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私の慢性的な頭痛が始まったのは小学生の頃。中学生・高校生の頃が、最も頻繁に頭痛薬を飲んでいたと記憶しています。30代になった今でも、痛みのレベルはさておき、頭痛がまったくない日が一ヶ月続くことはまずありません。

「頭痛外来」という専門外来があることを知ったのは、友人が、群発頭痛で病院を転々としていたのを聞いたとき。あまり重症ではないにしても、20年以上続く頭痛持ちの私も、もしかしたら頭痛外来に行ってみたほうがいいのかも。そう思っていた矢先、MYLOHASでの「頭痛」特集が決定。体験取材に行くことになりました。

細かい頭痛問診票で気づきが

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うかがったのは、著書『頭痛女子バイブル』も手がけた頭痛のエキスパート、五十嵐久佳先生が頭痛外来を受け持つ東京クリニック。受付を終えると、まず内科問診票や頭痛問診票などの記入と血圧計測を終えてから、五十嵐先生が待つ診察室へ入ります。

頭痛女子バイブル

1,404円

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「頭痛外来とは、頭痛を専門に診るところ。頭痛のために仕事を休む、家事ができないなど日常生活に支障をきたしている方が受診します。私の外来は完全予約制でお願いしているので、圧倒的に長年頭痛でつらい思いをしていらっしゃる方が多いですね」(五十嵐先生)

事前に記入した頭痛問診票には、頭痛の頻度や痛みの種類、頭痛の最中に頭痛以外の症状を感じるか、頭痛の引き金と思われる原因など、自分でもここまで細かく考えたことはなかったかも、と思うような項目と選択肢がズラリ。

実際の頭痛問診票

ほかにも、頭痛外来ではどんなことを聞かれるのでしょうか? 

「頭痛問診票を書かずに診察室に入ってらっしゃると、例えば『いつ頃から頭痛が始まりましたか?』という質問でも、『えーっとあれは確か……』など、考え込んでしまう方も多いんですね。ほかの疾患の有無や、睡眠時間など日常生活の状態、女性の場合は月経など、多くのことを確認させていただき、大切なポイントを落とさずに、効率よく聞きとるために、この頭痛問診票が必要なんです。

そのほか、診察前に書いていただくのは、HIT-6という『頭痛が日常生活にどのくらい支障をきたしているかを数値化して表す』もの。SDSという、抑うつ状態があるかを確認する質問票なども併せて記入してもらいます。もちろんこれだけでは足りないので、対面でいろいろとうかがっていきます」(五十嵐先生)

私の頭痛の正体は? 勘違いしてました

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さて、話は私の頭痛へ。問診票を見てもらってお話したあと、聴診器を当てたり、まぶたの裏側をチェックして貧血具合を見たり、先生の指を目で追ったり。

頭痛のときの実感としては、はじめは首の後ろが重だるい感じ。その重だるさが、徐々に痛みになって頭頂部に向かっていき、目の奥までズキズキと痛くなるパターン。

普段からPC作業が多かったり強い肩こりの実感があったりするので、私は今まで自分の頭痛を「緊張型頭痛」だと思いこんでいました。が、なんと先生によると、私の頭痛は「片頭痛」だと言うのです。

とはいえ、私の頭痛はたいてい、片側だけでなく両側痛いのですが……。

「片側が痛むから“片頭痛”と思っていらっしゃる方も多いのですが、両側が痛むこともあるんですよ。片頭痛の時に片側だけが痛むひとは6割で、残り4割の方は両側が痛みます。片頭痛はひどくなると吐き気がしたり、実際に吐いたりする人もいますし、光や音に敏感になり、動くと痛みが増すのが特徴です。

また、片頭痛は、頭痛の前に空腹感、眠気、イライラ、手足がむくんだり、首が重だるくなったりと、さまざまな予兆を感じる方がいます。これらの予兆は月経前の症状に似ていると思いませんか? これらは自律神経やホルモン、食欲、体内時計などを司る視床下部に関連する症状と考えられ、そこから片頭痛がスタートするのではないかと言われています。また、片頭痛は空腹、寝過ぎ・寝不足、人混み、天候の変化、映画館などが引き金となります。

