ごちそうに飛びつく前に、私たちは親しい友人、家族や家庭、人々の親切な心に感謝の気持ちを捧げるものです。
少なくとも招待客が帰ってから、キッチンのお皿もすっかり片づき、やれやれとほっと一息ついたときに、ありがたいなぁという気持ちで満たされます。
私たちは本質的に、身のまわりで起きている正しいことについてじっくり考え、それに対して感謝するのはよいことだと知っていますが、最近では、それが精神状態や人間関係だけでなく、身体の健康にもよい影響を及ぼすと科学者たちも言っているのです。
感謝することはビタミンを摂ることに似ている
image via shutterstock研究によれば、日々のくらしのなかで感謝の気持ちを抱くことは、痛みや苦痛を和らげ、よく眠れるようになる、といったことと関係があるようです。「感謝を日常の習慣にするのは、ビタミンを摂取することに似ています」と言うのは、ボストンのノースイースタン大学心理学部教授で『Emotional Success』の著者、デイヴィッド・デステノ博士。
これは決して大げさなたとえではなく、実際に身体をうまく機能させるビタミンと同じなのです。おまけに感謝には深く長く持続するパワーがあり、それを活かす方法はありがたいほど簡単です。
私たちは、言葉を話せるようになると「ありがとう」と口にするように教わりますが、専門家の言う「感謝」には、それ以上の意味があることを知っておいたほうがよさそうです。
「感謝とは、その人の人生における善を肯定し、自己の外側にある善の源を認識すること」と述べるのは、カリフォルニア大学デービス校心理学部教授で『The Little Book of Gratitude』の著者、ロバート・エモンズ博士です。
博士いわく、それはたとえば「手編みのセーターをくれたシャーロッテおばさんに対して恩を感じる」といったようなことだけでなく、冷たく澄んだ空気の冬の日に、自然に対してもありがたいなあと感じることでもあるのです。
感謝していることを書き出してみよう
image via shutterstockエモンズ博士は、そうした関連性について15年以上研究してきました。初期に行われたある研究では、任意の参加者のグループに10週間にわたって週に一度、「ありがたく思ったこと」を5つほど書き出してもらいました。たとえば「肌に感じる日光」「すばらしい祖父母になること」といった具合です。
他のグループには、ちょっとイライラしたことや、あるいはなんでもない日常のできごとを記録してもらいました。研究終了後には、ありがたいことをカウントしたほうが25%ほど幸せを感じていましたが、はるかに理解を超えた結果も得られました。
すなわち、感謝を実践していた人々は、時間を30%ほど多くエクササイズに費やしており、健康上の訴えも少なかったのです。
よく眠れる、血圧が下がるという研究結果も
image via shutterstockそれ以降、より多くのメリットがあることを裏づける研究結果が出ています。たとえば2015年に『Journal of Health Psychology』に発表された研究では、たった2週間ほど感謝の日記を記した被験者たちは、よく眠れて、血圧も低く測定されたことがわかりました。
別の研究では、同じような日誌をつけたところ、2か月後には日常の喫煙率が40%下がったという結果が出ています。
驚くことに、重い病気にかかっている人たちも、感謝の気持ちを持つことでメリットを得られるようです。ある研究では、初期の心疾患を持つ高齢者が定期的に感謝の日記をつけたところ、心拍数がより安定し、病気による炎症レベルも低くなることがわかりました。
感謝の気持ちは、副交感神経に作用する
image via shutterstockこうした結果はすべて、私たちの心と身体には強い関係があることを示しており、研究者によれば、いくつかの理論がそれを説明するのに役立つのだとか。
たとえば、仕事のしめきりが迫っていたり、あるいは家族と口げんかをしてうんざりした気持ちになったりすると、神経系が非常に覚醒した状態に。この覚醒により、身体はコルチゾールのようなストレスホルモンを大量に分泌して、それがやがて高血圧や炎症といった健康問題を引き起こす可能性にもなりうるのです。
私たちがありがたいと感じるときの「つくづく幸せだ」という感覚は、なんの問題もないというメッセージを身体に伝達し、これらの反応を落ち着かせます。「感謝の気持ちは、副交感神経や心を穏やかにする神経系に作用するのです」とエモンズ博士は述べています。
いますぐ、毎日続けてみよう
image via shutterstock同時に、自分が持っているものの真の価値を認めて感謝することで、衝動的な目先の満足……つまりタバコを吸う、ジムを休むといった、健康によろしくない多くの習慣の裏に隠れた衝動に惑わされずにすむのかもしません。
デステノ博士は自身の研究において、人はより大きなメリットがあとで得られるならば、目先の利益を喜んで先延ばしにする傾向があることに気づきました。
「感謝することは、私たちの将来に価値を与えます。セルフコントロールがうまくできるようになり、衝動的な行動を抑えるのに役立ちます」とデステノ博士は説明します。つまり、早い時間に寝る、よく考えて食事をするなど、健康によいことを選択できるようになるのです。
しかしおそらくもっとも大きなメリットが得られるのは、他人に対してするのと同じように、自分自身に対して感謝の気持ちをもつこと。
「自分の身体や、見る・嗅ぐ・聞くという能力に対して、ありがたく思うと報告してくる人たちもいます」とエモンズ博士。「そうした人々は自分のことをうまくケアしているのです」。
こうしたことも、健康的で幸せをもたらす感謝の範疇に含まれます。感謝をするのに決まった時間はありません。いますぐでも、毎日でもいいのです。
自分を大切にしよう
Jennifer King Lindley/How to Practice Gratitude for a Healthier, Happier Life
Kishida Maya