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もしも乳がんが見つかったらどうする?

2018/09/26 05:30 投稿

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前回は「若年性乳がんとはどんながん?」について、お届けしました。今回は、「若年性乳がんの見つけ方と、もしも……のとき」について、自身も乳がんを経験した女性医療ジャーナリストの増田美加がお伝えします。

どんな検査でわかるの? 血縁に乳がんの人がいたら?

20代、30代の若い世代の乳がんのことが「気になる……」という質問が私のもとに増えています。そこで今回は、若年性乳がんについて、前回に続いてお伝えします。

「若年性乳がん」とは、一般的に34歳以下の乳がんのこと。日本で乳がんは、もっともかかる人が多いがんで、罹患者数だけでなく、死亡者数も増加し続けています。乳がんに最もかかる人が多い世代は、40代~50代です。若年性乳がんは、40代、50代の女性の乳がんとくらべて、決して多くはありません。34歳以下の若年性乳がんは、乳がんにかかる人全体の約3%なのです。* 

*厚生労働省 若年乳がん患者のサバイバーシップ支援プログラム 若年性乳がんより
http://www.jakunen.com/html/tokucho/yogo.html

でも、「血縁に乳がんがいるので心配…」「どんな検査をすればわかるの?」「授乳中は気づきにくいって本当?」などという声がありますので、若い世代の人はどうやって見つけたらいいのか、について紹介します。

若年性乳がんを早期発見するにはどうすればいい?

34歳以下の女性には、自治体などの乳がん検診が行われていません。それは、先ほど書いたように、乳がんになる人の割合が圧倒的に少なく、エビデンス(科学的証拠)のある乳がん検診がないからです。

ですから、極端に心配することはありません。しかし、血縁に乳がんや卵巣がんの方がいらっしゃる場合は、遺伝性の可能性がありますので、34歳以下でも心配だと思います。

もしも、血縁に乳がんや卵巣がんの方がいて心配なときは、乳腺外科を受診して相談しましょう。
また、血縁にいらっしゃらなくても、「しこりがある、乳首から分泌物がある、左右差がある」などの症状がある場合は、もちろん受診をしてください

乳腺専門のクリニックでは、その人の状況に合わせて検査をします。一般的には、マンモグラフィ、超音波検査をまず行います。異常がなければ、それで終了です。その後は、医師の指示に従って、検診すれば大丈夫です。

もし、マンモグラフィや超音波検査で何か異常が見られた場合は、細胞診などの検査を追加することもあります。細胞診などの検査結果が良性のしこりだったり、異常なしだったら、この場合もその後は、医師に指示に従って検診すればOKです。

また、若年性乳がんは、自分で触って見つかることも多いので、セルフケアとして、月1回の自己チェックを行ってください。

月1回の自己チェックの仕方は?

月1回の自己チェックは、毎月生理の後2~3日経って、乳房が張っていないときに行います。自己チェックの第一の目的は、乳がんを発見することではなく、自分の乳房に関心をもって、いつもと違う変化を早めに見つけるためです。

ですから、毎月継続して行うことが大切です。そうでないと、自分の変化に気づきにくくなります。そして、もしも、いつもと違う乳房の変化を感じたら、乳腺外科を受診してください。自己チェックを続けることで、自分の乳房の変化に早く気づけるようになります。次のように行ってみてください。

自己チェック方法

1.鏡で左右差がないかを見て

両腕を上げて、「形や大きさの左右差、脇の下や鎖骨周辺のしこり、皮膚のへこみやひきつれ」をチェックします。

2.石鹸で指をすべらせるように

石鹸やボディソープなどをつけて触ると、乳房の凹凸がわかります。指の腹でクルクルとクリームを塗りこむような感じで触ります。指でつまむと、しこりを見逃しやすいので、くれぐれもつままないように。乳房だけでなく、脇の下と鎖骨周辺も忘れずに触ります。

3.指の腹で“の”の字を描く

4本の指を揃えて、指で“の”の字を描くように動かすのがコツ。寝る前にベッドでも行うとベストです。あお向けになると気づくこともあります。そのときも腕を上げて、脇の下も忘れずに行います。

授乳期の検診はどうすればいいの?

授乳期の乳がんは、見つかりにくいと言われています。もしも、妊娠中や授乳中にいつもと違うしこりなどの症状を感じたら、乳腺外科を受診しましょう。授乳中には、乳汁の滞りや細菌感染によって乳腺炎が起こることもあります。

超音波検査なら、妊娠中、授乳中でも安全に検査ができます。仮に、乳がんがあったとしても、出産や授乳によってがんの進行が早くなったりすることはありません。

若年性乳がん、かかってしまったときの治療法は?

