実際、安定した対人関係を築くことが苦手な「境界性パーソナリティー障害」の患者さんの多くが、この白黒思考の傾向を有することが知られています。自分は価値があるか価値がないか。この人はいい人か悪い人か。そういった「二面性」でしか、ものごとを見られなくなってしまうのです。
でも本当は、人間も世界中の存在もすべてグレーゾーンでできています。すべての人やものごとが、よい・悪いの両面を持っているからです。それに気づくことが大事で、自分の存在もよい・悪いの両極で判断しないことです。
自然界には2つとして同じものはありません。正解というものはそもそも存在しないのです。植物や土に触れたり、自然の多い場所で過ごしたりするとどうして癒されるのか。それはまさにグレーゾーンの中で生きていることに気づき、正解を求めてしまう執着心から解放されるからです。中庸な思考が磨かれていきますよ。
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川野泰周(かわの たいしゅう)先生
臨済宗建長寺派林香寺住職/RESM新横浜睡眠・呼吸メディカルケアクリニック副院長。2005年慶応義塾大学医学部医学科卒業。臨床研修修了後、慶應義塾大学病院精神神経科、国立病院機構久里浜医療センターなどで精神科医として診療に従事。2011年より大本山建長寺専門道場にて3年半にわたる禅修行を行った。現在は寺務の傍ら精神科診療にあたり、マインドフルネスや禅の瞑想を積極的に取り入れた治療を行う。著書に『ずぼら瞑想』(幻冬舎)、『会社では教えてもらえない 集中力がある人のストレス管理のキホン』(すばる舎)などがある。精神保健指定医・日本精神神経学会認定専門医・医師会認定産業医。
グレーくらいが、ちょうどいい
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取材・文/島田ゆかり、image via shutterstock