「40歳を過ぎたら、乳がん検診を習慣に」を伝えるために
「ピンクリボンデザイン大賞」をご存じでしょうか? 今年で15回目を迎え、「40歳を過ぎたら、定期的な乳がん検診を習慣に」というメッセージを広く伝えるために、ポスターやコピーを募集するもの。乳がんの正しい知識や早期発見の大切さを伝え、検診受診を呼びかける作品のグランプリが選ばれます。今年は昨年を上回る18,805通の応募があり、乳がんへの関心度が高くなっていることがわかります。審査委員長はコピーライター/クリエイティブディレクターの中村禎さん(フリーエージェント)が務め、今年で15回めを迎えるにあたり、「あなたが書いたその言葉、あなたが描いたその絵が、人の命を救う第一歩になるかもしれない」とコメント。
ピンクリボンフェスティバル 運営委員会 事務局ディレクターの里井愛さんは「この活動は乳がんについて、検診について自分ごと化して考えていただく機会にもなっています」と、活動のもう一つの目的についても話してくれました。また今年の作品を見て「皆さんの、乳がんや検診の知識が、5~6年前と比べると徐々に前向きで正しいものになってきていると感じます」とコメント。
乳がん検診の受診率は、全国平均44.9%(2016年国民生活基礎調査:女性40–60歳)で、国の目標である50%には届かないものの、受診率は増えているのだとか。そのことからも、啓発キャンペーンが実を結び始めていることがわかります。
昨年のポスター部門のグランプリ受賞作。昨年のポスター部門は、上の写真の雑誌テイストな表紙デザインが、コピー部門では「女の勘は、誤診する」がグランプリを受賞しました。
過去の受賞作品はこちら。
「患者会審査」のフローがあることが特徴
「Pink Ring」のメンバーが審査中。じつは、この審査には「患者会審査」のフローがあります。実際に乳がんを経験された方々が、コピーやポスターの内容を入念にチェック。間違った認識で作られていないか、患者や家族が傷ついたり、不快な思いをしない内容になっているか、チェックを行う大切なステップです。
今回、審査会に参加されたのは、乳がん体験者と医療者が共同で運営する“若年性乳がん体験者のための患者支援団体”として活動している「Pink Ring」のメンバー3人。
乳がん経験者の方々の思いとは?
「Pink Ring」代表 御舩美絵さん今回、「Pink Ring」のメンバーのみなさんに、ご自身が体験された「告知」のことや、セルフチェックのこと、心の支え、今の思いについて教えていただきました。
31歳で告知。「未来が閉じられたのかな」
「Pink Ring」代表 御舩美絵さんは、今から9年前、乳がんだと告知されました。結婚や出産など、これから先の未来が閉じられてしまったように感じたそうです。
「Pink Ring」代表 御舩美絵さん :
当時はまだあまり知識がなく、乳がんと告知されて死を身近に感じ、本当に怖かったです。でも同じ病気の仲間に会い、同じ気持ちをシェアすることで、その思いは変わりました。
病気になっても、がんとともに生きていける。幸せも感じるし、新しい夢も見られるのです。それは心の支えになりました。
でも、まだまだがん患者に対し、誤解や偏見があります。どう接していいかわからないという友人もいます。がんになっても自分らしく生きることができるんです。
早期発見・検診の大切さを伝えるコンテストも重要ですが、これからはがんとともに生きる人たちを社会が理解できるような運動に変わっていくといいなと思います。
妊孕性(にんようせい)温存と治療の両立
吉川春菜さんは、3年前にセルフチェックで胸の違和感に気づき、病院へ。CTや細胞診を受け、約2週間でがんの告知がありました。
吉川春菜さん :
診察を受けてから結果を聞くまでの2週間が、いちばん辛かったですね。もっとも気になったのは、この先子どもを産めるのかということ。妊孕性(にんようせい)のことはかなり調べました。がん生殖医療ネットワークのウェブサイトは正しい情報が網羅されているので、かなり為になります。
告知されたあとは不安になるので、正しい情報なのかそうでないのか判断する余裕がなくなります。できるだけ信頼できる機関が発信している情報を参考にすることをおすすめします。 将来、子どもを希望している場合、抗がん剤治療などの副作用で閉経する可能性があり、子どもを持つことが難しくなるケースもあるので、正しい知識を得て、治療法を自分で選び、納得して進めることがとても重要だと思います。
私は自分の治療が落ち着いたら、これから治療に入る不安な人たちに、正しい情報を伝えていきたいと思っています。
疑いを持ってから告知まで半年
内田美奈さんは、会社の健康診断で乳がんを発見。病院に行くも、告知されるまで半年かかったそうです。
内田美奈さん :
その半年が、いちばん辛かったです。不安でご飯も食べられず、激やせしました。結果がわかり、先生が今後のスケジュールを伝えてくれたのですが、頭が真っ白で、その日はどうやって家に帰ったかも覚えていません。
もっとも不安だったのが子どものこと。まだ小さいので、お母さんが早くにいなくなったらかわいそう、その不安が大きかったですね。
でも、手術が終わって半年くらい経った頃、なぜ自分がこの病気になったのか考えたんです。それまでネットの情報はいっさい見ませんでしたが、ようやく見る余裕が出てくると、患者会について調べたり、スモールミーティングに出たり。キラキラ輝いている先輩方に会うことができました。
今は、自分の経験は無駄にせず、誰かの支えになろうと思っています。
これから「Pink Ring」が伝えたいこと
検査が大切だとわかっていても、忙しいし、お金もかかるし、自分は大丈夫だと思ってしまう。それは仕方のないことでありながら、やはり避けてはいけないこと。自分ががん患者になるかもしれないし、家族や友人が告知されるかもしれない。今の時代、がんに関係ない人などいない、と言います。
「Pink Ring」代表 御舩美絵さん :
がんについての正しい知識を知っておくことは大切です。がんは誰にでもなる可能性があり、ある日突然やってくるのです。これから先、自分や大切な人ががんと診断されるかもしれない。
そのとき、正しい知識があれば、むやみに不安になることも少なく、落ち着いて治療選択がしやすくなります。がんを他人ごととして捉えるのではなく、ぜひ自分ごととして向き合って頂きたいです。
乳がんに関心を持つこと、自分の身体に関心を持つことは本当に大事です。40歳以上の方は検診に、39歳以下の若い方は自分の胸を定期的にセルフチェックするなど、しっかりと自分の体に向き合ってほしいです。
そして何かおかしいと感じたら乳腺外科に行くこと。婦人科ではありません。そういう情報も、まだまだ正しく伝わっていないと実感しています。
本年度の受賞作品は、ピンクリボンフェスティバル公式サイト、および宣伝会議発行、月刊『ブレーン』にて、10月1日(予定)に発表されます。
いま元気でも、乳がんに関心を持つこと。そして自分の体としっかり向き合うこと。この先の人生のために、今できることはたくさんあるのです。ぜひ自分ごととしてとらえてみるのはいかがでしょう?
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