VOL.10は、月経周期のトラブル(月経痛、月経不順)やおりものの診察はもちろん、更年期だからこその悩みにも丁寧に対応。さらに、カウンセリングで心の相談にものってくれる産婦人科医、吉野一枝先生(よしの女性診療所院長)をご紹介します。
VOL.10 婦人科/よしの女性診療所院長 吉野一枝先生
どのような症状の患者さんへの診察が多いですか?
月経周期のトラブル(月経痛、月経不順)、おりものや性感染症、更年期の不調などの診察が多いです。月経周期による不調では、月経痛と月経不順の方が多いですね。
月経痛は、子宮内膜症という病気で起こることもありますが、子宮内膜症ではなくてもひどい月経痛で悩む方はいらっしゃいます。体の冷えが強い人は、月経痛がひどくなりがちです。
自分でできることとして、生活習慣の見直しも提案しています。バランスのよい食事、入浴、充分な睡眠、適度な運動、趣味の時間をもつことなど、自分の時間をもう一度見直してみてほしいと思います。治療としては、低用量ピル、漢方薬などがあります。
月経不順の原因は、卵巣機能不全やホルモン異常が考えられますが、ストレス、生活環境の変化、体重の急激な増減、心因性のものなどでも不順になります。
また、不正出血による受診もあります。不正出血で一番心配になるのは「がん」です。子宮体がんの場合、不正出血が初期症状としてあげられます。不正出血は、排卵期に起こることもあります。これは生理的な出血なので心配のない出血です。出血といっても原因はさまざま。検査をしないとわかりませんので、怖がらずに受診してください。
外陰部のかゆみやおりものの異常は、自己判断や自己治療は危険です。かえって症状を悪化させ、治りにくくしてしまうこともあります。「おかしいな?」と思ったらすぐ婦人科を受診してほしいです。
また、更年期の不調の治療にも力を入れています。起こりやすい症状としては、肩こり、腰痛、疲労感、のぼせ、ほてり、発汗、めまい、耳鳴り、動悸、イライラ、不安感、不眠、憂うつ気分など。
症状は、ひとりひとり多岐にわたります。自律神経失調症とも似ています。なかには何科を受診してよいのか迷うような症状もあります。そのようなときは、まずは婦人科で相談してみてください。
更年期障害の治療法としては、ホルモン補充療法(HRT)、漢方薬などのほか、カウンセリングが有効なこともあります。更年期の不調は、その人の性格的なものも、とても大きく影響するからです。
また、「更年期症状だと思っていたら別の病気があった」という場合もありますので、自己判断せず、婦人科を受診して、検査と診断を受けてください。
心理カウンセリング(相談)はどのようなときに受けられますか?
多くの病気の原因は、体の器質的な疾患(病気)ばかりでなく、心の問題が影響を与えていることが少なくありません。病気になるのは、その人が全体としてどこかバランスを欠いている、ということもあります。
心に不安があるとき、相談したいことがある場合は、どんなことでもご相談ください。婦人科の悩み以外でも結構です。婦人科受診の際の一般的な問診でも、体のこと以外のお話を伺うことにしていますが、特に心理的なご相談がある場合は、お申し出ください。
カウンセリングを希望する方は、予約の際に「カウンセリング希望」とおっしゃってください。初めての方の場合、最初の日は15分ほど、簡単にお話を伺うことにしています。
そのうえで、カウンセリングを希望されるのであれば、次回に改めて予約(通常1時間枠)をお取りいただきます。カウンセリングは、相性の問題もあり、患者さんが「ここで話をしたい」と思わなければ意味がないと考えるからです。
たとえば、更年期の落ち込み、うつっぽさ、イライラなどがある方のお話を伺っていると、家族や職場の人間関係に問題を抱えているケースが多々見られます。コミュニケーションの取り方や違うものの見方ができるだけで、心が元気になることもあります。
※カウンセリングは電話予約。万一予約キャンセルの場合は、必ず当日の朝までにお電話を。それ以外は、3,000円のキャンセル料を頂きます。カウンセリングは、基本的に平日の夕方4時台・5時台を予約受付対象としております(土曜日は受け付けておりません)。
自動ドアが開いてすぐ、受付や待合室の患者さんと目が合ってしまう圧迫感を排除したいと、受付カウンターは正面を向いておらず、また待合室の前に衝立が置いてあります。クリニック内も家庭用家具が並んでいて、とてもリラックスでき、居心地のいい空間です。入り口脇は、サブ待合にしていて、薬の説明やLGBTの方などに使っていただいています。
更年期の泌尿器、生殖器に起きる症状に新しい治療を導入されたということですが、どのような治療でしょうか?
40代に入り、女性ホルモンが急激に低下していくと、さまざまな体調の変化が起こり、ときに不快症状でQOLが低下するということがあります。
特に、泌尿器、生殖器に起きる症状で、尿が近い、尿が漏れる、不快なおりものが出る、臭いが気になる、性交時に痛みがあるなどは、つらく、なかなか病院でも言い出しにくい症状だと思います。これらはエストロゲン低下による腟の萎縮症状です。
更年期や更年期以降の腟萎縮を改善するのが、レーザー再生治療、炭酸ガスフラクショナルレーザー治療器を「モナリザタッチ」です。
炭酸ガスレーザーは、粘膜組織の水分に吸収されると、熱エネルギーに変換される作用があります。以前から、手術や皮膚若返り治療など多くの診療科で使用されてきています。
フラクショナルレーザー照射法は、微小なレーザーを点状に照射する手法で、新生コラーゲンを生成し、腟粘膜をよみがえらせます。照射後は、腟粘膜がふっくらと厚みのある上皮を形成し、代謝機能が復活します。
施術は、数分間で痛みも多くはありません。当日の入浴(シャワーは可)と3日間の性交渉を避ける以外は、特に日常生活の制限もありません。幅広い年代の方に受けていただける治療法です。
診療室。照明も温かいオレンジで、とっても落ち着けます。椅子は座り心地がよく、ドクターと患者の椅子は全く同じ。横に並んで友達と話すように相談できます。待合室から遠い位置にあって壁と扉の防音を強化してあり、内診台と診察ベッドもこの部屋の中にあるので、ほかの患者さんと一緒になることはなく、完全なプライバシーが保たれます。
診察をするにあたって、大事にしていることは?
