低脂肪ダイエットの大流行をどう思いますか? 1990年代にはクッキーやポテトチップスのラベルを「低脂肪」に変えることが、体重を減らしたり、より健康になったりするための手早い手段と言われていました。

今では脂肪を極端に減らすともっと太ってしまうことが知られ、ダイエットのトレンドは異なる方向に向かっています。研究によると、高脂肪、低炭水化物の食事法がより効率的に体重を減らすとされ、健康志向の人はたっぷりと脂肪をとっています。全脂肪乳や全脂肪ヨーグルトの売り上げは近年大きくのび、多くの栄養士は患者に魚、アボカド、オリーブオイルなどの脂肪分を取り入れるようにすすめています。この脂肪分が多くてクリーミーな食べ物の再出現は、1世紀も前の食事法を復活させることになりました。ケトジェニックダイエット、略してケトダイエットです。

ケトダイエットってなに?

まずは基礎知識。平均的な人の食事は、炭水化物55%、脂肪分30%、たんぱく質15%のバランスです。でもケトダイエットでは、脂肪分をもっとたくさんとり、炭水化物をぐっと減らします。カロリーの80%を脂肪分、15%をたんぱく質、5%を炭水化物にするのです。たとえば1日1500キロカロリーをとる人なら、炭水化物の摂取量は1日19グラム。これは、中サイズのりんご1個に含まれる炭水化物よりも少なめです。

で、なぜ炭水化物を減らすの? 身体はエネルギー源として炭水化物を好み、最初に燃やします。もし炭水化物を減らすと、まずは炭水化物からもやし、その後に脂肪を分解してエネルギー源にするようになるのです。この時、身体はケトーシスという状態になります。

ケトダイエットは体重を減らすのに効果的?

ケトダイエットを行うと本当にやせたり、健康になったりするのでしょうか? スペインで行われた、肥満している人20人を対象にした研究によると、答えはイエス。この研究において、参加者はカロリーを制限したケトダイエットを行い、4カ月で平均18キロやせました。そして他の実験でも同じような結果が。エクスペリメンタル・アンド・クリニカル・カルディオロジー誌に掲載された、肥満の3人を対象にした6カ月に及ぶ研究では、ケトダイエットを行った人は平均15キロやせ、悪玉コレステロールが減少し、善玉コレステロールが増加しました。

でも、これらの研究は規模が小さく、ケトダイエットに関するすべての研究結果が有望なわけではありません。アメリカ栄養学会の20人が参加したある研究によると、ケトダイエットを行った人は、行っていない人に比べて体重が減らなかったのです。しかも、トライした人たちは気分が悪くなり、炎症のレベルまでもアップ。これは、心臓病やがんを含む、いろんな症状の原因となります。

ケトダイエットを試す前に知っておくべきことは?

ケトダイエットに関する研究の結果は限られていて、決定的なものではありません。だからケトダイエットを試す前に、その潜在的なリスクを知っておくことが大切

ケトダイエットをはじめる前に知っておきたい5つのことをご紹介します

01.ケトダイエットの食事法はとても制約が多い

ケトダイエットをしている人の食事の大半は肉、身体にいい脂肪、でんぷん質が含まれていない葉物野菜などです。

ケトダイエットにいい食品、時々は食べてもいい食品、ダメな食品は以下のとおり。

ケトダイエットに適した食品

脂肪分: オリーブオイル、ココナッツオイル、バター、アボカドオイル、中鎖脂肪酸、アボカド たんぱく質: 牛肉、鳥肉、卵、魚 でんぷん質を含まない野菜: 葉物野菜、アブラナ科の野菜(ブロッコリー、キャベツ、カリフラワー、芽キャベツ)、きゅうり

控えめにしたい食品

全脂肪の乳製品: 牛乳、チーズ、ヨーグルト でんぷん質を多く含む野菜: ニンジン、ビーツ(サトウダイコン)、パースニップ(サトウニンジン)、えんどう豆、アーティチョーク、じゃがいも マメ科植物: インゲン豆、ひよこ豆、レンズ豆、ピーナッツ ナッツ・種子類: アーモンド、カシューナッツ、くるみ、かぼちゃの種、ひまわりの種 フルーツ: ベリー類、バナナ、メロン

NG食品

全ての種類の糖類: はちみつ、アガベシロップ、メープルシロップも含む 穀物: 小麦、大麦、米、とうもろこし 小麦粉でできたすべての食物: パン、パスタ 加工食品: 袋や箱に入っているものすべて

「ケトジェニックな食事は制限がとても多いのですが、慎重に計画して行えば、必要なビタミンやミネラルは摂取できます」と食事法の専門家は話します。でも、安全にケトダイエットを行うためには、栄養士と相談してバランスの取れた食事プランを立てたほうがいいでしょう。

02.ケトダイエットの長期的な効果は不明

ケトダイエットがいい方法かどうか、専門家たちの意見は割れています

「早く燃える炭水化物よりもケトン体というクリーンなエネルギー源を使うと、メンタルやエネルギーのレベルが改善。精製された炭水化物を食べたり、炭水化物を食べすぎると、血液中にインスリンがドッと放出されます。すると、血糖値がジェットコースターのように乱高下し、身体にストレスを与え、エネルギーのレベルやメンタルにマイナスの影響を与えるのです。でも、ケトーシス状態(脂肪が燃えるモード)になっていれば、インスリンは暴走しません。だから血糖値を正常に保てるのです」と、カイザー・パーマネント・ウエスト・ロサンゼルスの健康センターでスーパーバイザーを務める、管理栄養士のロリ・チャンさん。

