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卵巣は、“沈黙の臓器”。無症状の卵巣腫瘍をどうやって見つける?

2018/10/24 20:30 投稿

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自分の体をきちんと知ろう! をテーマの連載「カラダ戦略術」。前回は「30歳から多くなる子宮筋腫」について、お届けしました。今回は、「卵巣の腫瘍って怖い病気?!」について、女性医療ジャーナリストの増田美加がお伝えします。

卵巣の腫瘍には良性と悪性のものがあります

卵巣は、子宮の左右にひとつずつあって、通常は直径2~3cmくらいの大きさです。この卵巣に発生した腫瘍が卵巣腫瘍で、大きいものでは30cmを超えることもあります。この卵巣腫瘍ができる明らかな原因は、まだわかっていません。ですから、予防も難しいのが現状です。この卵巣腫瘍は、30代、40代に起こりやすい病気ですので、注意が必要

卵巣腫瘍には、本当にさまざまの種類があります。腫瘍の発生起源から、大きく分けると
「表層(ひょうそう)上皮性(じょうひせい)・間(かん)質性(しつせい)腫瘍(しゅよう)」
「性索間(せいさくかん)質性(しつせい)腫瘍(しゅよう)」
「胚(はい)細胞(さいぼう)腫瘍(しゅよう)」
の3つに分けられます。

そして、それぞれの種類ごとに、良性の腫瘍、境界悪性の腫瘍、悪性の腫瘍があります。境界悪性の腫瘍、悪性の腫瘍になると、「卵巣がん」ということになります。

また、卵巣にできる病気としては、卵巣嚢胞(のうほう)があり、この場合、多くは良性です。子宮内膜症が卵巣にできる「チョコレート嚢胞」もこのひとつです。子宮内膜症のチョコレート嚢胞は、30代や40代にとても多い病気です。

卵巣腫瘍は、早期は無症状なのが特徴です!

また困ったことに、卵巣は、“沈黙の臓器”と言われていて、ほとんど自覚症状がありません。卵巣腫瘍が小さいうちは、無症状で進んでいくことが多く、大きくなって、腹水がたまってから症状が出ることが多いのです。

ここに大きくなってからの症状をあげます。
腹部膨満感(お腹が張って苦しい)
下腹部痛
頻尿
などで、気づくことが多いのです。

また、進行して大きくなると、腫瘍が破裂したり、腫瘍がおなかの中でねじれてしまう(茎捻転)と、突然、我慢できないほどの強い下腹部痛を起こすこともあります。こうなると救急車で緊急手術ということにもなりかねません。進行する前に、見つけておくことが大切です。

無症状の卵巣腫瘍をどうやって見つけますか?

もしも、腹部膨満感(お腹が張って苦しい)、下腹部痛、頻尿などの症状があったら、婦人科を受診することが大切です。これらの症状も早期とは限りません。早期発見のためには、毎年1回は婦人科で経腟超音波などの婦人科検診をしておくことが大切です。

婦人科では、まず問診をして、触診・内診、経腟超音波検査を行います。これで卵巣に腫瘍があるか、ないかは診断できます。また、これらの検査で、良性・悪性の診断もある程度は可能です。特に、超音波検査で、腫瘍が嚢胞性(ふくろ状)の場合の多くは良性腫瘍です。良性なら、多くの場合は、大きくならなければ、3~6か月ごとに経過を見ていきます。

けれども、充実性部分(かたまりの部分)と嚢胞性部分が混在する場合や、全体が充実性の場合などでは、悪性腫瘍や境界悪性腫瘍、つまり卵巣がんが疑われます。卵巣がんが疑われたら、さらに詳しい検査が必要になります。

最終的に良性か悪性かは手術で摘出しないと判断できません

卵巣がんが疑われて、詳しく調べる必要がある場合は、MRI検査、採血で腫瘍マーカー検査を行います。医師は、これらの検査結果から、総合的に見て、良性腫瘍なのか、卵巣がんの可能性のある悪性腫瘍や境界悪性腫瘍なのかを診断します。けれども、最終的には手術で摘出した腫瘍を、病理組織検査をすることによって、がんかそうでないかの診断が確定します。

治療は原則、手術を行います

治療は、原則は手術です。卵巣がん(悪性腫瘍)の場合は、多くは術後に抗がん剤治療が必要になります。術前のさまざまな検査によって、良性腫瘍と診断された場合でも、腫瘍の大きさが大きい場合などは、手術を行います。手術で良性の腫瘍だけを摘出し、卵巣そのものは残す方法を選択する場合が多いです。

良性の場合、最近は多くの施設で、体への負担が軽い腹腔鏡手術が行われています。しかし、腫瘍の大きさや性質によって、さらに医師の腹部手術の経験があるかないかなどによって、腹腔鏡手術ができるかどうかが制限されます。医師と相談したり、場合によってはセカンドオピニオンをとることも大切です。
境界悪性腫瘍の場合は、子宮、両側の卵巣・卵管、大網(胃と大腸の間の膜)を切除することが基本の治療になります。
悪性腫瘍の場合は、それに加えて、リンパ節の摘出や腫瘍のひろがりによっては、腸管や腹膜など広範囲の切除が必要となることもあります。

ただし、境界悪性腫瘍や悪性腫瘍であっても、その種類やひろがり(進行期)によっては、腫瘍がない側の卵巣、卵管や子宮を残すことが可能な場合もあります。妊娠・出産を希望する人は、医師と十分に話し合いましょう。

子宮内膜症のチョコレート嚢胞は40歳を過ぎるとがんになる可能性が!

子宮内膜症は、本来なら子宮の内膜にある組織がそれ以外の臓器に飛び火して、生理のたびに出血を起こす病気です。つらい生理痛や生理の出血が多い過多月経がおもな症状です。

チョコレート嚢胞は、子宮内膜が卵巣に飛び火したもの。チョコレートのような茶色の血液が溜まるのでこのような名前に。治療法は、子宮内膜症と同じ、生理を止めるホルモン療法などや嚢胞だけをとって卵巣を残す手術があります。

チョコレート嚢胞で特に気をつけなくてはならないのは、良性から、がんに変わる可能性があることです。特に、嚢胞が10センチ以上、40歳以降、閉経後に危険性が高まります。これらに当てはまる場合は、慎重に診察を続け、必要な場合は、子宮も卵巣も摘出する手術をすることがあります。

最初にも紹介したように、卵巣は、沈黙の臓器。自覚症状はなく、生理も規則的に来ることが少なくありません。だから気づかぬうちに、大きくなっていることが少なくありません。妊娠、出産にも影響する病気です。

早期発見には、症状がないうちの定期的な診察です。ぜひ、婦人科のマイドクターをつくって、何も不調がなくても年1回は子宮と卵巣のチェックを受けることをおすすめします

増田美加・女性医療ジャーナリスト
予防医療の視点から女性のヘルスケア、エイジングケアの執筆、講演を行う。乳がんサバイバーでもあり、さまざまながん啓発活動を展開。著書に『医者に手抜きされて死なないための 患者力』(講談社)、『女性ホルモンパワー』(だいわ文庫)ほか多数。NPO法人みんなの漢方理事長。NPO法人乳がん画像診断ネットワーク副理事長。NPO法人女性医療ネットワーク理事。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会会員。公式ホームページ

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