些細な症状でも、体調や心の状態に何か異変を感じたら、予防も含めて婦人科を訪れてほしいと思っています。女性は、初潮を迎えたときから婦人科のパートナードクターを持ってほしいと思います。そんなパートナードクターとして、体質や生理周期などを知って、さまざまなアドバイスができる診察を心がけています。
避妊や月経痛の緩和、月経周期のコントロール、ニキビや多毛の軽減、更年期障害の予防と緩和、子宮内膜症の治療として、低用量ピル(OC)を知ってほしいと思い、紹介しています。
低用量ピルは、確実な避妊効果だけでなく、さまざまな副効用(利点)があります。女性にとって強い味方になり得るものです。副作用が心配、と言う声もよく聞かれますが、おもな副作用は飲み始めのマイナートラブル(気持ちが悪い、頭痛、胸が張る、むくみ、だるいなど)だけです。何もない、と言う方も60%くらいはいらっしゃいます。副作用が出た方も続けていくと軽減されて、2、3か月すると落ち着くことが多いです。
重篤な副作用としては「血栓症」が挙げられますが、これは非常にまれで滅多に起こらないものです。喫煙や妊娠の方のほうが、はるかに高い血栓症のリスクファクターなのです。どんな薬にも副作用はあります。漢方薬や鎮痛剤、胃薬、便秘薬など、あらゆる薬には副作用がありますが、それを上回る効果を期待して服用するのです。
低用量ピルも同様で、副作用をはるかに上回る避妊効果と副効用の数々を理解していただきたいと思います。低用量ピル(OC)の処方は、血圧測定と問診表の記入のみで処方しています。1シート(28日分)で2,500円※ です。
待合室は診療所らしくなく、自由にお茶を飲めて、おすすめの本や雑誌を読むことができます。待合室のスペースは広く、ここでミニセミナーなども行っています。
※自費のピルは2,500円(ジェネリックは2,000円)ですが、月経困難症の治療薬として出ているピルは保険適応です。
先生ご自身が日常生活で健康のために、気をつけていることは?
私は、少しでも快適に、体に無理なく過ごすために、“自分ファースト”の発想が重要だと思って、更年期を乗り越えてきました。
日本の女性は真面目すぎて、自分のことをないがしろにしがち。けれども、誰かの役に立ちたいなら、まず自分を大事にしたい。現代女性は、仕事に家事に育児に親の介護に……とたくさんの役割を担っています。自分の健康ケアを第一にしなければ、仕事もプライベートも楽しめないと思っています。
私自身も、睡眠・食事などの規則正しい生活を送ること。またさらにホルモン補充療法(HRT)や漢方薬などでのケアや治療も積極的に行っています。
趣味の時間も大切にしています。音楽、料理、書道など。友達を呼んでホームパティーで飲む赤ワインも大好きです!
診療内容、料金目安は?
診療内容
婦人科一般外来(子宮・卵巣疾患・月経・おりものトラブル・不妊症・更年期障害など)・婦人科検診(子宮頸がん・子宮体がん・性感染症など)・ホルモン補充療法(HRT)・低用量ピル(OC)・緊急避妊。腟外陰部レーザー治療(モナリザタッチ)・産科(検診のみ・34週くらいまで)
通常診療
保険診療
自費診療(価格は税込)
相談料 1回(15分)5,500円(15分を超えた場合は10分につき1,100円。相談があり、それ以上の診察時間をご希望の方は改めてカウンセリング枠(1時間11,000円)をお取りすることも可能)。 低用量ピルは血圧測定と問診表の記入のみで処方。1シート(28日分)で2,500円。※ モナリザタッチ(腟・外陰部同時照射)1回55,000円 女性検診 14,300円(子宮頸がん検診、超音波による子宮・卵巣のチェック)※自費のピルは内税価格です。
※自費のピルは2,500円(ジェネリックは2,000円)ですが、月経困難症の治療薬として出ているピルは保険適応です。
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電話:03-5996-6101
吉野一枝(よしの かずえ)先生
よしの女性診療所院長。産婦人科医・臨床心理士。高校卒業後、今で言う「フリーター」や、コマーシャル制作の会社勤務を経て、29歳のとき、医学部受験を志す。3年間の予備校通いの末、32歳で帝京大学医学部入学。1993年、帝京大学医学部卒業。東京大学医学部付属病院産婦人科に研修医として勤務。東京大学医学部産科婦人科学教室に入局。母子愛育会愛育病院、長野赤十字病院、藤枝市立総合病院などの産婦人科に派遣勤務この間、東京警察病院にて麻酔科研修。2001年、臨床心理士資格取得。2003年、よしの女性診療所を開院。日本産科婦人科学会認定医、日本臨床心理士資格認定協会会員、日本ソフロロジー法研究会会員、NPO法人女性医療ネットワーク副理事長、 東京産婦人科医会学校保健担当理事 。著書に『40歳からの女性のからだと気持ちの不安をなくす本』(永岡書店)ほか多数。
インタビュー・執筆/増田美加(女性医療ジャーナリスト)
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