その場所とは、美術館です。確かに美術館へ足を踏み入れた瞬間、雑音が飛び交う外部から遮断され、その静寂が心地よく感じられるものです。それ以外には、どんな影響があるのでしょうか?
カナダ・ケベックの医師が出す「美術館へ行く」処方箋
カナダのフランス語を言語とする医師のグループ(MdFC)が、アートセラピ ーの可能性を追究し、精神的に疾患を抱える患者に対して2018年11月から美術館に無料で入れる処方箋を出すことになりました。
この「処方箋」は世界で唯一の試みで、処方された患者は同伴者分として大人二人、子ども二人分のチケットを用意されることになるのだそう。
対象となるのは、ケベックのモントリオール美術館(MBAM)で、計3万点にものぼるコレクションを展示するカナダ最古の美術館。定期的に大規模な展示会も行なわれています。
従来の心理療法を補完する「アートセラピー」
これは、芸術作品と触れ合うことで、心のケアに役立つことを期待する「アートセラピー」という心理療法の一環です。アートセラピーは、従来の心理療法をあくまで補完するためのものですが、うつやストレスに良い影響を及ぼしてくれるといいます。
実際、今年アメリカのローチェスター大学が発表した実験結果によれば、アートセラピーが白血病患者の痛みや不安を緩和するのに役立ったとされています。
また、アートセラピーは治療目的でなくとも、心を軽くしたりリラクゼーションのために行なうこともあり、例えばフランスでは大人のための「塗り絵」が大衆的なアートセラピーとして浸透しています。
気分が落ち込んだら美術館へ行くと吉!?
今回この処方箋を提案したボンディル医師は、「人工知能に注目が集まる現代において、自分の感情を理解したり制御したりする“感情的な知性”の可能性を信じたい」とカナダのラジオ番組「RCI」で語っています。
「美術館という気持ちが落ち着く場所では、芸術的な感情が芽生えることで、良い体内物質が生成される」とも言っており、それがどうにも抑えられない負の感情をコントロールするのを助けてくれるようです。
ボンディル医師は、「美術館は、気分の落ち込みといった悪い状態から解放してくれる場所であり、痛みや病という刑務所から脱出することを許してくれる」とも語っています。
今回の「処方箋」は、心理疾患を抱える患者向けのものですが、そうでない人でも気分が落ち込んだ時に美術館へ行くことで、プラスの感情を得ることができそうです。