レクチンは炎症を引き起こして消化器系に有害と非難を浴びています。そんなレクチンを取らない食事、レクチンフリー食を試す前に、知っておく方がよさそうなことをご紹介。

多くの人がレクチンを減らそうとする理由は?

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「グルテンくん、ちょっと詰めてくれます? 君が健康によくないと批判される原因かもしれない成分が見つかりました」。それは、レクチン。

天然のたんぱく質、レクチンは豆類、豆科植物、全粒穀物、一部の野菜に含まれます。元心臓外科医のスティーブン・ガンドリーさんが著書『ザ・プラント・パラドックス(The Plant Paradox)』で名指しして以来、有名になりました。ガンドリーさんによると、レクチンは炎症を助長し、消化を妨げ、慢性的な病気を引き起こすので危険だそう。びっくり。

それで多くの人がレクチンを減らそうとしはじめました。でも、本当にその価値があるの? それに、減らすとよくないことはない? 詳しくご紹介しましょう。

専門家がレクチンはよくないというのはどうして?

レクチンは、ほかの食べ物に含まれる栄養分の吸収を邪魔する物質、「反栄養素(アンチニュートリエント)」として作用するから批判されています。また、炎症性の毒素として作用すると考えている人も。

「レクチンは体内で『生物学的な戦争』を引き起こし、体重増加、消化器系の障害、ニキビ、関節炎、ブレインフォグ(頭がぼんやりしてしまう症状)につながると言われています」と、アメリカ栄養士会(AND)の指名委員会メンバーで管理栄養士のクリスティン・パランボさん。

これはかなりしっかりした主張で、まったくの嘘というわけではありません。特に赤インゲン豆(レッドキドニー)は「フィトヘマグルチニン」というタイプのレクチンを含み、これは少量でも毒性あり、です。でも、生で食べた場合に限りますし、赤インゲン豆を生で食べようとはまず思わないでしょう。アメリカ食品医薬品局(FDA)によると、インゲン豆を調理するとレクチンが不活性化して無害に(例外として、低温で調理する「スロークッカー」の場合、レクチンが不活性化される温度まで上昇しません)。

レクチンにはいろいろなタイプがあり、消化管を傷つける恐れがあるものも研究で見つかっています。ちょっと怖く聞こえるかもしれませんが、ほとんどの専門家の一致した意見では、現実的に言って人間には当てはまらないそう

「この研究では食べ物に含まれた状態のレクチンではなく、精製・分離したレクチンを調べていますし、試験管や動物を使ったテスト結果です」と、国際食品情報協議会(IFIC)財団の科学情報伝達部ディレクターで博士のミーガン・メイヤーさん。

「人間を対象とした研究では、あるいは食事に含まれるレクチンについて調べた臨床的に妥当な状況においてさえ、そのような結果は見たことがありません」(ミーガンさん)。ピーマン、ナス、トマトはレクチンを含むナス科の植物です。

どうやってレクチンを避ければいい?

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レクチンフリー食を試したければ、レクチンを含む次のような食品を避けます。

大豆とピーナッツを含めた豆類と豆科植物 穀物 トマト、ナス、ジャガイモ、ピーマン類などのナス科植物 牛乳と卵(飼われている乳牛と鶏は、小麦やトウモロコシなどのレクチンを含む穀物を餌にしているから)

もちろん、加工食品や調理済のパック入り食品も避けなければなりません。ビン詰めのトマトソースや黒インゲン豆のスープ缶など、はっきりわかる場合もありますが、入っているのがわかりにくいことも。例えば、市販品のサラダドレッシングに大豆ベースの増粘剤が添加されていたり、朝食のシリアルに甘味料としてコーンシロップが入っていたり。

レクチンフリーにした方がいい?

「まぁ、害はなさそう。でも、おそらく有益でもないでしょう」とパランボさんとメイヤーさん。とても大変なだけでなく、有益だというよい証拠がないからです。

「本を売りたいがために不安を煽っている人たちはインチキ医師です。ささいなことをドラマチックに誇張しているだけ。正しい情報のごく一部を取り上げて、全体を伝えていません」とパランボさん。

さらに、大切な栄養素が不足することになりそう。全粒穀物、豆類、野菜は、健康的な体重を保ち、心臓病のリスクを下げ、血糖値を正しいレベルにしておくために大切な食物繊維が豊富と広く認められています。「ですから、科学的研究が示す方向はレクチンフリーとは正反対。これらの食品は私たちの役に立つもので、害にはなりません」

例外として、消化器系に問題があって、ほかの食品を抜いても(グルテンフリー食、オリゴ糖や発酵食品などを抜く「フォドマップ食」などで)改善しない場合、レクチンを抜くことでよくなるかどうか試してみても害はありません、とパランボさん。

ただ、管理栄養士、それもできれば消化器系の問題を専門にしている人と必ず一緒にやる方がよさそう。正しいやり方で食品を抜いて、それでも必要な栄養分をすべて取れるように、食事の内容を指導してくれます。

Marygrace Taylor/The Lectin-Free Diet Bans Beans, Grains, and Even Some Veggies. But Does It Work?

訳/STELLA MEDIX Ltd.

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