強迫性障害(OCD)、ADHDやADD、自閉症、双極性障害、うつ病などを患う人が近くにいる方は、GAPSダイエットという言葉を聞いたことがあるかもしれません。

GAPS(英語で「腸と心の症候群」という意味の略)ダイエットは、ナターシャ・キャンベル-マクブライド医学博士が提唱した食事療法です。キャンベル-マクブライド医学博士が自閉症患者の治療に利用したことをきっかけに、さまざまな精神疾患に効く自然療法だと言われるようになりました。

このダイエットは、キャンベル-マクブライド医学博士が執筆した『GAPS腸と心の症候群』という本に基づいていますが、もともとはシドニー・バレンタイン・ハース医学博士が考案した特定炭水化物ダイエット(SCD)に由来しています。

「要するに、炭水化物を制限する食事療法です」とニューヨーク大学ランゴンヘルスの胃腸科専門医、ラビア・ド・ラトゥール医学博士は言います。

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このダイエットはかなり厳しく制限されており、穀類、低温殺菌乳製品、精製された炭水化物、でんぷん質の野菜を食べてはいけません。「代わりに、消化にいい栄養価の高い食品を摂取します」とド・ラトゥール医学博士。

よさそうな食事療法だなと思った方、期待するほどではないかもしれません。実はこのGAPSダイエットについてはまだ研究が進んでいません。また、これまでの研究でも、キャンベル-マクブライド医学博士の主張する治癒的効果は認められていません。GAPSダイエットに飛びつく前に、この食事療法について知っておきたいことをご紹介します。

GAPSダイエットって一体なに?

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GAPSダイエットは消化を助ける食事療法で、漏れる腸と呼ばれるリーキーガット症候群の治療にもなると言われています。リーキーガット症候群は、強迫性障害(OCD)やうつ病などの症状の一因にもなります。

「実は、私たちが食べている食品の多くには毒素が含まれています。リーキーガットがあると、この毒素が血液中に入り込み、自閉症・うつ病・ADHDなどのさまざまな病気を引き起こすのです」とド・ラトゥール医学博士は言います。

そのため、GAPSダイエットの根本には、毒素が体に入り込まないようにしてリーキーガットを治すことで、リーキーガットが原因の精神疾患を治癒しようという考えがあるのです。

GAPSダイエット計画とは?

GAPSダイエットは、「導入ダイエット」だけで6つの段階に分けられます。段階ごとに摂取していい食品が決められており、少しずつ増やしていきます。各段階の期間は体の反応、特に排便の変化や下痢などの症状を見て判断します。消化器症状がすべて改善したら、次の段階に進みます。

GAPSダイエットの段階

第1段階:肉や魚からとった自家製ストックを、そのままもしくはスープにして、プロバイオティクス食品やジンジャーティーと一緒に摂ります。

第2段階:上記に加え、オーガニック生卵の黄身、肉や野菜で作ったシチューを取り入れます。

第3段階:上記に加え、生アボカド、特定の材料を使ったパンケーキ、ギー(精製バター)、またはダックオイルを使ったスクランブルエッグ、発酵野菜を取り入れます。

第4段階:上記に加え、コールドプレスのオリーブオイル、絞りたての野菜ジュース、アーモンドプードル(アーモンドの粉)、そして少しずつ肉を取り入れます。

第5段階:上記に加え、生野菜、絞りたてのフルーツジュースを取り入れます。

第6段階:上記に加え、生のフルーツ、このダイエットで摂ってもいい特定のスイーツを取り入れます。

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導入段階を終えると、フルGAPSダイエットの食事に移行し、これを少なくとも18~24か月続けることが推奨されます。「このダイエットはライフスタイルと切り離せないもので、ダイエット計画の最終段階にたどり着くまでに2年かかることもあります」とKeatley Medical Nutrition Therapyの栄養士、ジーナ・キートリーさんは言います。

