臨床心理士の西澤寿樹先生に聞く、「カップルカウンセリング」の基礎知識。前編に続き、後編ではセックスレスに悩む女性から寄せられた5つの質問について、西澤先生にアドバイスいただきます。5つ目のお悩みは、「性欲がなくなってしまったのではないかと不安になる」というもの。

【お悩み】
出産後、本当にセックスをする気が起きず、性欲がなくなってしまったのではないかと不安になります。どうしたらいいのでしようか?

「産後どれくらいたっているかはお聞きしたいところですが、授乳中はしたくないとか、そういった体の問題もあるかもしれません。生理的な問題なら、それは気長に待つしかありません。

ただ、本当は性欲がないわけではないのに、性欲がないかのように振る舞っていて、そこに自分でも不安を感じているという可能性はないでしょうか。これは無意識でそうなっている場合もあります。

産後、セックスしたくなくなる女性は少なくありません。その理由は、出産するまで、あるいは子育て中に、夫が協力的でなかったから。

それで怒っていると言える女性はまだいいのですが、不満を言えずに、セックスを拒否するという形で無意識に夫を罰している場合があります。

また、先ほど相手に恐れを感じると性欲を感じなくなると言いましたが、それは必ずしも暴言や暴力によるものではなく、ごくささいな物言いの積み重ねだったりします。

日常のささいなやり取りでも、人はこっそり傷つく。相手は脅かすつもりもないし、ごく普通に話しているだけかもしれないけれど、いつの間にか“自分を傷つける人、怖い人”という思いが形成されていることがあるのです。

それはすごくわかりにくいところなので、そういう側面がないかを問いかけてみることも必要だと思います」(西澤先生)

セックスレスの場合、相手が自分にまるで無関心のように思えて、どうしようもなく孤独を感じることがあります。でもほとんどの場合、相手も心の奥底では、お互いの関係性を大事にしたいと思っていることが多いのだそう。

「たとえ自分で気づいていなくても、そうなんです。自分が選んだ相手への興味関心は、本当は当然あるはずなのに、現代人はあまりにも雑事が多すぎる。上からいろんなものがかぶさってきて、見えなくなってしまうのです」(西澤先生)

西澤先生いわく、セックスは、夫婦がうまくいかないことの“最後のシワ寄せ”がくる部分。セックス以前の部分が解決しないと、そのシワはきれいに伸びません。

でも、わだかまりが解決すれば、自然に触れあえるようになる夫婦も多いとのこと。歩み寄れないときは問題を放置せず、ぜひカウンセリングを受けてほしいという先生の言葉に励まされました。

西澤 寿樹先生

株式会社はあと・くりにっく代表取締役。戦略コンサルティング会社コンサルタント、金融機関企画部門・システム部門を経てセラピストになる。国際交流分析協会公認交流分析家(心理療法部門)、臨床心理士、公認心理師、厚生労働大臣認定産業カウンセラー、日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー。共著に『コメディカルARTマニュアル』(永井書店)、共訳に『交流分析による人格適応論』などがある。

@はあと・くりにっく

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