最新神経科学が教えてくれる、レジリエンスの研究結果
image via shutterstockこの「レジリエンス」を少しでも強いものにするにはどうすればよいのでしょうか。それに役立つと思われる最新神経科学の研究結果を「Psychologies」から拾ってみましょう。
1. 遺伝は絶対ではない
米心理学者ジョン・アーデンによれば、遺伝的に何かの病気にかかりやすかったり、うつ傾向があったとしても、その影響を実際に受けるとは限らないといいます。
(その遺伝子を)活性化させるのも不活性化させるのも、本人の生活次第なのです。(中略)フィジカルな運動、絶え間ない習得、バランスの取れた食事、ふさわしい睡眠、頻繁な社会交流という5つの柱を忘れぬことで、もともと持っているうつ傾向などから身を守ることが可能です。
(「Psychologies」より翻訳引用)
遺伝は運命ではない。私の心身を健康へと導くのは、あくまで私自身なんだと知ることは、苦難の時も、自分を信じるよすがになります。
2. 生きている限り、ニューロンは毎日新しく作られる
1980年代までは、ニューロンの数は生まれた時に定まっていると考えられていましたが、神経発生が発見されてからは、生きている限りニューロンは作り変えられるし、それにより心の健康も守られるのだと分かりました。
神経発生を活発にすることも可能です。そのためには、規則的に運動し、典型的西洋型食事よりカロリーを減らし、オメガ3脂肪酸の摂取を増やすのがよいでしょう。
(「Psychologies」より翻訳引用)
健康な体も健康な心も、まずはバランスの取れた食事からという基本を、いま一度肝に銘じたいものです。
3. あなどれない脳の柔軟さ
レジリエンスの鍵となるのは、脳の神経可塑性(neuroplasticity)です。神経可塑性とは、その時その時、五感を通じて脳に入ってくる情報により、脳が柔軟に変化する性質を指します。
神経可塑性を訓練する方法は複数あります。
―不安をもたらすものに少しずつ近づく。そうすれば、それに慣れて、いざ同じような状況に陥った時も、リラックスして対処できる。(中略)
―新しいことを習い、普段使っていない脳のゾーンを刺激する。
(「Psychologies」より翻訳引用)
慣れることで、だんだんリラックスできるというのは、人前でのスピーチなどを考えると容易に納得できますが、新しいことの学習が脳の柔軟さにつながるという話には、ちょっと不意を突かれた思いがしました。けれども、確かに昨今の研究結果を小耳にはさむたびに思うのは、脳の可能性は、持ち主の私たちが考えるよりもずっと大きいものなのだという事実。使われずに終わってしまうゾーンが少しでも減るように、いろんなことに興味を持ち、学ぶ姿勢を生涯持ち続けたいものです。
4. 脳をうまく使えば心も平和になる
よく知られているように、普段、右脳と左脳は、お互いに補い合いながら働いています。
何か不安や落ち込みに襲われたとき、活性化されるのは右脳ですが、右脳は、陥った状況から抜け出すのには役立ちません。それどころか、かえってネガティブな感情を引き起こします。そういう時は、左脳を働かさなくてはなりません。
(「Psychologies」より翻訳引用)
具体的にどうやって左脳を働かせるかを、精神分析医のティム・カントファーは下のように説明します。
ストレスや不安をもたらす問題を解決するには、その問題の塊を分解して、複数の小さな問題に分けてみてください。(中略)小さな周辺の問題を解決することで、精神状態も改善され、状況をコントロール下に置いていると感じられるようになります。
(「Psychologies」より翻訳引用)
また、上述のジョン・アーデン心理学者によれば、試練に遭った時、それに打ち勝つのに一番役立つ脳の部位は、前頭前皮質だそうです。この部位は、理屈の思考をつかさどるので、不安から身を守るためには、定期的に自分の感情と向き合うことが大切です。
1日に5分でいいので、自分の精神状態について自問してみましょう。怒り、悲しみ、どんな感情を抱いていて、それはどこから来るのかを考えてみましょう。
(「Psychologies」より翻訳引用)
脳の働きに関する研究は、まだまだ奥が深いものでしょう。それでも、現在判明している事実だけを拾ってみても、頭をうまく使えば、心もうまく処せるようになることが分かります。これらを参考に、私も普段から自分の中のレジリエンスを育て、上手に自分の心を導いていきたいと思いました。