GAPSダイエットの食品リスト

グラスフェッドでホルモンフリーの肉 オーガニック野菜 食事の合間にそのまま食べるフルーツ 発酵食品 魚や甲殻類 産地直送のオーガニック卵 ボーンブロス(毎食) ギーなどの動物性脂肪(毎食) 精製された炭水化物を含み、加工食品は食べない

ひとつ重要なポイントは、このダイエット制限は大人でも厳しいと感じますが、子どもなら余計にそう感じるでしょう。しかも、このダイエットは子どもに処方されることの多い食事療法です。「このダイエットの主な対象となっているのは子どもです。この食事療法に従う子どものことを考えてみてください」とド・ラトゥール医学博士。「非常に難しい内容かと思います」。

なお、このダイエットの材料にはさらに制限があり、生、オーガニック、天然でなければならない食品が多くあります。「魚は天然ものでなければいけません。養殖ではダメなので、入手するのが難しい方も多いでしょう」とド・ラトゥール医学博士は言います。「マンハッタンなら天然の魚を売っている高級スーパーもありますが、ウォルマートや地元の食料品店しかないような小さい町では手に入らないでしょう」。

GAPSダイエットは本当に病気を治す効果があるの?

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GAPSダイエットには病気を治す効果があると言われていますが、それを立証するデータはありません。「それを裏付ける研究がないうえに、リーキーガット症候群という概念さえ正式には立証されていません」とド・ラトゥール医学博士。「リーキーガットを治療する食事療法であることも証明されていませんし、リーキーガット症候群自体も証明されていないとなると、無理があるのかなと思います」。

さらに、このダイエットでは、リーキーガットの原因とは証明されていない健康食品でも除外されているものがあります。また、ボーンブロスを大量に摂取することを推奨していますが、キートリーさんによれば、ボーンブロスは血中の鉛濃度を増加させることが証明されているそう。

つまり、言われているほどの効果は期待できないということ。「腸内微生物叢(微生物集団)は、自然に発生するもので、作り出せるものではありません」とド・ラトゥール医学博士は説明します。

慢性疾患を予防するには食事はもちろん重要ですが、GAPSダイエットで治療効果が得られると言われている、強迫性障害、うつ病、双極性障害、統合失調症などの精神疾患については、特効薬や認知行動療法も効果があることが研究でわかっています。

食事制限法に興味がある場合は、特に何らかの疾患を患っている方は、必ず医師と相談し、医療専門家の指示に従ってください

GAPSダイエットを試してみるべき?

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簡潔に言えば、健康状態がいいのであれば、特に試す必要はありません。「このダイエットは非常に段階が多く、一般向けではありません」とキートリーさん。さらに、体にいい食品までも除外してしまうことで、段階によっては重要な栄養素が不足してしまう可能性もあります。

ただ、GAPSダイエットを取り入れる価値がまったくないわけではありません。「この食事療法には正しい部分もあります。魚、甲殻類、卵などの脂肪分の少ないタンパク質は体にとてもいいです」とキートリーさん。これらの食品を食べると、消化管の健康維持や筋肉生成・維持に欠かせないアミノ酸を摂取することができます。

GAPSダイエットに似ていて、体にもいいことが証明されているのが、地中海式ダイエットです。「地中海式ダイエットには、心臓の健康を高める効果があることがたびたび証明されてきました。抗酸化効果も高いので、健康的な生活につなげることができます」とド・ラトゥール医学博士。「そういう意味では、地中海式ダイエットには優れた点があると言えます。特に糖尿病や心疾患を患う大人におすすめです」。

結論:GAPSダイエットの効果を証明する科学的根拠はありません。また制限が非常に多い食事療法のため、ほとんどの人は続けられないでしょう。代わりに、脂肪分の少ないタンパク質食品、フルーツや野菜、ヘルシーファット食材をしっかり摂取するのがおすすめです。

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Brielle Gregory/The GAPS Diet Claims to Treat Autism, Depression, and OCD—but Is It Legit?
訳/Seina Ozawa

RSS情報:https://www.mylohas.net/2018/11/179660gaps.html