歴史に培われたその深さ、大きさ、わたしなどにはとても語れないのですが、いつ訪れても好きだなぁと思うところのひとつが、旅行者でも比較的安く気軽に、野菜のお惣菜が食べられることです。
スーパーにもお惣菜はありますが、滞在中いつも頼っているのは“肉屋”です。「TOKYO VEGAN」なのに、肉屋?と、不思議に思われる方も多いと思いますが、庶民に愛される野菜のお惣菜は、肉屋にあるんです。
フランスでは、田舎町でも必ず肉屋があり、パン屋と同じように、その地に住む人の生活の一部となっています。そして、肉屋にはシャルキュトリーと呼ばれるソーセージやパテなど肉の惣菜に加えて、季節の野菜のお惣菜が並び、好きな量で購入することができます。
肉屋さんのご主人曰く、農業大国フランスでは、肉と一緒にたっぷりの野菜を食べる伝統があるそうです。
パリの住宅街にあるお店では、マダムが「昨日たっぷり買った根セロリのサラダがまだ冷蔵庫にあるから、今日はマッシュルームのマリネをいただいていくわ」と、まるでそこが自分のキッチンの一部かのような会話が聞こえてきました。
わたしもつられて根セロリのサラダを購入。繊維に沿って細切りにした根セロリをマスタード風味のドレッシングで和えただけのものだったのですが、とても美味しかったです。
店の顔であるお肉のシャルキュトリーはどれも手間がかかっていて、ときにはレストランで出てきても遜色ないレベルのものに出会うこともあるのですが、その分、野菜のお惣菜はシンプルなものが多いように感じました。 つまり、お家で真似できそう! 今日は、フランスで見かけたお惣菜をイメージしてつくった、材料3つ以内ですぐに作れるVeganフレンチデリのレシピをご紹介します。
いんげんとマッシュルーム
極めてシンプル。でも、いんげんってこんなに美味しかったっけ?と思えるひと皿です。歯ごたえを残し鮮やかな色に茹であげたいんげんとマッシュルームの香りがベストマッチ。マッシュルームは新鮮なものを使ってください。
<材料> 2人分
いんげん 1袋 (約100g) マッシュルーム 2~3個 マスタードドレッシング 15g 以下の割合の配合で混ぜあわせ、乳化させたもの(粒マスタード 2:ビネガー 1:オリーブオイル 0.5:メープルシロップ 0.5)
<作り方>
鍋にたっぷりのお湯を沸かし、いんげんを洗い、スジを取っておく。 お湯の量に対して2%の塩を加え溶かし、いんげんを入れる。 およそ1分半、少し固めに茹でたら取り出し、氷水へ入れ急速に冷やし、ドレッシングと和える。赤キャベツとプルーン
フランスでキャベツはシュー(chou)。肉詰めにしたシューファルシ、塩漬けにしたシュークルート、クリームを入れちゃったらシュー・ア・ラ・クレーム! と、キャベツは愛され野菜のようです。
なかでも、シュー・ルージュ(le chou rouge)と呼ばれる赤キャベツの色は、冬の食卓でひときわ目をひく美しさ。パリの立ち飲みバーでお通し的に提供された赤キャベツのマリネを思い出し、その妖艶な色を際立たせるドライプルーンとあわせてみました。
<材料> 2人分
赤キャベツ 1/10玉 (約80g) ドライプルーン 2~3粒 アップルヴィネガー 15g塩 少量
<作り方>
赤キャベツを千切りにし、ごく軽く塩をふっておく。 しんなりしたら水を絞り、1/4にカットしたドライプルーンとアップルヴィネガーとあわせ混ぜる。 冷蔵庫で半日以上寝かせると、プルーンの甘みが全体になじんで美味しくなる。かぼちゃのクミンマリネ
これからの季節、自然と、体をあたためる野菜に手が伸びるようになります。
かぼちゃの惣菜というと和食のイメージを持っている人も多いかもしれません。フランスのかぼちゃは一般的に、日本のものに比べて水っぽく、スープにしたり、キッシュやグラタンの具材にすることが多いようです。
日本のかぼちゃのホクホクした食感を活かしたワインのおともにもなるお惣菜として、クミン風味のマリネをつくりました。クミンはフレンチデリで多用されるスパイス。クミンシードをオイルで軽く熱すると、たちまちヨーロッパの香りが漂います。
冷蔵庫で3〜4日はおいしくいただけるマリネです。冬にかけて甘みを増し美味しくなるかぼちゃをいろいろな食べ方で楽しみたい方へ、おすすめの常備菜です。
<材料> 3〜4人分
かぼちゃ 1/4玉 (正味約200g) なたね油・オリーブオイルなど 適量 クミンシード 大さじ1 マリネ液 (白ワインヴィネガー 30g メープルシロップ 15g 塩 少量)<作り方>
マリネ液の材料を小鍋に入れてひと煮立ちさせ、火を止め、ボウルに入れておく。 フライパンにクミンシードと少量のオイルを入れて弱火にかけ、色が変わりはじめたらすぐに火を止め、オイルごとマリネ液のボウルに加える。(オイルの余熱でクミンシードが焦げやすいため注意) 皮付きのまま薄切りにしたかぼちゃを素揚げし、油を切ってボウルのマリネ液と和え、そのまま冷ましたら完成。*作ってすぐはかぼちゃの甘みが際立ち、時間が経つとヴィネガーとなじんだ味になります。
さっと作れるVeganフレンチデリ。野菜が主役だと色が際立ち見た目が華やかなことに加えて、育った文化や宗教が異なる友人へも安心して食べてもらえるので、さまざまなシーンのおもてなしに、持っておくと便利なレシピですよ。
Vegan(ヴィーガン)とは、完全菜食。 動物性のものを一切使わないライフスタイルや、そのような食事のことをさす言葉。 本連載『TOKYO VEGAN』では、おうちでつくれるVeganレシピのほか、おいしい野菜や調味料、世界のVegan事情についてなどをゆるゆると綴っています。
大皿彩子 Saiko Ohsara
Alaska zwei 店主 / 株式会社さいころ食堂代表、“おいしい企画”専門のフードプランナー。Veganカフェ「Alaska zwei」の運営のほか、食に関わるブランドプロデュース、レシピ開発、空間コーディネート、イベントのトータルコーディネート等を行う。saikolo.jp