おりものは腟内を守る天然の殺菌クリームです!
気温が上がるにつれて、おりものが気になる季節になりますね。「おりもののニオイが気になる」「おりものの量が多くなった」「色が混じっている」など、いつもと違うと何かの病気の前兆? と不安になります。
腟に限らないのですが、人の粘膜は粘液を分泌しています。腟内に普段あるのは、腸内に存在する乳酸菌と同様で、常に存在する常在菌です。
なかでもデーデルライン桿菌は、腟内を守ってくれている善い菌です。デーデルライン桿菌は、乳酸菌の一種。腟内のpH値をpH3.5~4.2の強い酸性状態に保つ働きがあり、外部からの雑菌や細菌による感染を防いでいるのです。腟の自浄作用と言われるものです。
腟はいろいろな雑菌や細菌が紛れ込みやすい部位です。外部から侵入する菌を腟内の分泌物が殺して、おりものとして排出します。腟から分泌されるおりものは、自然なもので、たとえて言うなら、女性の体を守る天然の殺菌クリームといってもいいかもしれません。
おりものが増えるのはどの時期?
おりものは、生理周期(女性ホルモンの周期)によって、増える時期があります。
では、おりものが増えるのは、以下のうち、生理周期のどの時期でしょうか?
生理開始日~7日目 ⇒「生理期」
生理開始8日目~12日目 ⇒「ハッピー期」
生理開始13日目~14日目 ⇒「排卵期」
生理開始15日目~21日目 ⇒「ニュートラル期」
生理開始22日目~28日目 ⇒「PMS期」
(*日にちはおよその目安で個人差があります。)
答えは、「排卵期」です。生理と同様、おりものにも周期があり、色や粘度、量が変化しています。おりものの量は、女性ホルモンと密接なかかわりがあり、エストロゲンの分泌量にほぼ比例しています。
おりものは女性ホルモンと連動している!
一般的には、毎月の生理(月経)が終わったあと、2~3日はほとんどおりものが出ません。
それから「ハッピー期」から「排卵期」に向けて少しずつ量が増えていき、「排卵期」には生卵の白身のように透明なゼリー状で水っぽく、よく伸びるおりものが分泌されます。ニオイは強くありません。そして、最も量が多いのは「排卵期」(生理開始13~14日)です。排卵期に受精の手助けもしてくれます。この時期、おりものに血が混じることがありますが、たいていは中間期出血といって生理的な現象です。
排卵後は、おりものの量は次第に減少。粘り気のある黄白色のおりものに変化します。粘り気のある状態なので、下着につくのが気になる時期です。
「PMS期」は、再び量が増え、ニオイも強くなります。でも、この少し酸っぱいニオイは健康な印。腟内にある乳酸のデーデルライン桿菌が乳酸を分泌。酸っぱいのは、そのニオイです。細菌が繁殖しづらい酸性度の高い環境(pH3.5~4.2)に保たれています。
エストロゲンの分泌と連動しているので、おりもの周期や変化を知れば、「そろそろ生理?」「排卵日が近い?」などを知る目安にもなります。
おりものの変化は、女性ホルモンの分泌が正常である証拠で、おりものの状態で生理周期を把握することにも役立つのです。
量やニオイには個人差が…洗いすぎに要注意
おりものの量やニオイが気になることもあります。でも、おりものの量は、とても個人差があるもの。体調の変化によっても変わります。通常の無色透明、無臭のおりもの、あるいは薄いクリーム色のおりものなら、自然なものなので、問題はありません。
かえって、おりものを気にして、ビデなどで腟内を洗いすぎると、大事な天然の殺菌クリームを洗い流してしまうことにもなりかねません。自浄作用が弱まり、逆効果です。お手入れは、外陰部を適度に清潔に保っておけば充分です。イヤなニオイを防ぐには、締めつける下着やタイトなデニムなどを日常的に身につけるのは避けましょう。
注意が必要なおりものもあります…性感染症の可能性も
注意が必要なのは、イヤなニオイが強いがしたり、黄緑や茶褐色、豆腐カスのようなおりものなど、です。よくあるのは、生理前の抵抗力が落ちたときや抗生剤を服用した後などで、免疫力が一時低下し、カンジダ菌や大腸菌が繁殖した場合です。カンジダ菌や大腸菌による炎症は、ひどくなる前に受診して薬で治療すれば、簡単に治ります。性感染症でおりものが増える可能性もあります。性感染症をそのままにしておくと、腹膜炎になったり、不妊の原因になるなど、さまざまなトラブルを引き起こします。
【こんなときは要注意】
白くてカテージチーズのようにポロポロしたおりもの&外陰部のかゆみがあるとき:「腟カンジダ症」の可能性があります。
黄色、あるいは黄緑色で、泡が混じったり悪臭がして、外陰部のかゆみがあるとき:「腟トリコモナス症」の可能性があります。
白、あるいは黄色っぽく、膿状で、腰痛や下腹部痛、発熱などがあるとき:「淋菌感染症」「性器クラミジア感染症」などの可能性があります。
いつもと違うと感じたら、婦人科を受診してください。婦人科では、綿棒で腟から粘液を採取する検査で簡単に調べられます。菌の感染源がないのに、治療しても治療しても、カンジダ腟炎をくり返すことがあります。これは抵抗力が弱まっている証拠です。
睡眠を十分確保して、体を補修する栄養をたっぷり摂ることも大切です。
増田美加・女性医療ジャーナリスト
2000名以上の医師を取材。予防医療の視点から女性のヘルスケア、エイジングケアの執筆、講演を行う。乳がんサバイバーでもあり、さまざまながん啓発活動を展開。著書に『医者に手抜きされて死なないための 患者力』(講談社)、『女性ホルモンパワー』(だいわ文庫)ほか多数。NPO法人みんなの漢方理事長。NPO法人乳がん画像診断ネットワーク副理事長。NPO法人女性医療ネットワーク理事。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会会員。公式ホームページ
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