冷たいものを食べたりお酒を飲みすぎたりして起こる急性の頭痛とは違い、日常生活に支障をきたすほどつらい慢性的な頭痛に悩まされている日本人は4人にひとりとも言われています。
頭痛は治療でよくなるのに、多くの人がそもそも「自分がいわゆる“頭痛もち”だ」ということに気づいていないのが現実。自分の症状をあらためて振り返り、頭痛の理由を探る機会を持つことも大切です。
そこで、3回に分けて三大慢性頭痛とされる「緊張型頭痛」「片頭痛」「群発頭痛」の特徴をひとつずつご紹介します。「気づきを差し上げられるなら」とガイド役を務めてくださったのは、頭痛研究・臨床の権威である坂井文彦先生です。
肉体的・精神的ストレスによる筋肉・神経の緊張が引き金に
image via shutterstockまずご紹介するのは「緊張型頭痛」。慢性頭痛で悩む人の約60%がこの頭痛に分類されるのに、寝込むほどの痛みではないため、意外と軽視されてしまいがちです。
Q.「緊張型頭痛」に悩まされるのはどんな人?
小児から中高年まで、幅広い年齢層に起こる頭痛です。我々が行った疫学調査では、三大慢性頭痛ではもっとも多い約2300万人もの人が「緊張型頭痛」でした。
Q.「緊張型頭痛」が起こる原因は?
image via shutterstock頭を支える頸部(首)や肩の筋肉が緊張することで起こります。不自然な姿勢やうつむいた姿勢、長時間のパソコン作業などは要注意。
また、身体的ストレスだけでなく、不安や憂鬱、人間関係のトラブルといった精神的なストレスでも痛みが出るのがこの頭痛の特徴です。
Q.「緊張型頭痛」の症状は?
しめつけられるような頭部の痛み、後頭部や頸部の重苦しさがほぼ毎日続きます。頭を支える筋肉の緊張の度合いが異なってバランスを失うため、脳は自分がどう支えられているのか分からず、雲の上を歩くようなふわふわとしためまいが起こることもあります。頭痛の原因である肩や首のこりのほか、目の疲れも感じやすいです。
Q.「緊張型頭痛」が起きたときの対処法は?
image via shutterstock軽い運動や入浴、マッサージは筋肉の緊張もほぐしますし、精神的なリラックスになるので効果的。同じ姿勢を長時間とらないように休憩をしたり、こめかみや目もとをやさしく押して血行を促したりするのもよいでしょう。
痛みを感じたら、「上着を脱ぐ」「リュックを背負う」をイメージして肩を前から後ろ、後ろから前へ回すのもおすすめです。注意点は、首をぐるぐる回したり首を倒して筋を伸ばしたりしないこと。これはすべての頭痛で言えることです。
万が一、運動や入浴で頭痛の症状が悪化するのであれば、緊張型頭痛ではなく「片頭痛」である可能性が高いです。その点もよく見極めてください。
Q. 「緊張型頭痛」の治療は?
image via shutterstock痛みを感じたら早めに鎮痛薬を飲んで構いません。ただし、緊張型頭痛は肉体的・精神的ストレスが緩和されなければ症状が長引くので、鎮痛薬を飲み続けないように気をつけてください。
緊張型頭痛は、痛みそのものがストレスとなってさらに痛みが増していくこともあるので、早めに受診してください。病院では頭痛の発生を予防する薬も処方できます。また、重度の場合は筋弛緩薬などを出すことも。精神的ストレスの軽減のために抗不安薬などを用いることもあります。
Q.「緊張型頭痛」を防ぐためにすべきことは?
image via shutterstock長時間同じ姿勢を取らない、自分にあった枕を選ぶなど、筋肉を緊張させる原因を見直しましょう。また、精神的なリラックスも心がけてください。
次回は30~40代の女性に多い「片頭痛」について解説します。
坂井文彦先生
埼玉国際頭痛センター(埼玉精神神経センター内)センター長。1969年、慶應義塾大学医学部卒業後、同内科学教室に入局し、神経内科および脳循環・代謝の研究を始める。北里大学医学部神経内科学教授、埼玉医科大学客員教授などを経て、現職。日本頭痛学会、国際頭痛学会の理事長など重職を歴任した頭痛治療の世界的名医。『「片頭痛」からの卒業』(講談社現代新書)他、著書・監修書多数。
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