強力な紫外線から肌を守り、皮膚がんなどを防ぐには、日焼け止めを塗るとよいのは多くの人が知っています。しかし、SPFが高くなればなるほど、健康上問題になる可能性がある、という最近のニュースは気になるところ。
とりわけたびたび警鐘が鳴らされているのが、非営利団体・環境作業部会(EWG)2019日焼け止めガイドで分析された製品の3分の1に含まれ、“幅広く使われている”化学物質のオキシベンゾンです。
環境にも影響が出てきている
image via shutterstock環境作業部会はオキシベンゾンを長年警戒しており、2008年、日焼け止めにおけるオキシベンゾン使用の安全性を調査するよう米国食品医薬品局(FDA)に要請しました。ヒトのホルモンが働く仕組みを破壊する可能性があるというエビデンス(根拠)が次々と示されるようになっているためです。
それに加えて、オキシベンゾンは最終的に海に行きつくわけですが、サンゴに危害を加えたり、死滅させたりしています。そのため、ハワイ州の州知事は2018年7月、オキシベンゾンを含む日焼け止め(およびオクチノキサートと呼ばれる別の化学物質)の販売を禁止する法案に署名しました。
米国食品医薬品局は最近、米国のほとんどの日焼け止め製品の規制要件を更新するための規制を発表しています。その目的は、市販の日焼け止めを最新の科学規格へと見直して、12の有効な日焼け止めの有効成分(オキシベンゾンを含む)の安全データを業界の中で共有できるようにすることです。そのデータは、各成分が塗られた後に身体に吸収されるかどうか、そしてどの程度まで吸収されるかはっきりとさせるものです。
オキシベンゾンはここ最近日焼け止めにおける一番の悪玉と見なされるようになっています。ここでは専門家から、潜在的な健康へのインパクト、この成分をずっと避けるべきなのかについてご説明します。
オキシベンゾンって?
image via shutterstockミシガン州立大学の薬理学と毒物学の助教ジェイミー・アラン博士によると、オキシベンゾンはベンゾフェノン誘導体といわれる種類に含まれる有機化合物です。「これはプラスチック、おもちゃ、またいくつかの被子植物にも含まれます」
オキシベンゾンは紫外線を吸収することで日焼け止めになります。このプロセスで化学反応が起き、紫外線は熱に変換されて肌から放出されるのです。
オキシベンゾンはなぜ潜在的に危険?
image via shutterstockアランさんによるとオキシベンゾンは「ホルモン破壊の可能性がある」そうです。つまり代謝、成長と発達、性機能と生殖、甲状腺機能など、生物学的プロセスを調節する内分泌系に悪影響を及ぼす可能性があるのです。しかし、「臨床的に重大な影響があるかどうかはまだわかっていません」。
なぜでしょうか?「この化学物質が動物のホルモンを破壊するというエビデンスはあります。しかし、いくつかの理由から、その研究が人間に直接あてはまるとは言えないのです」(アランさん)。例を挙げると、ラットの研究で分析されたのは、高用量のオキシベンゾンの影響でした。これは日焼け止めを塗る場合よりもとても大きい用量だったのです。
とはいえ、研究者たちが懸念しているのは、特にオキシベンゾンが皮膚を通して大量に吸収されること。環境作業部会と米国医薬食品局は次の試験結果について注意を喚起しています。
オキシベンゾンはアレルギー性であり、比較的高い確率で皮膚反応を起こす。 オキシベンゾンはヒトの母乳、羊水、尿、そして血液から検出されている。 身体に吸収しやすいため、子どもは大人以上にオキシベンゾンの害に弱い可能性がある。米国医薬食品局は現在、ホルモンレベル、生殖、および発達へのオキシベンゾンの潜在的影響に加え皮膚吸収を測定する研究を求めています。
しかし、人間への潜在的な副作用以上に、オキシベンゾンが悪影響を及ぼしているのは海洋生物。米国海洋大気庁(NOAA)によると、日焼け止めに含まれるオキシベンゾンや他の化学物質はサンゴを損傷し、魚に生殖問題を起こし、ウニに危害を加えて、イルカの組織に蓄積する可能性があるそうです。
日焼け止めの他の化学成分はどうなの?
image via shutterstock日焼け止めの中の化学成分では、オキシベンゾンだけが懸念されているわけではありません。環境作業部会は次についても警鐘を鳴らしています。
アボベンゾン ホモサレート オクチノキサート オクチサレート シノキサート ジオキシベンゾン エンスリゾール メラジマート パディマートO スリソベンゾンアランさんによると、これらの成分はすべて安全性において“グレーゾーン”にあるそうです。
現在のところ、米国医薬食品局と環境作業部会によって安全と見なされているのは、酸化亜鉛と二酸化チタンの2種類のみ。物理的または鉱物的なフィルターとして知られ、紫外線を吸収するのではなくバリアを作り反射する働きをします。
「それら以外は、安全性についての十分なエビデンスがありません。ですからこの2つのいずれかを使っていないなら、少々リスクがあります」(アランさん)。
では、オキシベンゾンの入った日焼け止めは使わないほうがいいの?
image via shutterstock米国皮膚科学会(AAD)は、オキシベンゾンを含む日焼け止めでも使用するべきで、ヒトの健康上安全と考えられると主張しています。
「オキシベンゾンがホルモンを破壊し、がんを引き起こすという報告があるとはいえ、オキシベンゾンを含む日焼け止めの使用が実際の健康に有害であることを証明するデータはありません」と、ニューヨークのマウント・シナイ医療センターの美容・臨床皮膚科の研究ディレクター、委員会認定皮膚科医のジョシュア・ザイチナー医師。
さらには、皮膚がんは米国で最も多いがんであり、それを防ぐためのベストの方法はSPFの高い日焼け止めをたっぷり塗ること。
「紫外線は皮膚がんの最大の原因であり、日焼け止めや日焼け防止の行動でほとんど予防することが可能です。現在の知見に基づけば、オキシベンゾンを含む日焼け止めの使用をやめることはおすすめしません。他の多くの化学ブロッカーより皮膚がんを引き起こす紫外線A波を効果的にブロックするからです」
しかし、アランさんは幼児や子どもに使うのは避けて欲しいそうです。「多くの大人が時々使うのに関しては、おそらく問題ないでしょう」。
結局のところ、ベストは、自分がいつも塗りたいと思う製品でしょう。しかし、ザイチナー医師は、オキシベンゾンや他の疑わしい化学物質を含む日焼け止めが心配であれば、酸化亜鉛や二酸化チタンのような成分のミネラル系日焼け止めをおすすめしています。これらは安全で、効果も変わりはなく、海に害を及ぼさないことがわかっています。
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