若年性乳がんは、若いからこその悩みがあります。

「どんな治療をするの? おっぱいを失うの?」「髪が抜けるって聞いたけど…」「将来の妊娠・出産はどうなるの?」「医療費は? 仕事はどうなるの?」など、たくさんの不安が私のもとに寄せられます。

でも乳がんの治療は、ここ数年で一層、進歩していて、乳がん治療と副作用のケアはひとりひとりに合わせて選択できるようになっています。若い世代だからこそ、結婚、妊娠、出産などの人生の大きな岐路の時期と治療が重なってくるため、そのためのケアも進んできました。

手術で乳房の形をキレイに整える配慮もあります

たとえば、乳房の残す乳房温存手術でも、全て切除する乳房全摘手術でも、ケアの選択肢が広がっています

手術は、乳がん治療の基本です。若い年代は特に、「乳房を取りたくない! 傷つけたくない!」という思いがありますが、手術をしないとしこりは大きくなり、転移を起こし、命を危険にさらします。手術ですべて取り切れるがんは、早期だからこそです。

手術には、乳房を残す乳房温存手術と、乳房をすべて取る乳房全摘手術がありますが、今は、乳房再建手術が進み、乳房を一部取って、形がくずれてしまうよりも、全摘して乳房再建を選ぶ人も増えています。

乳房を温存する手術も、昔と異なり、脇や乳輪に沿って切るなど、傷跡を目立たなくしたり、脂肪を寄せて形を整えたり……の配慮も行われます。

また、形や着け心地にこだわったブラジャーも種類が豊富です。患者の希望に合わせた選択肢が広がってきています。

外見(アピアランス)支援も整いつつあります

早期なら抗がん剤を行わない場合が多いですが、リンパ節に転移をしてしまうと、抗がん剤治療が必要になります。

そうすると、抗がん剤の副作用で、髪やまつ毛、眉が抜ける、肌が黒ずんで乾燥する、爪が抜けるなどの副作用があります。若い年代にとっては、つらく、治療を続けたくない…という気持ちにさせることも少なくありません。

けれども今、医療者が外見(アピアランス)支援の重要性に気づき、サポート体制が整ってきています。ウイッグの選び方、治療中のメークのコツ、爪や肌のケアなどを病院内で行える施設が増えています。ウイッグやメークでキレイになることで、治療を頑張って続けることができる人が増えています。

外見(アピアランス)支援によって、治療から離脱する人が減り、気持ちが前向きになります。働きながら治療できる人が増え、治療効果が上がることもわかってきました。患者が元気に見えると、家族も喜び、安心します。

ホットフラッシュなど、更年期障害と似た症状への対策も進んでいます

ホルモン剤治療は、エストロゲンやプロゲステロンの受容体がある乳がんの人に行う治療です。閉経前の若い世代の女性がホルモン剤による治療を行うと、エストロゲンの作用を抑えるため、若くても更年期障害と同じような症状が出ます

たとえば、ホットフラッシュ(ほてり、のぼぜ)、頭痛,気分の落ち込み、イライラ、やる気が起きない、不眠などの症状が起こります。

その対策として、ヨガやピラティス、フラダンスなどのエクササイズが奨められていて、乳がん患者さん向けのヨガやピラティスの教室も盛んです。また、漢方薬や鍼灸治療などで効果がある人もいます。

乳がんになっても妊娠・出産をあきらめないで

抗がん剤などの治療を行うことで、卵巣機能が低下して、治療開始から2~3か月で卵巣機能が抑制されて生理がこなくなります。

しかし、34歳以下の若い人なら半数以上の人は1年くらいで生理が再開するというデータもあります。将来、子どもが欲しい女性は、抗がん剤治療を始める前に、健康な卵巣組織や卵子、受精卵を凍結保存してから、抗がん剤治療を開始する方法も可能になりました。

また、パートナーがいる女性は、性生活の不安やメンタルの低下も将来の妊娠にとって大切な問題です。性生活などへの心のケアも行われるようになっています。乳がんになっても、妊娠、出産をあきらめなくていい時代です。

患者さんの負担軽減の支援がたくさん!

乳がん治療は日進月歩で、ここ数年でさらに大きく変わってきています。手術も、抗がん剤やホルモン療法などの薬物療法も、放射線治療も、昔と比べて、格段と患者さんの負担が少なくなりました。

もっとも進んだと感じる点は、患者さんの心と体への治療の負担、副作用の負担を少しでも軽くしようとする医療者の思いです。

乳がんは治るがんになり、働きながら治療する時代になりました。外見(アピアランス)支援やがん治療後の妊娠、出産支援はその代表です。いずれも医師向けのガイドラインができていて、支援の普及が進みつつあります。

このように、乳がんになっても、サポート体制がたくさんあります。特に乳がんは、他のがんに比べ、患者支援が進んでいます。必要以上に、乳がんを怖れないでください!

増田美加・女性医療ジャーナリスト
予防医療の視点から女性のヘルスケア、エイジングケアの執筆、講演を行う。乳がんサバイバーでもあり、さまざまながん啓発活動を展開。著書に『医者に手抜きされて死なないための 患者力』(講談社)、『女性ホルモンパワー』(だいわ文庫)ほか多数。NPO法人みんなの漢方理事長。NPO法人乳がん画像診断ネットワーク副理事長。NPO法人女性医療ネットワーク理事。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会会員。公式ホームページ

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