仕事でもプライベートでもコミュニケーションを求められる機会はふえる一方。なのに口下手......。そんな私にとって「これしかない! 」と思えるコミュニケーション力の鍛え方を、蔭山洋介さん著『なぜ、あなたの話は響かないのか』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)で見つけました。
スピーチライターに教わった、話す技術以上の「価値」
著者はスピーチライターですが、おどろいたことにこの本は、発声法や会話術のような技術に頼らずにコミュケーション力アップをねらったもの。話はうまいけれどなんとなく信じてもらえない人もいれば、話し方はつたなくとも応援される人もいて(35ページ)、その差はその人自身の「価値」から来るものだからです。
コミュニケーションとは価値の交換です。価値を交換するにあたって、最も大切になるのは当然「あなたの価値」です。あなたの価値が社会的にユニークであったり、カッコよかったり、カワイかったりするということが重要であって、そのうえでそれを表現する話し方が重要になるわけです。
(『なぜ、あなたの話は響かないのか』97ページより引用)
いくつか紹介されている方法のなかから3つに注目しました。
価値を置くものをはっきりさせる
「私はこれに価値を置く」と明確に宣言し、自分の好きなことややりたいことに対してはブレないこと(79〜80ページ)。自己肯定感がわいてコミュケーションの大きな支えになります。
価値ある存在へのミメーシス(感染)
「この人の話なら聞きたい」と思わせるのは成長しつづける人。自分を成長させるには、生きかたに共感できるあこがれの存在に「ミメーシス(感染)」する(114ページ)のが早いです。その人物の話しかたをまねしているうちに、コミュニケーション力が上がります。
本を読む、映像を見る、実際に会える人であれば、会って話を聞くなど、なんでもかまいません。とにかく、没入してその人の価値観に触れて、面白がることが大切です。
(『なぜ、あなたの話は響かないのか』115ページより引用)
その人に影響を与えた教養にまで感染するのは、純粋に楽しい。ものまねで終わらせず、自分の価値観というフィルターを通して吸収できれば、より近道になりそう。
部屋の片づけで「価値」が洗練される
「好き嫌いを軸にした部屋の整理整頓」(133ページ)も、コミュニケーション力アップにつながる価値づくりのひとつだと言います。蔭山さんは、モノを捨てることを「ノイズを消す」、スッキリ収納することを「ノイズがなくなる」などと表現し、ノイズをとりのぞくとその人の価値が洗練される(133ページ)としています。
習慣化はかんたん?
一度習慣になってしまえば、コミュ力は高い状態で維持されて、二度と元に戻らなくなります。
(『なぜ、あなたの話は響かないのか』100ページより)
どの方法もつづけやすいと蔭山さん。「好き」や「あこがれ」などのワクワク感をベースにしているからかもしれません。
スピーチライターである筆者が、話術よりも中身で勝負を提案しているのが興味深い本書。まずは「これは価値のある方法だ」と私が感じたミメーシスとノイズキャンセルを習慣づけることで、自分の価値をみがきたくなってきました。