「よかれと思ってしていることが、慢性疲労の原因になることがあります。なかなか取れない疲れ・不安・抑うつなどの症状は、肉体的な疲労だけでなく脳が疲れてしまうことで起こるもの。
ただ休息するだけではなく、脳の疲労を回復させる食べ方や眠り方、生活習慣を取り入れる必要があります」
そう話すのは、女性専門の疲労外来ドクターである工藤孝文先生。よく聞く疲労回復の習慣について、工藤先生にジャッジしていただきました。
1. 疲れたときは栄養ドリンクや甘いもので乗り切る
image via shutterstock「栄養ドリンクや甘い物では、一時的な回復しか期待できません。栄養ドリンクや甘い物を摂取すると、含まれるブドウ糖によって血糖値が急に上がるので一瞬は元気になります。
しかし急激な血糖値の上昇により、今度は低血糖になるため、しばらくするとだるさや眠気、強い疲労感が出てきてしまいます。
慢性疲労症状に効くのは、鶏むね肉に含まれるイミダペプチド、レモンなどに含まれるビタミンCとクエン酸です。
疲れやすい人は、一日レモン2個分のクエン酸(2700mg)を摂るとよいでしょう。
レモンを絞るだけで作れるレモン水もおすすめですが、レモンには紫外線を受けるとメラニン色素を発生するソラレンという物質が含まれるため、紫外線が弱くなる午後3時以降に飲むようにしてください」(工藤先生)
正解は、ウソ
2. 疲れた平日の夜は、なるべく外出せずにぼーっとして体力を回復させる
image via shutterstock「よく男性が家でぼーっとテレビや動画を見ていて、話しかけても返事がないことがありませんか? あれは、男性の脳がものすごくリラックスしている状態。
脳内では左脳にある、言葉を操る領域をオフにして、右脳をフル回転させ、空間認知の領域を活性化し、知識の再構築を図っているのです。マインドフルネスの状態にも近いといえますね。
しかし女性の脳は、男性の脳とは少し違う傾向があります。人にもよりますが、ショッピングやおしゃべりなど、休息よりも発散が必要な場合が多いと思います。
とくに会話については、女性は話すことでストレスを発散すると昔からよく言いますが、これは真実。
女性の脳は人の話を聞いて共感し、それを生きる知恵として頭にインプットします。そして自分の話に相手が共感してくれると快感を覚えます。
だから会話をして共感し合うことは、女性にとって必要なやり取りであり、疲れやストレスの軽減にもつながるのです。
ただし男性にとっては、おしゃべりがストレスになることもあるので要注意。女性の話し相手がいない場合は、歌や音読で自分の気持ちを吐き出すという方法もいいでしょう」(工藤先生)
正解は、男性の場合はホント、女性の場合はウソ
3. 疲れたら熱いお風呂に入る
image via shutterstock「疲労回復という観点からいうと、熱いお風呂は自律神経の活性化にはなりますが、安眠できなくなる場合があります。
お湯の温度はぬるめで10分程度がベスト。入浴のタイミングは寝る1時間前が理想的です。
人は眠りにつく際、深部体温を徐々に下げて代謝を抑え、眠る準備を進めます。このとき、手足の皮膚の血管を開いて体の熱を放出させています。
眠くなると手足の先が熱くなるのはこのためです。そして深部体温の下がり幅が大きいほど、脳の温度も下がって眠りに入りやすくなります。
入浴により深部体温をいったん上げておくと、下がり幅も大きくなり入眠がスムーズになるのです。
お湯の温度は、刺激が少ない「ぬるめ」に感じる程度が目安。おおよそ体温に近い38度前後がおすすめです。
お湯の温度が熱すぎると交感神経が活発になって、脳が覚醒してしまう可能性があります。
また美容のために長風呂をするという人も多いと思いますが、これも体温が上がりすぎるおそれがあるのでおすすめしません」(工藤先生)
正解は、ウソ
4. 夏バテ予防のためにも、寝室のエアコンはつけっぱなしにする
image via shutterstock「エアコンをつけっぱなしにすることを、健康に悪いと感じる人が多いようですが、真実はその逆。
エアコンをつけずに夏の極端な暑さや冬の寒さのなかで寝ると体に負担がかかり、自律神経も休まらないため十分な疲労回復ができなくなります。
エアコンはつけっぱなしにして、朝まで快適な温度を保つようにしましょう。
居間と寝室で室温差があると、自律神経に負担がかかるため、すべての部屋を同じ室温にしておくのが理想的。
夏は25度前後、冬は20度前後にキープするとよいでしょう。部屋の湿度を50%台に一定にしておくこともポイントです」(工藤先生)
正解は、ホント
5. お酒を飲むなら、ビールより赤ワインが健康的
image via shutterstock「健康にいいアルコールといえば赤ワインでしょ? と思いますよね。確かに赤ワインには、抗酸化作用を持つポリフェノールの一種、レスベラトロールが含まれており、動脈硬化やがんを予防するとされてきました。
ところが最近の米国の研究で、レスベラトロールは体内に吸収されにくく、飲んでもあまり効果がない可能性があると分かったのです。
また、赤ワインに含まれるポリフェノールのアントシアニンやタンニンには下痢止め効果がありますが、逆に便秘を悪化させる恐れがあります。
女性の体にメリットをもたらすのは、赤ワインよりもビールです。
ビールの原材料のひとつであるホップは、疲労回復や食欲増進、鎮静作用のほか、ホルモンバランスを整えるエストロゲンの作用があります。
更年期障害や PMS、 生理痛の抑制、抜け毛・白髪予防など、女性特有の悩みにも効果的。ただし摂取目安は1日350mL程なので、飲み過ぎには注意しましょう」(工藤先生)
正解は、ウソ
疲労外来ドクター・工藤孝文先生に聞く、疲労回復術のウソ・ホント。後編では「疲れない体づくり」のためにできることをご紹介します。
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工藤 孝文(くどう たかふみ)先生
福岡大学医学部卒業後、アイルランド、オーストラリアへ留学。現在は、福岡 県みやま市の工藤内科で地域医療を行っている。
ダイエット外来・糖尿病内科・漢方治療を専門とし、NHK「ガッテン!」、「あさイチ」、日本テレビ「世界一受けたい授業」、フジテレビ「ホンマでっか!? TV」漢方治療評論家・肥満治療評論家として、メディア出演 多数。
日本内科学会、日本東洋医学会、日本女性医学学会、日本抗加齢医学学会、日本糖尿病学会、日本高血圧学会、日本甲状腺学会、小児慢性疾病指定医。
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