それと、片頭痛を持つ女性の約半数は、自分の頭痛が月経に関連して起こるという自覚があります。月経が始まる前や排卵日のあたりで、エストロゲンというホルモンの血中濃度が低下します。それが片頭痛の強力な誘発因子になるのではないかと考えられています。この時期に忙しさや寝不足、アルコールなどの他の誘発因子がプラスされると、さらに頭痛が起こりやすくなります。どのようなタイミングで頭痛が起こるのかが自分でわかるようになると、対処がしやすくなりますね」(五十嵐先生)

片頭痛の対処法は?

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さて、頭痛の種類やパターンが見えてきたところで、次は対処方を教えていただきます。

「私の外来を受診なさる患者さんは、市販薬が効かないという方も多いんですね。そういう方には、トリプタンという片頭痛の治療薬を処方します。ただ、週2日以上頭痛があるような方では、頭痛のたびに鎮痛薬やトリプタンを飲んでいると薬物乱用頭痛(薬を飲みすぎることによって起こる頭痛)が起こってしまうことがあります。頭痛日数の多い方には、予防薬を数か月間毎日飲んでいただいて、頭痛を減らしていく治療を行います」(五十嵐先生)

とはいえ、私の頭痛は月に3~4回ほど。ツボ押しやストレッチ、アロマテラピーなども取り入れ、市販の頭痛薬を飲むのは月に1~2回で、効き具合にも満足しています。

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「それでは、トリプタンや予防薬は必要ないですね。ちなみに月に数回程度しか薬を飲まないのなら、痛みを我慢してから飲むより、頭痛を感じたら早く飲んだ方がきちんと効きますよ。

あとは日常生活の注意ですね。こちらの頭痛ダイアリーを書いてください。どのようなときに頭痛が起こったのか、いつ頭痛薬を飲んだか、たとえばアルコールを摂取したか、女性の場合は月経周期などを記録します。記録することによって、『月経の数日前に必ず頭痛が起こっている』『寝すぎたときに頭痛が多いのかしら』など、誘発因子がわかってきます。

頭痛ダイアリーは私たち医師と患者さんのコミュニケーションツールでもありますし、ご自身に自分の頭痛のことをよく知っていただくためのツールでもあります。それで、肩が凝っているならストレッチの仕方をお教えする、寝すぎによって頭が痛くなるのなら休日でも普段と同じ時間に起きてくださいと生活上の指導をするなどで、頭痛の誘発因子を減らしていくのです」(五十嵐先生)

頭痛問診票といい、頭痛ダイアリーといい、まずは自分の頭痛と向き合い、分析することが大事なのですね。今までは「緊張型頭痛」だと思っていたので頭痛が起きたら温めていましたが、「片頭痛」は冷やしたほうがいいとのことなので、対応策も変えなければと思いました。

ちなみに今回私がお支払いしたのは、3割負担の保険適用で1000円ほど(※)。頭痛外来の大体の予算は、一般の内科と同じくらいとのこと。何度も頭痛薬を購入するような金額を考えたら、一度きちんと頭痛外来を訪れてみてはいかがでしょうか?

※東京クリニックでは、完全予約制にて診療を行なっています。初診時のみ、診察料のほかに「予約料」として別途3,000円がかかります。

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五十嵐久佳(いがらし ひさか)先生
日本頭痛学会認定指導医・専門医。1979年 北里大学医学部卒。1989年 英国The City of London Migraine Clinicにて研修、1990年 北里大学医学部内科(神経内科)講師、1994年 宮内庁病院 内科医長、2000年 富士通南多摩工場健康推進センター長、2005年 神奈川歯科大学附属横浜研修センター 内科学講座 助教授、2006年 教授。2012年10月より富士通クリニック勤務。頭痛外来を担当、東京クリニックでも頭痛外来を担当している。2014年4月より北里大学医学部客員教授。 

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