エリテマトーデスは自己免疫疾患のひとつです。
本来なら自分自身を守ってくれる免疫システムが、健康な細胞と組織を攻撃するようになります。米国ループス財団によると、「エリテマトーデスの約70%は、全身性エリテマトーデスに分類され、心臓、肺、肝臓、脳といった主要な臓器や組織に症状を現します」とのこと。
また、エリテマトーデスの主な症状は、関節のこわばりと腫れ、顔面の発疹(最も特徴的なのは、鼻から両頬にかけて現れる蝶の形の発疹「蝶形紅斑」)、口内炎など。エリテマトーデスになった人の65%は、慢性疼痛(慢性痛)がつらいと言います。
前回の記事では、エリテマトーデスの症状と治療法を紹介しました。今回は、どんな人がエリテマトーデスになりやすいのか、要因をまとめます。
1. 遺伝
image via shutterstockエリテマトーデスは、同じ家族でかたまって病気を持つ傾向があります。きょうだいがエリテマトーデスにかかっている場合の発症リスクは20倍です。米国国立医学図書館によると、少数の遺伝子変異がエリテマトーデスの発症に関連しており、これらのほとんどは免疫に関係したものです。
「TREX1という特定の遺伝子の変異などが病気の発症につながることが分かっていますが、そのように遺伝子が判明していることはまれで、必ずしも特定の遺伝子の変異が見つかるわけではありません。特定の環境に置かれていたり、感染症にかかったりした人の中で、病気につながる遺伝子を持っていたり、逆に病気から身を守るための遺伝子がなかったりした場合に、エリテマトーデスを発症する場合があります」とジョンズ・ホプキンス医科大学の内科准教授で、ホプキンスループスセンターの副所長で、リウマチ専門医を務めるジョージ・ストイヤン医師は説明します。
2. 人種
image via shutterstockエリテマトーデスにかかりやすい民族の人がいることが知られています。アフリカ系アメリカ人、ヒスパニック系、ラテン系、アジア系、アメリカ先住民、太平洋諸島の女性の発症率が2~3倍高いのです。2014年の研究によると、黒人女性の537人に1人はエリテマトーデスを発症していました。
いくつかの研究によると、有色人種の女性は、エリテマトーデスが進行して、合併症も重くなりやすく、死亡率も高くなることが多いことがわかっています。それは、遺伝子により発症リスクが高まっている可能性があります。ただ、健康保険や医療機関が利用できるかどうか、言葉でのコミュニケーションで壁が存在しないか、所得水準の違いがないかといった別の要因も関わっていると推定する研究者もいます。
3. ホルモン
image via shutterstock「エリテマトーデスにかかりやすいのは、男性より女性です」とストイヤン医師は説明します。エリテマトーデスと診断された患者さんの10人中9人は、15歳から44歳の女性なのです。
発症率が男性と女性で違う理由は、女性に多いエストロゲンやプロラクチンのようなホルモンのせいだと考えられています。こうしたホルモンが、炎症が起こるプロセスのバランスに影響を与え(1型インターフェロンとして知られている)、エリテマトーデスの発症につながるのです。
「経口避妊薬やホルモン補充療法のようにエストロゲンを含む薬物療法を受けている女性では、発症リスクが高くなります。エストロゲンを使うと、インターロイキン1の放出が起こるのです。これがエリテマトーデスの症状を引き起こす炎症反応につながります」とストイヤン医師は言います。
4. 紫外線
image via shutterstock「体の細胞は紫外線によりダメージを受けるのですが、エリテマトーデスにかかっているとなおさら紫外線に敏感になるのです。紫外線は病気を引き起こす直接の原因にはなりませんが、皮膚細胞を変化させます。すると免疫は誤って体にとって有害な変化と見なしてしまい、そのために症状が悪化してしまうのです」
「紫外線は特定の遺伝子の突然変異も引き起こすことがあり、その場合も免疫によって異常と認識されて、攻撃対象にされてしまいます。これはエリテマトーデスによる発疹を引き起こすことになるのです。紫外線が皮膚の細胞内のケラチンを刺激して、炎症を引き起こす炎症メディエーターを作ることもあります」とストイヤン医師は解説します。
5. 有害物質
image via shutterstock「洗剤に含まれていることのあるシリカの粒子、またはたばこの煙が、エリテマトーデスのリスクを高めることが知られています。ただし、その理由はよくわかっていません」と、ストイヤン医師は言います。
そうした有害物質との関連は強く、これまでに研究が進められてきました。鉱業やガラス製造のように、仕事環境でシリカにさらされている人は、2~5倍の高い発症リスクになるのです。このほか水銀、農薬、喫煙も、エリテマトーデスの発症と関連しています。
6. 感染症
image via shutterstockエリテマトーデスの炎症につながる要因としては、ヒトパルボウイルス、単純ヘルペスウイルス、A型肝炎などのさまざまなウイルス感染もあります。特に、伝染性単核球症を引き起こすエプスタインバールウイルス感染は多くの研究があります。ウイルス感染後にできる抗体によって、異常な免疫反応が引き起こされるのだと考えられています。
「ただし、エプスタインバールウイルスに感染したからといって、必ずしもエリテマトーデスを発症するわけではありません」とストイヤン医師。
「20歳以上の約90%のアメリカ人がエプスタインバールウイルスに感染しているので、どんな感染だと病気につながるのかはわかりません。みんな感染しているわけですから。ただ、単に抗体を持っているから将来エリテマトーデスを発症するとは言えないというのは確かでしょう」と、ストイヤン医師は話します。
7. 大気の変化
image via shutterstockストイヤン医師が小規模に行った調査によると、空気汚染、風、気圧、湿度、気温は、エリテマトーデスの炎症と強い関係があることが確認されたそう。どれかひとつの要素からすべての炎症が起こるということではありません。
例えば、微粒子による空気汚染が肺炎、気温の変化が神経の炎症や発疹、湿度の変化が関節炎といった関係になっているのです。「診察日から10日前の大気の変化で、予測できる可能性があります」とストイヤン医師は説明します。
8. ストレス
image via shutterstock「エリテマトーデスにストレスがどのように影響するのかを調査した研究は知りませんが、エリテマトーデスにかかった人がストレスの影響を受けていると話しているのは確かです」とストイヤン医師。
手術やケガにより体にかかるストレスがエリテマトーデスの症状を引き起こすことがあるのですが、同様に感情的なストレス(家族の死亡や離婚)は症状の引き金になることもあるようなのです。
病気の要因はそれぞれ
Alisa Hrustic/What Causes Lupus? 8 Possible Triggers of the Autoimmune Disease/STELLA MEDIX Ltd.(翻訳)