『その調理、9割の栄養捨ててます!』 (東京慈恵会医科大学付属病院 栄養部監修、世界文化社)は、最新の研究やデータをもとに、ムダなく栄養を摂るさまざまなコツを教えてくれる本。今回はそのなかから、5つの定番野菜の栄養素を高める調理法をご紹介します。
血液サラサラ効果が得られるタマネギの切り方
タマネギの辛味のもとである硫化アリル。何となくやりがちな「タマネギを切ってから水にさらして辛味を抜く」という調理法は、栄養面では大損をしています。
硫化アリルは空気にふれると、コレステロールを抑えて血液をサラサラにするアリシンに変化します。つまり、タマネギは細かく刻めば刻むほど効果的。みじん切りやすりおろしで10分ほど放置すると、アリシンが元気に活性化してくれます。
しかし、このとき水にさらしてしまうと効果が台無しに。アリシンはもちろん、大事な水溶性ビタミンまで流れ出してしまうのです。
スープや煮物に使う場合でも、いきなり茹でず、まずは油で軽く1分程度炒めましょう。アリシンの流出を防ぐことができるので、さらにお得です。
すりおろしニンニクのパワーを最大にするには?
タマネギだけでなく、ニンニクもアリシンを含む野菜です。みじん切り、すりおろしなど細かく刻むほどに活性化してパワーを発揮。疲労回復、殺菌、生活習慣病予防、高血圧予防など、さまざまな効果が期待できます。
もっとも効果が高いのは、すりおろし。おろしてから10〜15分で香りも殺菌効果も最高潮を迎えますが、10分以降はアリシンの効果が激減するため、早めに調理するのがおすすめです。
さらに、ニンニクのすりおろしをオイルでゆっくり低温で加熱すると、ガン予防の効果が期待できるとされる成分「アホエン」に大変身。匂いも軽減されるので、オリーブオイルに漬けて保存するといろいろな料理に重宝します。
とはいえ、刺激が強いニンニクの食べすぎは禁物。大人は生ならひと片、加熱調理なら2〜3片が適量です。
ジャガイモは茹で方次第でビタミン量が激変
ジャガイモに含まれるビタミンCは、熱に強く壊れにくいという特徴があります。ただし皮をむいたり、細かく切って火にかけたりすると、やはり4~5割のビタミンは失われます。
そのため、茹でるときは「皮ごと」が鉄則。むくみを予防するカリウムや、肌や血管などの酸化を防ぐポリフェノール「クロロゲン酸」なども、皮ごと茹でることで流失や変質を防ぐことができます。
もうひとつのポイントは、必ず「水から」茹でること。沸騰したお湯だと外側のでんぷんが水を吸ってふくらみ、細胞壁を壊して栄養を流出させてしまうのです。 かぶるくらいの水で20~25分、ゆっくりと茹でることで適度な水分を含み、甘くほっくり仕上がります。芽は皮をむいた後にスプーンなどで取り除きましょう。
ニンジンは炒めてβ-カロテンをアップ
ニンジンに含まれるβ-カロテンは体内でビタミンAに変わり、エイジングケアや免疫力の向上に役立ちます。でも、食べたらそのまますべて栄養として吸収されるわけではありません。
じつは、生で食べるとβ-カロテンの吸収率は8%程度。ビタミンAは油に溶ける脂溶性ビタミンなので、ほとんどが水分である人の体内では溶けずに排出されてしまうのです。 そこで重要なのが、油と一緒に摂ること。油で炒めたり揚げたりしたニンジンのβ-カロテンは、なんと70%も吸収することができます。
油のカロリーが気になる人は、少ない油で調理できるオイル煮がおすすめ。鍋に小さじ半分程度のオリーブオイル、塩、ニンジンを入れて、弱火で20分ほど蒸し煮にしましょう。
キャベツは「煮込んだスープ」がよりお得
栄養価も使いやすさも優秀なキャベツを、賢く食べるならスープがおすすめ。キャベツは生でも食べられますが、繊維質が消化しづらく、カサも多いためにたくさん食べられません。しかも炒めた場合は3~4割、蒸した場合でも2~ 3割ほどビタミンCが減ってしまいます。
しかし煮込んでスープまで飲めば、一部のビタミンは酸化しますが、90%を摂ることが可能になります。ビタミンCは外側の葉の部分と芯の周辺にいちばん多いので、捨てずに残さず食べるようにしましょう。
また、キャベツには胃の調子を整え、胃潰瘍などを防止するビタミンUも含まれています。ビタミンUも水溶性のため、「煮込んだスープ」がよりお得なのです。
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