「納豆をよく食べる人は脳卒中による死亡リスクが低い」って本当? 手軽な菌活食材として世界的にも注目される、納豆の知られざるパワーをご紹介します。
「週一納豆」で脳卒中による死亡リスクが3割減
週1~2回、納豆を食べるだけで、脳卒中による死亡リスクが3割減少する――。この調査結果は、岐阜大学の永田知里教授(医学系研究科、疫学・予防医学分野)のチームが日本人約3万人を16年間追跡研究して導き出したもの(※1)。納豆35g入りパックを週1~2回食べる人は、ほとんど納豆を食べない人にくらべて、脳卒中による死亡リスクが32%も低かったといいます。脳卒中だけでなく、心筋梗塞などでの死亡リスクも下がる傾向にあり、納豆の健康有益性が裏付けられました。
日本では古くから栄養価が認められてきた納豆。納豆の原型は縄文時代の終わり頃には存在していたとされ、江戸時代の書籍『本朝食艦』にも納豆の整腸作用や解毒作用が記録されています。1980年代には血栓を溶かす酵素「ナットウキナーゼ」が発見され、さらに注目を集めることに。近年ではアメリカの健康専門誌『ヘルス』が「世界5大健康食品」の1つに納豆を選定したり、フランス・リヨンの食の見本市で「糸を引かない納豆」が2000食を売り切ったりと、いまや世界的に期待される健康食材となりつつあります。
知ってる? 日本三大納豆菌
納豆ブームは日本人として誇らしくもありますが、では「納豆ってなに?」と聞かれて答えられるか、というと怪しいところ。たとえば、納豆を作る納豆菌。実は納豆菌によって「味」「粘り」「におい」「豆のかたさ・やわらかさ」「栄養素・健康作用」に違いが出ることをご存じでしょうか。
もともと納豆菌は、稲わらを始め自然界に広く分布する枯草菌(こそうきん)の仲間です。納豆菌を煮た大豆にかけると、納豆菌が増えて豆が発酵し、納豆へと変わります。このときに、たんぱく質が分解されて独得の粘りやにおいが生じ、アミノ酸など旨味の元になる成分や、ビタミンK2、ナットウキナーゼなどの栄養素ができるのです。
納豆菌にはたくさんの種類がありますが、なかでも「宮城野菌」「成瀬菌」「高橋菌」の3つは日本三大納豆菌として有名。納豆メーカーはオリジナルの納豆菌の開発に力を入れており、今後は納豆菌の新たな性質や、体にいい成分に着目した次世代納豆菌の発見が期待されているといいます。
納豆に含まれる健康成分
栄養豊富な大豆と、それ自体が健康成分である納豆菌。ナットウキナーゼやビタミンK2といった栄養素は、この2つが合わさることで生み出されます。近年エイジングケアとして注目されるポリアミンも、大豆や納豆菌に含まれる成分です。
ポリアミン:細胞分裂や増殖に欠かせない成分。加齢により産生作用が落ちるが、食品で補うことができる。 ナットウキナーゼ:血栓の主成分に直接働きかけて溶解させる作用がある。 ビタミンK2:骨の強化に不可欠。股関節骨折など、加齢により増える骨折の予防にも。 ポリグルタミン酸:納豆のネバネバの主成分。食後の血糖値の上昇や、インスリンの過剰な分泌を抑制する。 大豆イソフラボン:納豆の発酵により、腸から吸収しやすいイソフラボンの形(アグリコン型)に変化。女性ホルモン(エストロゲン)の化学構造式とよく似た働きがあり、ホルモンバランスを整え、のぼせやほてりなどの更年期症状を改善する。小さなひと粒ひと粒に、ギュッと栄養がつまった納豆。畑の肉と呼ばれるほどの植物性たんぱく質だけでなく、大人の女性にうれしいさまざまな成分が含まれているんですね。
納豆で免疫力がアップする?
最新の研究では、納豆菌による免疫細胞活性化のメカニズムも解明(※2)されつつあるのだそう。妊娠中に納豆を毎日食べていた母親から生まれた子どもは、納豆を食べない母親の子どもとくらべて、約3.5倍アトピー性皮膚炎になりにくかったという調査結果(※3)もあります。
そして納豆には、納豆菌のほかにも免疫機能を向上させる成分が含まれています。それは、粘着成分である多糖の1種「レバン」とアミノ酸重合体の「ポリグルタミン酸」。納豆を食べるだけで、免疫増強作用のある成分を複数摂取できるというわけです。
さらに、納豆菌のなかでも「S-903 納豆菌」は、インフルエンザの予防や花粉症症状の緩和が期待できるという報告があるそう。これからは毎日の食生活に納豆を取り入れるだけでなく、納豆を「納豆菌」で選ぶ時代になるのかもしれません。
簡単レシピで納豆を毎日の食卓に
簡単アレンジで、納豆の健康パワーを毎日の食卓へ。管理栄養士・健康運動指導士の浅野まみこ先生がすすめるレシピをご紹介します。
納豆そぼろのレタス巻
<材料2人分>
S-903納豆菌入り納豆 1パック 豚ひき肉 100g(A)
長ネギ 1/2本 ニンニク 1かけ しょうが 1かけ ごま油 大さじ1 輪切り唐辛子 お好みで サラダ菜(またはサニーレタス)数枚(B)
オイスターソース 大さじ1 醤油 大さじ1 山椒粉 小さじ1<作り方>
(A)をみじん切りにする。 フライパンにごま油、輪切り唐辛子を加え、中火で加熱する。香りが立ってきたところで、豚ひき肉、1を加え炒める。火が通ったところで(B)の調味料を加え、味を整える。 火を止め、納豆をざっくり合わせ、器に盛り、サラダ菜を添える。<ポイント>
ネギやニンニクに多く含まれる抗菌作用のあるアリシンは、ビタミンB1と合わせることで吸収率アップ。免疫力アップが期待できるS-903納豆菌入り納豆と合わせて、風邪予防に導く1品に。
マグロの納豆ヨーグルトサラダ
<材料2人分>
S-903納豆菌入り納豆 1パック マグロ(刺身 赤身切り落とし)50g 輪切りレモン 2枚 クレソン 1束 黒オリーブ輪切り 10g(A)
水切りヨーグルト 大さじ1 EXVオリーブオイル 小さじ2 塩・黒胡椒 少々<作り方>
マグロは塩(分量外)をふり、ペーパーで出てきた水分をふき取る。クレソンは3cm幅に切る。輪切りレモンは8等分に切る。 ボウルに1、黒オリーブ、(A)をざっくりと合わせ、器に盛る。<ポイント>
魚のDHA・EPA、クレソンのβカロテン、レモンのビタミンCなど不足しがちな栄養素をまとめてサラダにすることで免疫アップが期待できます。発酵食品同士でもあるヨーグルトと納豆は相性がよく、程よく納豆の香りを抑え、マイルドな仕上がりに。
連休明けの疲れた体にもピッタリな納豆レシピ。1年を通して手軽に手に入る食品という利点を生かして、ぜひ納豆の優れたパワーを取り入れてみてください。
(※1)岐阜大学の研究:米国の臨床栄養学雑誌『American Journal of Clinical Nutrition 』に掲載
(※2)平成27年度助成研究報告書 (公益財団法人タカノ農芸化学研究助成財団)「納豆菌による樹状細胞の活性化と免疫制御機能の解明」 より
(※3)千葉大学大学院医学研究院小児病態学 下条直樹教授のコホート調査「妊娠中の母体の食事と生後6か月でのアトピー性皮膚炎の関連」より
image via shutterstock
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