冷え症は、どの年代の女性にも多い不調です。ところが、手足は冷たいのに、顔や頭などの上半身だけボーッと熱くなる「冷えのぼせ」が増えていると言われています。
更年期障害のホットフラッシュも、同じような症状ですが、冷えのぼせは、更年期世代特有の症状だけではないのです。
年代別に見ると、冷えのぼせは、50代の次に、20代、30代に多いことがわかりました。冷え症は、年齢を重ねるごとに症状が悪化する傾向があります。一方、20代、30代は冷えやすい生活習慣のため、冷え症だけでなく、冷えのぼせを起こしやすい年代でもあるのです。
たとえば、エアコンを使う生活環境、運動不足、冷えやすい食生活やファッションなども、若い世代に冷えのぼせが増えている原因とも言えます。
冷えのぼせは、ほてりや多汗も併せて起こることがあるので、更年期障害のホットフラッシュと間違える人も多くいます。しかし、冷えのぼせは、冷えによる血流低下が原因と言われています。冷えのぼせは、"冷え"の一種なのです。
冷えは、体の筋肉量や食事量が少なく、体が熱をうまくつくれない状態。また、夏でもエアコンの影響で温度差が激しい環境で、体を冷やすことも原因のひとつ。冷えやすい生活習慣や食生活も影響します。
このような冷えが慢性的に続くと、"冷え症"になります。
私たちの体は、冷えると、手足の末端の体温を下げて犠牲にしてでも、体を守るため大事な頭部の温度が下がらないように働きます。さらに冷えが進むと、自律神経のバランスが乱れて、血管の収縮・拡張のコントロールがうまく機能しなくなります。そのために、上半身に熱が集中してしまうのです。
そして、体が熱いと感じると、脳が高温になるのを防ぐため、毛細血管や汗腺が発達している頭部や胸まわりから熱を放出します。
自律神経の交感神経と副交感神経は、体温を一定に保つために、通常より一生懸命に働かなければならなくなり大混乱。その結果、自律神経がバランスを崩してしまうのです。冷えのぼせは、"自律神経失調型の冷え"といってもいいのです。
「冷え」と「のぼせ」は、一見、正反対のようですが、どのような症状をいうのでしょう?
下記のチェックリストでひとつでもあてはまる項目があれば、冷えのぼせの可能性が高いと言えます。
「冷えのぼせチェック」
□上半身には冷えを感じないが、下半身は冷えている
□手足は冷たいのに、頭はボーっと熱く感じる
□暖房の効いた部屋に入ると、カーッと熱くなり汗をかく
□運動した後や気温が暑くなると、上半身が熱くなり汗がどっと出る
□手のひらや足の裏に汗をかきやすい
ひとつでもあてはまったら、「冷えのぼせ」の可能性があります。チェック項目が多いほど重症度が高い可能性があります。
冷えのぼせは、放っておくと、さらに自律神経が乱れ、疲れ、不眠、不安、イライラ、肩こり、むくみ、めまい、頭痛、腰痛、生理痛、吹き出物などの不調を起こし、日常生活に支障が出ることもあります。負のスパイラルで、ほかの病気を誘発する可能性もないとはいえません。
冷えのぼせを改善するポイントとしては、熱を感じる上半身に負担をかけないよう、上手に下半身の冷えを解消することです。そして、自律神経のバランスを整えることが大切です。
冷えのぼせの人は、睡眠の質が低下しがちとも言われています。睡眠の質が低いことを自覚していない人も多くいます。冷えのぼせの人は、寝ている間も緊張していて、汗をかき、蒸れて暑くなってしまいがち。足先の冷えを解消しようと、靴下を履いても暑くて脱いでしまったり、入浴も体の芯が温まる前にのぼせてしまうため、長めに湯船に浸かることができないことも。
冷えのぼせが重い人ほど、うまく体を温められず、体を冷やすライフスタイルを送ってしまいやすいのです。
冷えのぼせの可能性がある人は、上手に改善することが大事。
次回は、その改善法と、決してしてはいけない生活習慣を紹介します。
増田美加(ますだ・みか)さん
女性医療ジャーナリスト。
2000名以上の医師を取材。予防医療の視点から女性のヘルスケア、エイジングケアの執筆、講演を行う。乳がんサバイバーでもあり、さまざまながん啓発活動を展開。著書に『医者に手抜きされて死なないための 患者力』(講談社)、『女性ホルモンパワー』(だいわ文庫)ほか多数。NPO法人みんなの漢方理事長。NPO法人乳がん画像診断ネットワーク副理事長。NPO法人女性医療ネットワーク理事。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会会員。公式ホームページ http://office-mikamasuda.com/
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