ほかの専門家は、長い期間ケトン体を体内にたくわえるのは身体によくないと言います。ヒューストン・メソジスト・ホスピタルで管理栄養士を務めるクリステン・カイザーさんによると、「ケトン体は非常用のエネルギー源なので、長期間それをエネルギー源にすることは想定されていません。ケトン体はマイナスの電気を帯びた分子、つまり酸性です。体内にケトン体を蓄積すると、酸がたまります。その酸を中和しようと、骨からカルシウムが溶け出すのです」とのこと。カイザーさんはまた、ケトダイエットの食事法はバランスが悪く、動物性の食品ばかりとると、がんや糖尿病、その他の病気に対する抵抗が下がると指摘しています。

「もし医療専門家のアドバイスを受けずにケトダイエットを試すなら、ケトン体尿検査キットを使って、ケトン体レベルが危険なほど高まっていないか検査することが大切です」(カイザーさん)。ケトン体尿検査キットは、糖尿病の人が糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)のリスクにさらされていないかを確認するためにも使います。糖尿病性ケトアシドーシスは命に関わる合併症で、体内のインスリンが不足すると起こります(健康な人の血中ケトン体濃度は0.5~3.0ミリモーラーです)。

03.「ケトフル」と呼ばれる不快な症状が起こることも

炭水化物をとると体内で水分がキープされます(鶏の胸肉に比べて、パンがどんなに水を吸収するか考えて)。だから炭水化物を制限すると、より多くの水分が尿として出ていきます。このためケトダイエットをする人は、脱水症状に気をつけたほうがいいのです。水分を多くとると便秘にならず、さらに「ケトフル」なる可能性も下げられます。ケトフルとは脱水状態により電解質が失われて、疲労感や頭痛が現れるという状態です。

ケトダイエットで起こるほかの副作用として、腎臓結石のリスクの増加(脱水とカルシウムを多く含む酸性の尿のため)、口臭、筋肉のけいれん、めまいなどがあります。また、摂取する脂肪によっては、飽和脂肪酸のとりすぎになる可能性があります。すると悪玉コレステロールが増え、動脈に脂肪とコレステロールがたまって、アテローム性動脈硬化を引き起こします。もしもケトダイエットをすると決めたら、毎月医師にコレステロールのレベルをチェックしてもらい、健康な範囲にとどまっているかを確認したほうがいいでしょう。

04.ケトダイエットは、人によっては効果テキメン

フロリダ州タンパに住むヒーサー・ワートンさん(35歳・ビジネスリレーションシップマネージャー)は、2016年1月にケトダイエットを始めてから63kgの減量に成功しました。「私は一生ケトダイエットを続けるつもり。私と夫は食べることが大好きなので、糖質と炭水化物をカットする手段としてケトダイエットを行っているんです」 (ワートンさん)。

ワートンさんの典型的な1日の食事は、プロテインサプリメントと一緒にコーヒー、甘くないカシューミルク1杯、 カリフラワーライスに七面鳥を添えて、液体アミノ酸(炭水化物抜きの醤油の代用品)で味つけした料理、ほうれん草、七面鳥のベーコンを6切れ、卵6個、そしてサルサを少々です。

短期間で体重を落とす手段としてケトダイエットを行う人も。ロサンゼルスに住むタイラー・ドリューさん(34歳・不動産ブローカー)は、ケトダイエットをレディット(アメリカ最大級のネット掲示板)で始めて知り、6カ月で20kgほど減量してから普通の食事に戻しました。ケトダイエットをしている間ずっと朝食と夕食にベーコンを食べていたのに、ドリューさんのコレステロール値は改善しました。

05.しかし、あまり効果が出ない人も

ケトーシスの状態は、人によっていい作用よりも悪い作用をもたらします。カリフォルニア州オキシデンタルに住むドレナ・ロードさん(52歳・編集者)は1カ月間ケトダイエットを行って、心臓の動悸とめまいに襲われました。ロードさんはより多くの脂肪分をとったことで、ドリューさんとは異なり、コレステロール値が192mg/gLから250mg/dLに上昇したのです(200mg/dL以下が望ましいとされ、240mg/dL以上は高いとされます)。

06.まとめ: ケトダイエットが安全かどうか、医師に相談を

もう耳にタコかとは思いますが、ケトダイエットを試す前に医師に確認したほうがいいでしょう。ケトダイエットは極端な食事法で、一部の人には有害な可能性があります。心臓病の人や、1型糖尿病、2型糖尿病の人には向きません。

カイザーさんのように専門家たちがこのダイエットに懸念を持っていますが、それでも試してみたいのなら、医師に判断を仰ぎます。そしてケトーシスの状態についてモニターする方法と情報をもらったほうがいいでしょう。

もしケトダイエットは向かないと考えられたとしても、食事にヘルシーな脂肪分を取り入れれば、脳が守られ、善玉コレステロールが増加し、心臓病のリスクが下がり、一日中食欲が満たされた状態にしてくれる可能性はあります。

Kelsey Kloss/6 Things You Must Know Before You Try the Keto Diet

訳/STELLA MEDIX Ltd.

RSS情報:https://www.mylohas.net/2018/07/171018keto.html