することで、心の安定を図ることができるようです。
みんなからよく思われるのは無理! 自分のすべきことだけに集中して。
心の浮き沈みというものは目に見えるものではないため、漠然と考えがちです。しかし、先人の知恵や教えの中に、うまく乗り切っていくコツが多くあるのかもしれません。
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[ 世界の自己啓発 50の名著 ]image via shutterstock