VOL.6は、“子宮頸がん”の診断と治療の専門家で、子宮頸がんの前がん状態の日帰り手術も行う出井知子先生(ともこレディースクリニック表参道 院長)を取材しました。
VOL.6 婦人科/ともこレディースクリニック表参道 出井知子先生
特に大切にしている診療(得意分野)は?
子宮頸がんの前がん状態である、「子宮頸部異形成」の正確な診断と治療を大切にしています。
子宮頸がん検診の細胞診は、細いブラシで子宮の入り口である子宮頸部から細胞を採取して調べます。この細胞診で、異常が指摘されて精密検査が必要となったら、コルポスコピーという腟拡大鏡や組織診で検査します。
コルポスコピーによる検査とは、コルポスコピーという腟や子宮頸部の表面を拡大する顕微鏡を使って、細かい部分を観察することです。コルポスコピーは、約6~40倍に拡大することが可能で、肉眼では見られない病変を発見することができます。
通常、子宮頸がんは、コルポスコピーでの観察と、異常が疑われる部位の組織診(病理検査)の結果を、あわせて診断します。
この結果で、「子宮頸部異形成」という診断がつくと、前がん状態(前がん病変)ということになります。
「子宮頸部異形成」には、軽度異形成、中等度異形成、高度異形成があります。 軽度異形成のほとんどは、自然治癒して正常細胞に戻ります。しかし、中等度異形成の一部や高度異形成などは、がんに進行しやすい異形成です。これらが、がんになる前に治療することが大切です。
がんになる前の治療として、私のクリニックではLEEP(リープ)という手術方法で治療できる日帰り手術を行っています。
LEEP(リープ)とは、Loop Electrosurgical Excision Procedureを略した手術方法のことで、高周波によって病巣を切除する装置です。この手術方法の特徴は、手術による出血がほとんどないことです。また、簡単な麻酔で痛みを感じることなく、安全に切除できます。外来で行う日帰り手術ができます。
子宮頸がんの前がん病変の手術のほか、子宮頸管ポリープ(良性)などもLEEP(リープ)手術によって切除することができます。
どんな悩みや不安をもつ女性たちに受診してほしいと思いますか?
みなさんがいちばん怖いのは、漠然とした根拠のない不安だと思います。
「これって病気?」と不安に思ったら、特にひどい症状がなくても相談してほしいと思っています。病気でなければそれで安心ですし、病気なら早期発見、早期治療ができます。
診察をするにあたって、大事にしていることは?
患者さんには、いつも優しい気持ちで接しています。
患者さんにとって病院は、ただでさえ怖い場所。どんな理由があっても、怒ったり見放したりは絶対にしません。
産婦人科医になろうと思ったきっかけや動機は?
研修医時代、産婦人科の実習で、初めて診療の内容に触れたときに、「私のやるべき科はこれだ!」とビビビッと来ました。
お産だけでなく、婦人科ではがんの診療やホルモン治療など、すべての女性特有の病気を診ることが私に合っていると感じて、決めました。
先生ご自身が日常生活で健康のために、気をつけていることは?
疲れたら、よく寝ます。それから、1週間に1回は指圧をしてもらっています。
たまに、趣味の剣道をすると、ストレスも発散でき、その後のお酒がおいしい!
診療内容、料金目安、薬の処方方法は?
産婦人科一般。婦人科がん検診。子宮や卵巣の病気の診断やホルモン療法。不正出血、おりものの異常や性病の診断と治療。避妊、不妊相談、治療。中絶手術(自費)、流産手術(保険)、子宮頸部異形成の日帰り手術(保険)など。子宮頸部異形成の手術件数は、2011年からの8年間で約300例。
<自費の場合の診療費目安>
検診と妊婦健診は自費。妊婦健診は都の助成金補助により、3,240円(税込)くらいから。
子宮がん検診は、子宮頸部細胞診と超音波検査を含めて14,040円(税込)。
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診療時間:9:30〜16:30
休診日:火曜・金曜午前・第5土曜・日曜・祝日
住所:東京都渋谷区神宮前4-11-6 B2階(表参道ヒルズ隣)
電話:03-5771-3781
出井知子(いでい ともこ)先生
ともこレディースクリニック表参道 院長。日本産科婦人科学会専門医。医学博士。母体保護法指定医。卵巣がんの遺伝子解析の論文で医学博士号取得。大学病院にておもに婦人科がん治療の臨床と研究に従事。分娩、ホルモン療法、子宮頸部異形成などの臨床経験が豊富。日本産科婦人科学会、日本産婦人科医会、日本婦人科腫瘍学会、 日本癌治療学会、日本産科婦人科内視鏡学会、日本臨床細胞学会、日本人類遺伝学会、日本周産期・新生児医学、米国癌治療学会(ASCO)。
インタビュー・執筆/増田美加(女性医療ジャーナリスト)