頭痛は、原因も症状も違えば対処法もそれぞれ。自分の頭痛のタイプを見極めて、症状を和らげる対処法を知っておくことが大切です。しかし、頭痛が鎮まるのを待たずに一刻も早く病院へ行ったほうがいい“危険な頭痛”もあります。
この“危険な頭痛”の見極め方について、埼玉国際頭痛センターの坂井文彦先生にうかがいました。
他の病気が原因で起こる“二次性頭痛”
image via shutterstock一般的に、緊張型頭痛、片頭痛、群発頭痛に代表される慢性頭痛は、頭痛そのものが病気の「一次性頭痛」に分類されます。それに対し、他の病気や明らかな原因の“症状”として起こる頭痛が「二次性頭痛」です。
「風邪を引いて頭痛がすることもありますし、虫歯による炎症や噛み合わせが悪いせいで頭が痛むことがあります。このように、頭痛の原因が他にあるものが“二次性頭痛”です。目や鼻の病気、ヘルニアや頚椎症による頭痛などのほか、頭痛を緩和しようと鎮痛薬に頼りすぎることが原因となる“薬物乱用性頭痛”も二次性頭痛に分けられます」(坂井先生)
他にも、高血圧、呼吸不全や呼吸障害、心気症、うつ病などと、二次性頭痛の原因は多岐にわたるのが特徴です。原因となる病気や症状が治れば、頭痛は軽減もしくは消失します。
くも膜下出血、脳出血……。生命に関わる頭痛を疑うポイントは
image via shutterstock二次性頭痛のなかで、とくに注意したいのが“生命に関わるもの”があるということ。脳動脈瘤が破裂して起こる「くも膜下出血」などがその代表例です。
「くも膜下出血の場合、動脈瘤が少しだけ出血すると急に激しい頭痛が起こり、1~2時間ほど脈を打つような痛みが続きます。そのまま放置し、動脈瘤が破裂して大出血を起こせば、それこそ命に関わることになります」(坂井先生)
くも膜下出血は、まず動脈瘤が出血したときに頭に雷に打たれたような強い痛みが走ります。しかし、少しすると痛みがひと段落することもあるので「片頭痛かな?」などと勘違いして放置してしまうことも少なくありません。
image via shutterstock他にも髄膜炎、脳出血、脳動脈解離、脳血管攣縮(のうけっかんれんしゅく)などの症状として、突然の頭痛に見舞われることがあります。また、脳腫瘍は頭痛の前に「歩くときにふらつく、ろれつが回らない、ものがダブって見える、手足に力が入らない」といった脳腫瘍の症状があらわれます。
「突然の激しい痛みに見舞われる、痛みが数日から数週間でどんどんひどくなる、頭痛の前後に吐き気や嘔吐をもよおす、まっすぐ歩けない、ろれつがまわらない、高熱、意識障害といった症状が伴う場合は要注意。ためらわずに脳神経外科や神経内科を受診してください」(坂井先生)
危険な頭痛を疑うポイント
突然の頭痛 経験したことのない頭痛 いつもと様子の異なる頭痛 悪化傾向の頭痛 50歳以降に初発の頭痛 麻痺や視力・視野異常 意識の変容や痙攣など神経症候を伴う頭痛 発熱や発疹 項部硬直を伴う頭痛 など「いつもと違う頭痛を見分けるためには、日ごろから自分の頭痛に耳を傾けておくことが大事です。30代40代の女性は脳の疾患はまだ少ないかもしれませんが、ご家族や周囲の人が頭痛を訴えて、まっすぐ歩けない、ろれつがまわらないなどの症状があれば、すぐに病院へ行くことをすすめてください。その知識と行動力で救える命があるはずです」(坂井先生)
坂井 文彦先生
埼玉国際頭痛センター(埼玉精神神経センター内)センター長。1969年、慶應義塾大学医学部卒業後、同内科学教室に入局し、神経内科および脳循環・代謝の研究を始める。北里大学医学部神経内科学教授、埼玉医科大学客員教授などを経て、現職。日本頭痛学会、国際頭痛学会の理事長など重職を歴任した頭痛治療の世界的名医。『「片頭痛」からの卒業』(講談社現代新書)他、著書・監修書多数。
頭痛とたたかうあなたへ
思いあたれば、すぐに受診を。鎮痛薬も歯が立たない「群発頭痛」