のどの根元にあるチョウチョ型の小さな器官、「甲状腺」。体内の各器官の大きさや重さを同等にして比べてみると、いちばんパワフルな器官と言えるかもしれません。
甲状腺が分泌するホルモンは、食欲やエネルギーレベルから体内の温度調節にいたるまで、すべてを調整しています。ですから、甲状腺がちゃんとはたらいていれば何もかもうまくいっていますが、とにかくたくさんの機能を担っているため、ちょっとおかしくなると予想もしないところに影響があらわれることに。
シカゴのラッシュ大学医療センターで内科教授を努める医師で博士のアントニオ・ビアンコさんによると、「甲状腺のはたらきが悪い『甲状腺機能低下症』、つまり“甲状腺の活性不足”の場合は特に、症状だけでは診断がつきにくくなります。診断のためのいちばんよい方法は、血液検査です」(この先でもっと詳しく紹介します)
逆に甲状腺がはたらきすぎている『甲状腺機能亢進症』(甲状腺の活性過剰)の方がもう少し診断しやすいとはいえ、甲状腺の不調に関連する症状は、ほとんどがうつ症状、閉経、慢性疲労症候群などほかのよくある問題でも特徴的に見られる症状と共通しています、とビアンコさん。「ですから患者には、甲状腺の活性過剰か活性不足が疑われる症状が見られますが、検査で確認する必要があります、と言うようにしています」
実にさまざまな症状があらわれるため、多くの人が甲状腺の問題とは気づかずに毎日を過ごしています。アメリカ甲状腺学会(ATA)によると、2000万人のアメリカ人が何らかの甲状腺障害をかかえていて、その60%は診断されていません。また、やはりATAによると、甲状腺に問題がある女性は男性の5〜8倍だそう。
甲状腺障害の症状
こんな健康上の問題があったら甲状腺障害の確かなサイン、と言えるようなものは特にないのですが、一般的に甲状腺の活性過剰や活性不足に関連すると考えられている症状がいくつかあります。ビアンコさんが教えてくれた、症状と対処法をご紹介しましょう。
甲状腺の活性不足(甲状腺機能低下症)
image via shutterstock いつも、あるいはたいてい、寒く感じる ずっと続いている疲労感または筋肉痛 ドライスキン 抜け毛 異常に重い生理 体重増加 便秘【このような症状があったら】
医師の診察と血液検査を受けましょう、とビアンコさん。「検査では、血液中の甲状腺刺激ホルモン(TSH)を測定します」
ビアンコさんによると、血液検査の結果、TSHが0.4〜4.5ミリ単位/リットル(mU/L)であれば正常。10 mU/L以上なら、甲状腺機能低下症です。4.5〜10 mU/Lの場合はグレーゾーンで、ビアンコさんの呼び方では「潜在性の甲状腺機能低下症」になります。「TSHがこの範囲の場合、明らかな危険要素や健康上の問題はありません。ですから、ケースバイケースで処置します」
医師はあなたの具合と血液検査にもとづいて、ホルモン療法がふさわしいかどうか判断する手助けをしてくれるでしょう。
甲状腺の活性過剰(甲状腺機能亢進症)
image via shutterstock 眼球が出っ張っている(びっくりしたような目) いつも暑く感じる 運動中は特に、心臓の鼓動がとても速くなる 不安感または緊張感 視覚に問題がある 体重減少 汗をたくさんかく、または手が湿っぽい、または両方 排便の増加 異常に軽い生理【このような症状があったら】
甲状腺の活性不足に比べて、活性過剰は症状だけ見ても診断が容易です、とビアンコさん。それでも、医師は血液のTSH検査で診断を確かめるでしょう。
「TSHがゼロなら、確実に甲状腺機能亢進症で、おそらくこのような症状のすべて、あるいは大部分があらわれます」(ビアンコさん)。TSHがゼロより上でも低ければ、症状がまったくなくても、やはり医師は治療を選ぶかもしれません。
その理由は、「甲状腺ホルモンの過剰は心房細動に結びついているため、心臓に影響して血栓や脳卒中の原因になりかねないからです」(ビアンコさん)。研究によると、甲状腺の活性過剰は骨粗しょう症のリスク増加にも関連します。
ですから、潜在的な甲状腺機能低下症とは違って、潜在的な甲状腺機能亢進症の場合は、特に具合が悪くなくても治療が必要な可能性があります(ビアンコさん)。
甲状腺に問題があるかどうか、どうすればわかるの?
image via shutterstock甲状腺の問題は変化しやすく、予想できません。また、関連する症状が人によって違うため、診断は難しくなります。上記の症状がいくつか当てはまるようであれば、そしてその症状が突発的に現れる場合は特に、医師に診てもらう方がよさそうです。
病気のサイン、見逃さない
Markham Heid/16 Signs Your Thyroid Is out of Whack
訳/STELLA MEDIX Ltd.