ある日突然、健康診断や人間ドックで、気になる結果が出たとしたら……。

私たちはまずどんな風に行動し、周りの人々や自身と向き合えばよいのでしょうか。

膵臓がんの、1年後の生存率は1割以下

『書かずに死ねるか〜難治がんの記者がそれでも伝えたいこと』 の著者である野上祐さんは、朝日新聞の記者でした。仙台、沼津などの地方支局や本社報道センター、政治部などにおける勤務を歴任。

福島総局でデスクとして働いていた2016年に、膵臓(すいぞう)がんの疑いを指摘されます。翌月には手術を行い、闘病生活を送りながら執筆を続けていましたが、2018年末に残念ながらこの世を去りました。

腫瘍マーカーの値が高いという人間ドックの結果から判明した、膵臓がん。切除できなければ1年後の生存率は10%以下といわれている、がんの中でもとりわけ難治の病です。

がんかもしれない、と言われたら……

本著には、がんかもしれないと分かったら、やっておくべき今日からできる3つのことが挙げられています。

本気でがんを早く見つけたいか、それは誰(何)のためか、考える。検査に万全を期しても早期発見できるとは限らないことも知っておく。 がんかもしれない、と言われたら、誰にどんな言い方で伝えるか。 安心感ほしさに楽観せず、最悪の展開も考える。検査の予約などは早めに。「空白」をつくらない。 パートナーとの関係をよりよくするために何ができるか。これを読んだあと、実際にやってみる。

『書かずに死ねるか』18ページより引用

それらは主に周囲の人との関わりについてですが、著者はまず、配偶者に対してどう伝えるかについて、考えを巡らせています。

その場限りの安心感を与えるのではなく、正しく伝えることに徹する。そして、不安は余計なことを考える余地があるときに生まれるものだととらえて、間を空けずに精密検査を受ける予約を入れる。

健康に関する心配事は、つい後ろ倒しにしがちですが、空白を作らずに早く手を打ち、周囲と正しく情報を共有することが大事なようです。

がんの苦しみから救ってくれたのは……

手術や治療を重ねるうちに、やがて3つの苦難が著者の身に起こり始めます。

まず、本が読めなくなる。次に息苦しさが出るようになり、脚がむずむずし始める……。ことに、読書については、何を読んでも脳みそに霧がかかったようになってしまったといいます。その苦しみを、著者はこのように記しています。

なんだ本ぐらい、と言うなかれ。これではいざというときに治療や検査について情報をかみくだき、判断することができない。並行して体力も衰える。(中略)雪だるまのようにふくれ上がっていく不安を、配偶者にこぼした。院内の廊下を二人でぐるぐる回る。出口のない先行きを暗示するようだった。

『書かずに死ねるか』32ページより引用

とくに、記者という仕事に就く著者にとって、本を読めない苦しみは計り知れないもの。しかし、かつての習慣や関心事を大事にすることで、その状況は打開されていったことが本書の中に綴られています。

具体的には、「薄手の週刊誌の長くない記事を読んでは、活字を読む感覚を手放さないように心がけ」て、調子がよいときには厚めの雑誌に挑戦し、まだ行けることに自信を持つようにしたのだそうです。

また、関心ある物事についての読書や、書店の本棚から本を抜き取り、レジに持っていって買うという、子どもの頃から親しんでいる一連の動作をすることで、少しずつ頭の霞が晴れていったといいます。

その後、病が深くなる中で身体的な苦悩がその身にいくつも訪れますが、書くことを休もうとは思わなかった著者。

難治といわれる病への向き合い方が詳細に綴られた本著は、私たちに生きる姿勢を教えてくれているかのようです。

書かずに死ねるか 難治がんの記者がそれでも伝えたいこと

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