バストは遺伝の影響が小さくなく、特に巨乳に関しては頑張ってもなれるものではない、と語る南さん。ところがヒップは鍛えられるので、遺伝の影響がそれほど大きくないのだそう。
「たとえばスクワットをするなど太ももを鍛えると、ヒップも大きくなります。大臀筋(お尻のいちばん大きな筋肉)は太ももの前側と連動しているので、トレーニング次第で形がかなり変わってくるんです」(南さん)
ネグロイドのようなキュッと上がったお尻は無理でも、太ももとお尻の境目がはっきりした桃尻は日本人にも充分可能。遺伝や人種のせいにせず、姿勢やコリほぐしに励んで。
理想的なヒップとはいわゆる「桃尻」「広がっていたり垂れていたり。また、骨盤が広がっているために横に張っているようなヒップも美しくないですよね」
と南さん。太ももとお尻の境目がなくてだらんとつながっていたり落ちているヒップは形が悪く見えるし、脚が短く見えてしまうというデメリットも。それに対し、理想的なのは丸みがあり、きゅっと下側はすぼまっているいわゆる桃尻。
「特に格好いいのは丸く、触るとお尻の中央より外側に引っ込む部分があるお尻です。骨盤には穴があるのですが、そこがえくぼのようにくぼむヒップは理想的。形がキレイに整っているとこのえくぼができるんですよ」(南さん)
ヒップが垂れる、形が崩れる原因は?「たとえば脚を組むクセ。たいていの方がどちらかの脚が上になるクセをもっているのですが、それによって骨盤や股関節が歪みます。建物に例えれば骨盤は土台ですから、ここが歪めば上物である上半身も歪みますよね。万が一脚を組むなら左右それぞれを同じように組むことが大切です」
と南さん。骨盤が広がると体全体が沈みがちになり、お尻が大きくなるだけでなくくびれがなくなったり下腹部がぽっこり出てきたりしてしまうそう。また、
「頭を使う仕事をする人の中には、座っていても足先が床についていないケースが多いですね。足先がブラブラしたままで座っていると、全身の体重を骨盤で支えることに。これも骨盤に負担がかかり、ヒップの形を崩す大きな原因になります」(南さん)
逆に、体の使い方を両脚から改めて全身のバランスを整えることで、最大でヒップの高さが10センチも変わった人もいるのだそう。少しずつ下半身から日常生活のクセの見直しをするのが美尻のスタートといえそう。
「タレ尻」になっているかもしれないのはこんな人!ヒールを履いたはいいけれど、こなせなくて膝が曲がっていたり、ペタペタと歩いていたり......。そんな姿勢の人は、若くてもお尻が垂れている可能性大。
「脚の"縦筋"が衰えると、まっすぐ立てなくなるんですね。膝裏が曲がってペタペタ歩きになるから脚が太くなるし、支えられなくなるからお尻が垂れてくるんです」
すらりとまっすぐな脚だと歩きやすく、しかもキュッとお尻を支える筋肉が育つのでヒップアップになるそう。
「そして、猫背もヒップの大敵です。猫背になっていると前側に力がかかるから脚が太くなるし、ヒップも崩れてきます。そして、重力の中で生きている私たちにとって、姿勢を縦に保つというのは難しいことなんです。すらりと背筋が伸びている人は、背骨の周囲でボディを縦に引き延ばす脊柱起立筋群が上手に使えていると言えますね」
ヒップはただの1パーツではなく、全身の使い方が現れてしまうところ。普段の歩き方、座り方を見直してみて。
美尻のためにできるセルフケア「座るものを選ぶ」のと「座りっぱなしにならない」が大切!と南さん。ヒップについている脂肪は、「いわば座布団のかわりです」と語る南さん。尾骨を守るように脂肪がつくので、お尻の丸みをつぶさないような形の椅子に座るようにしているのだとか。
「たとえば硬い木の椅子に座っていると圧が加わって痛くなるから、人間はどうしても斜めに座ってしまうんですね。これが姿勢を悪くしてしまい、ボディラインが崩れる原因に。お尻の丸みにそうように凹みのある椅子を選んだり、硬い椅子の場合は座布団のようなものを使うことにしています。それから、ぽっこんと埋もれるようなソファは日本人が使うと猫背になりやすいので避けていますね」
また、長時間同じ姿勢を続けるとボディラインに悪影響を及ぼすので、ダイニングの椅子、テレビを見るときの椅子、本を読むときの椅子などは使い分けているそう。
「オフィスワークの方なら1時間に1回くらい、立つ努力をするといいですね。トイレに行く、お茶をする、コピーをとるなどちょっとした動作を面倒がらずに取り入れること。こまめにリセットすると骨盤が歪みにくく、美尻をキープできますよ」
と南さん。美しいヒップに近づくエクササイズも教えてもらいました。
エクササイズSTEP1床などにマットを敷き寝そべり、垂直に手をたててあごの下へ。開いた指先にあごをのせる。
エクササイズSTEP2
両足を外側に開く。左足を曲げて足指で5回、グーを作る。かかとを5回、天井に伸ばす。これを2回繰り返す
エクササイズSTEP 3
かかとでお尻を蹴るように5回近づける。逆側もSTEP1〜3を同じように行う。
お尻を鍛えたら硬くなってしまわない?
お尻の柔らかさには個人差があるけれど、南さんいわく
「お尻が硬いという人は肩もカチカチで、全身がこっている可能性大。それはつまり、骨盤が硬くて生理周期や状態に合わせて変化できないということ。そういう方はホルモン分泌の状態もあまりよくないことが多いんですよ。女性のヒップは下がらない程度に柔らかく、触れて心地いい柔らかさがあるのがベストです」(南さん)
「柔らかい=筋肉がしなやか」ということだから、キュッとした小尻でフカフカの人もいれば、大きくてガチガチのヒップの主も。やみくもに鍛えるのではなく、コリがないしなやかな美尻を目指そう!
お話を伺ったのは...南 雅子(みなみ・まさこ)さん
美容家。『整体エステGAIA』主宰。エスティシャンとして20年活躍後、整体、カイロの資格も取得し、美しさと健康を同時に叶えるオリジナルプログラムをスタート。自身も産後にそのテクニックでウエストはサイズダウン、バストはアップという奇跡を叶えた猛者。理論に裏打ちされ、確実に効果を出すメソッドが人気となり、バストアップからX脚、O脚矯正、くびれ作りなどを希望する顧客が殺到。『美おっぱい呼吸』(洋泉社刊)など著書多数。
取材・文 ⁄ 高見沢里子