映画『アリー/スター誕生』(12月日本公開)に主演するレディー・ガガは、WHO事務局長テドロス・アダノム博士とともに、『ガーディアン』紙に力強い論説を寄稿しています。ふたりが言わんとしていることは、本当に大切なことなのです。
「あなたがこの文章を読み終えるまでに、世界では少なくとも6人が自らの命を絶っています」。
衝撃的な文章で始まるそのパワフルな論説のタイトルは「毎年80万人が自殺をしている。私たちには何ができるのか?」というものです。
自殺は世界的に広まっている
image via shutterstock「より大きなメンタルヘルスの緊急課題において、自殺はもっとも極端で目立つ兆候であり、いまのところ私たちは適切に対処できていません」とふたりは続けて述べています。
レディー・ガガとアダノム博士は、メンタルヘルスの状態をとりまく「差別や偏見、恐怖、理解不足」こそが、悩んでいる人々の苦しみを悪化させ、蔓延する自殺に対しても適切な行動を取れなくしていると断言しています。
ふたりはまた、メンタルヘルスと自殺に関する驚くべき統計データも挙げていますが、それによれば、私たちの4人に1人が、一生の間にうつや不安といったメンタルヘルスの問題に向き合うことになるとのこと。
image via shutterstockさらに心が傷むのは、大きなリスクにさらされているのが若者だという点です。
WHOによれば、自殺は世界の15歳から29歳までの若者の死因の第2位となっていて、また精神疾患を抱える人の半数が14歳までに発症しているのです。
「普遍的な問題にもかかわらず、私たちはオープンに話しあうこともできず、適切なケアや情報を提供するのに苦労しています。精神疾患を抱えている人には価値がないとみなしたり、あるいは病気を本人のせいにしてしまう。家族やコミュニティのなかでも、このように精神病を恥ずべきものとして、私たちはしばしば口を閉ざしてしまうのです」とガガとアダノム博士は強く訴えています。
適切なケアをする代わりに「私たちは、精神疾患に苦しむ人々を排斥し、非難し、責めています」
苦しんでいる人たちをどうサポートするか
image via shutterstockメンタルヘルスへの資金援助の欠如は、以前から世界的に問題となっていますが、ガガとアダノム博士は、メンタルヘルスの危機的課題に取り組むうえでカギとなる要素には、個人やコミュニティレベルで実行できることがある、とも強調しています。
「相手を理解・尊重し、精神の健康を第一に考えるコミュニティを築くために、私たち誰もが協力することができるのです」とふたりは書いています。
「愛する人が困難な時期を過ごしているとき、どんな支援を行ったらいいのか、私たちみんなが学ぶことができるのです」
だからこそ、自殺の危険な兆候に気づく方法を知ることが極めて重要です。そうした兆候には、友人や家族を避けるようになる、薬物を乱用する、怒りを抑えられない、いつも寝ている、気分が変わりやすい、などがありますが、個人によってさまざまです。
ただ、全米自殺防止財団で主席医務官を務めるクリスティン・モーティアー医学博士によれば、そこには共通点があるとのこと。
image via shutterstockモーティアー博士は以前『Prevention』に、「パターンの変化を見つけましょう」と語りました。
「人はある程度までしか隠しごとはできません。そう考えてみれば、私たちの行動パターンはかなり狭い決まった範囲に限られていることがわかります。あなたの親しい人がこれまでとは違う行動を取れば、直感的にすぐわかるはず。なぜなら、あなたはその人のいつもの行動パターンを知っているからです」
誰かが危機的な状態にあると思ったなら、あなたが心配していることを本人に伝え、医師やセラピストの治療を受けるよう促すなどの行動を起こすべきです。
「相手のことを十分によく知らない、あるいは相手の気分を害してしまうかもしれないという理由で、本能的にその人を避けたいと思ったとしても、その人の異変に気づいて助けてあげられる唯一の人物があなたかもしれません」とモーティアー医師。
「自殺を予防するうえでは、すべての人に果たすべき役割があるのです」
こうしたことを踏まえ、レディー・ガガとアダノム博士も、何よりも一番大切なことを力説しています。つまり、あなたは決してひとりではない、ということ。そして周りにいる人たちは、あなたのことを助けたいと思っていること。
「もはや私たちは、精神疾患は本人の弱さやモラルの欠如のせいだとする間違った考えに邪魔されたり、精神病に対するスティグマによって沈黙したままでいてはいけないのです」
あなたや周りの人が助けが必要なときは、誰かに相談してみましょう。
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訳/Maya A. Kishida
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